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午後。
イチゴくんと城の裏にある森に向かった。
目的の魔法石が採れる場所は森の奥にあるらしい。
一緒に行くと張り切っていたキラピカくんは魔力コントロールの授業で合格点が出なかったようで、終わったらオオキミくんと一緒に行くからと半ベソをかいてオレらを見送った。
「こうやって森林浴しながら行くの、気持ちよくていいな」
何度も深呼吸して新鮮な空気を肺に入れると本当に気持ちいい。
「僕は歩夢先輩とデートができて楽しいです」
「あーはいはい」
空気が美味しいせいか、イチゴくんの寝言も風に流されてしまっている気がするわ。
そんな森を15分ほどのんびり歩くと開けた場所に着いた。
そこには苔の生えた大きな岩があった。
「ここです。この岩から魔法石が採れるんです」
「イチゴくん、早く発掘しようぜ」
興奮気味のオレに苦笑しながらバッグからハンマーと軍手に小さな籠を取り出し渡してくれた。
「大きな石は採れませんが、どこを叩いても出てきますよ」
「よぉーし、行くぜぇっ」
岩の塊に向かって駆け出した。
ハンマーの平たい方で岩の端を叩くと、小さな岩の塊がポロッと落ちる。
拾って裏返すと断面に赤い石の塊が見えた。
反対の尖っている方でコツコツ叩くと周りの岩はボロボロ崩れ落ち手には魔法石だけが残った。
初めて発掘した魔法石は小さいと言っても直径3センチほどの大きさだった。
「ホントに採れたっ」
「歩夢先輩、とても綺麗な石採れましたね」
「ふふんっ」
イチゴくんに褒められてちょっと嬉しい。
そこでいくつか採った魔法石を籠に入れて、場所を変えようと岩を見渡す。
上の方にチラッと見えるやつが大きそうで気になるけど、残念ながら空を飛べないと採れない位置にあった。
仕方なく反対側に回ることにする。
「あの、歩夢先輩」
「んー?」
振り返ると駆け寄ってきたイチゴくんの後ろにいつの間に来たのかシフシさんがいた。
「ちょっと急用があって僕戻らないといけなくなって……」
「そうなの?オレも一緒に戻った方がいい?」
申し訳なさそうにするイチゴくんの様子にもう戻るのかと思ったが、イチゴくんは首を横に振った。
「オオキミとキラピカが此方に向かっているそうで、もう少しで着くと思いますが……」
「ああ、それなら気にしないでよ。発掘楽しいから、こっから離れる気ないし」
発掘続けていいなら少しぐらい1人になっても平気だ。
オオキミくんたちが来るまでいると言い張るイチゴくんをなんとか宥めて向かわせる。
「何かあったらコレで僕を呼んでください」
イチゴくんはオレの手首に嵌められた腕輪をコンコンと指で叩く。
「わかった。ほら早く行けー」
何か言いたそうな顔のイチゴくんに笑顔で手を振って見送った。
「よーし、掘るぞー」
場所を変えてハンマーを振ると、今までで一番大きな塊が足元に落ちた。
割れ目から見える断面も今までで一番大きい。
大物の予感を感じながら慎重に周りを砕く。
「あと少し」
「あのー、お兄さん、ちょっといい?」
「はい?」
不意に声を掛けられ振り返ろうとした瞬間、視界が揺らいだ。
イチゴくんと城の裏にある森に向かった。
目的の魔法石が採れる場所は森の奥にあるらしい。
一緒に行くと張り切っていたキラピカくんは魔力コントロールの授業で合格点が出なかったようで、終わったらオオキミくんと一緒に行くからと半ベソをかいてオレらを見送った。
「こうやって森林浴しながら行くの、気持ちよくていいな」
何度も深呼吸して新鮮な空気を肺に入れると本当に気持ちいい。
「僕は歩夢先輩とデートができて楽しいです」
「あーはいはい」
空気が美味しいせいか、イチゴくんの寝言も風に流されてしまっている気がするわ。
そんな森を15分ほどのんびり歩くと開けた場所に着いた。
そこには苔の生えた大きな岩があった。
「ここです。この岩から魔法石が採れるんです」
「イチゴくん、早く発掘しようぜ」
興奮気味のオレに苦笑しながらバッグからハンマーと軍手に小さな籠を取り出し渡してくれた。
「大きな石は採れませんが、どこを叩いても出てきますよ」
「よぉーし、行くぜぇっ」
岩の塊に向かって駆け出した。
ハンマーの平たい方で岩の端を叩くと、小さな岩の塊がポロッと落ちる。
拾って裏返すと断面に赤い石の塊が見えた。
反対の尖っている方でコツコツ叩くと周りの岩はボロボロ崩れ落ち手には魔法石だけが残った。
初めて発掘した魔法石は小さいと言っても直径3センチほどの大きさだった。
「ホントに採れたっ」
「歩夢先輩、とても綺麗な石採れましたね」
「ふふんっ」
イチゴくんに褒められてちょっと嬉しい。
そこでいくつか採った魔法石を籠に入れて、場所を変えようと岩を見渡す。
上の方にチラッと見えるやつが大きそうで気になるけど、残念ながら空を飛べないと採れない位置にあった。
仕方なく反対側に回ることにする。
「あの、歩夢先輩」
「んー?」
振り返ると駆け寄ってきたイチゴくんの後ろにいつの間に来たのかシフシさんがいた。
「ちょっと急用があって僕戻らないといけなくなって……」
「そうなの?オレも一緒に戻った方がいい?」
申し訳なさそうにするイチゴくんの様子にもう戻るのかと思ったが、イチゴくんは首を横に振った。
「オオキミとキラピカが此方に向かっているそうで、もう少しで着くと思いますが……」
「ああ、それなら気にしないでよ。発掘楽しいから、こっから離れる気ないし」
発掘続けていいなら少しぐらい1人になっても平気だ。
オオキミくんたちが来るまでいると言い張るイチゴくんをなんとか宥めて向かわせる。
「何かあったらコレで僕を呼んでください」
イチゴくんはオレの手首に嵌められた腕輪をコンコンと指で叩く。
「わかった。ほら早く行けー」
何か言いたそうな顔のイチゴくんに笑顔で手を振って見送った。
「よーし、掘るぞー」
場所を変えてハンマーを振ると、今までで一番大きな塊が足元に落ちた。
割れ目から見える断面も今までで一番大きい。
大物の予感を感じながら慎重に周りを砕く。
「あと少し」
「あのー、お兄さん、ちょっといい?」
「はい?」
不意に声を掛けられ振り返ろうとした瞬間、視界が揺らいだ。
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