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29 5日目

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体が揺れる。

誰かがオレを起こそうとしてる?

まだ眠い。

あと5分。

やっぱり……

あと1時間ーー

「ダメです。起きてください」
「ん……へ?」

寝ていられないほど揺すられてゆっくり目を開ける。

「あーゆーむ先輩っ。おはようございます」
「……うぎゃあああっ」

視界いっぱいにイチゴくんの笑顔があって、寝起きとは思えないほどの悲鳴を上げた。
すぐ近くてオレの悲鳴を聞いたにも関わらず、イチゴくんは笑顔を崩すことなくベッドの上でバウンドするオレの手を引いて起こしてくれた。

「ノックしたんですが返事がなくて心配で勝手に入ってしまいました。すみません」
「あ、うん。ごめん。昨日ちょっとはしゃぎ過ぎて疲れてたっぽいわ」

昨日は……まあ色々あったけど、なんだかんだで楽しかったから、今朝は寝過ごしてしまった。
だから勝手に入ってくるのは仕方がないとして。

「歩夢先輩の寝顔、とっても可愛かったですよ。……うん、熱は……ないですね」
「っ!」

オレのオデコに自分のオデコをつけて熱を測るイチゴくんにオレの体はプルプル震える。

「先輩?」
「人の寝顔を勝手に見てんじゃねぇーっ!」
「わわっ」

オレは枕を投げつけてイチゴくんを追い出した。


❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎

「今日はアワユキに寝込みを襲われたそうですね」
「襲ってませんよ。歩夢先輩を起こしてあげたんですよ。母上も父上にしてあげているのと同じですよ」

涼しげな顔でいけしゃあしゃあと言うイチゴくんをつい睨んでしまうが、笑顔で返された。

「あ、歩夢先輩。今日の午後ですが僕の方の時間ができたので、先日話していた魔法石の発掘場に行きませんか?」
「えっ、マジで?」
「マジですよ」

ちょろっと話しただけだったから忘れられたかなって思ったけど、イチゴくん覚えてくれてたんだ。
なんだろう……ちょっと嬉しい。

「えーいいなー。ボクも行きたい。ユキお兄様、ボクもアユくんと魔法石採りたいですっ」

テーブルの反対側からキラピカくんがイチゴくんにおねだりした。

「いいですよ。午後の授業の分も午前中に終わらせたなら」
「い、イチゴくんっ⁉︎」
「うん。絶対、午前中で終わらせるね」

イチゴくんの無茶振りにキラピカくんが元気に返事するもんだから、オレがヒヤヒヤした。

「歩夢先輩、大丈夫ですよ。キラピカが本気を出せば午前中で終わらせることができますから」
「えっ……ってことは、いつも手抜いてるのか?」

イチゴくんに耳打ちされ驚いて聞き返すと苦笑しながら頷いた。

「オオキミも午後は空いてるだろう。一緒に行かないか?」
「お、俺は……」
「オオキミくん、行こうよ」

イチゴくんに声を掛けられて困った顔で渋るオオキミくんにオレも声を掛けると「考えておく」と返してくれた。
昨日ちゃんと話してから、無表情に見えたオオキミくんの表情がちょっとだけわかるようになった。
あの表情ならきっと来てくれるってわかる程に。

午後が楽しみだ!

「その前に歩夢先輩はこの後……わかってますよね」
「……はい」

今の今まですっかり忘れてました。


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