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引き寄せ回された腕がオレを守るように強く抱きしめる。
ん?
何が起きてる?
「あ、あのっ、オオキみぃぃぃ」
数秒後。
突然その腕は緩み、勢いよく引き剥がされた。
「あ……の、オオキミくん?」
「スリだ……」
「ええっ」
焦ってポケットを弄り見つけた財布を取り出し中身を確認する。
大した額はないが無事でホッと息をつく。
このお金は王妃様から貰った。
市で買い物できるようにとオレたちへのお小遣いだ。
オレとキラピカくんは日本円で3000円くらいでイチゴくんとオオキミくんは5000円。
ちょっと解せないところはあるけど、この世界の通貨を持っていないオレにはこれはありがたかった。
「ありがとう。おかげでお金は無事だったよ。でも、この世界にもスリをする奴っているんだーーおわっ」
財布をポケットに戻しお礼を言うと、オオキミくんにまた引き寄せられる。
その際、背後で微かに男の舌打ちが聞こえたから、スリなのかもしれない。
「ちょっと来い」
「え、あっ……」
そのままオオキミくんに手を引かれ少し先にある路地裏に入る。
そこには誰もおらず、ちょうど良いサイズの木箱があったため2人で座った。
「ふぃぃ。座ったら足が怠いや。結構歩いてたんだね」
「………」
脹脛を手で揉みながら話しかけるがオオキミくんにスルーされてしまった。
ううっ、気まずい……。
「……さっきの話」
「えっ⁉︎」
突然口を開いて驚いてオオキミくんを見る。
オレとは目を合わせる気がないのか、前を真っ直ぐ見ながら話を続ける。
「スリ……この世界にもお前の世界同様、犯罪を犯す者はいる」
「へぇ、そうなの?そんな風に全然見えなかった」
「犯罪者といっても俺たちから見える範囲では一握りしかいない。それでも、見えないところでは犯罪者や予備軍が沢山いる。……ここは豊かだが、この世界にも貧富の差がある。貧困に苦しんだ末、盗みを働いたり暴力を振るう者もいる。それを金で利用する商人や貴族もいる。そんな奴らがいるってわかっていても俺たち王族の力では、弱い者たちすべてを助けることはできない……」
オオキミくんは悔しそうに唇を噛む。
オレより年下なのに、彼なりにこの国の現状を憂いているなんて……。
こんな風に思うのはきっと不謹慎なのかもしれないけど、ちょっとかっこいいな。
「あっちの世界の庶民代表としてオレから言わせてもらうけど。もしできるんならさ、見つけた人たちからでも助けてやってよ」
「……?」
こっちを向いて不思議そうな目でオレを見るオオキミくんの目を見て続ける。
「やれるんならさ、見つけたその人たちをまず助けてやってさ、自力で生活できるようにしてやってよ。それを続けてよ。そうしたらきっと、前に助けた奴らの誰かが別の誰かを助けてくれるようになるかもしれない。……そうやってさ、少しずつでも犯罪を犯さなくても生きていける世の中を作っていったらいいじゃん」
ニッて笑うとオオキミくんに呆気に取られた顔をした。
「そんなの、机上の空論にすらならない陳腐な夢物語だ」
スパッと切られた。
「ううっ、おっしゃる通り」
やっぱり甘いよな、オレの考えなんて。
ちょっとへこたれるオレの頭にオオキミくんの大きな手が乗ってぐしゃぐしゃとされる。
「うおっ、な、何すんだよ」
「ふっ……でも、アユム……お前のその考え、俺は嫌いじゃない」
オレはオオキミくんの作り物じゃない笑顔をこの国に来て初めて見た。
ん?
何が起きてる?
「あ、あのっ、オオキみぃぃぃ」
数秒後。
突然その腕は緩み、勢いよく引き剥がされた。
「あ……の、オオキミくん?」
「スリだ……」
「ええっ」
焦ってポケットを弄り見つけた財布を取り出し中身を確認する。
大した額はないが無事でホッと息をつく。
このお金は王妃様から貰った。
市で買い物できるようにとオレたちへのお小遣いだ。
オレとキラピカくんは日本円で3000円くらいでイチゴくんとオオキミくんは5000円。
ちょっと解せないところはあるけど、この世界の通貨を持っていないオレにはこれはありがたかった。
「ありがとう。おかげでお金は無事だったよ。でも、この世界にもスリをする奴っているんだーーおわっ」
財布をポケットに戻しお礼を言うと、オオキミくんにまた引き寄せられる。
その際、背後で微かに男の舌打ちが聞こえたから、スリなのかもしれない。
「ちょっと来い」
「え、あっ……」
そのままオオキミくんに手を引かれ少し先にある路地裏に入る。
そこには誰もおらず、ちょうど良いサイズの木箱があったため2人で座った。
「ふぃぃ。座ったら足が怠いや。結構歩いてたんだね」
「………」
脹脛を手で揉みながら話しかけるがオオキミくんにスルーされてしまった。
ううっ、気まずい……。
「……さっきの話」
「えっ⁉︎」
突然口を開いて驚いてオオキミくんを見る。
オレとは目を合わせる気がないのか、前を真っ直ぐ見ながら話を続ける。
「スリ……この世界にもお前の世界同様、犯罪を犯す者はいる」
「へぇ、そうなの?そんな風に全然見えなかった」
「犯罪者といっても俺たちから見える範囲では一握りしかいない。それでも、見えないところでは犯罪者や予備軍が沢山いる。……ここは豊かだが、この世界にも貧富の差がある。貧困に苦しんだ末、盗みを働いたり暴力を振るう者もいる。それを金で利用する商人や貴族もいる。そんな奴らがいるってわかっていても俺たち王族の力では、弱い者たちすべてを助けることはできない……」
オオキミくんは悔しそうに唇を噛む。
オレより年下なのに、彼なりにこの国の現状を憂いているなんて……。
こんな風に思うのはきっと不謹慎なのかもしれないけど、ちょっとかっこいいな。
「あっちの世界の庶民代表としてオレから言わせてもらうけど。もしできるんならさ、見つけた人たちからでも助けてやってよ」
「……?」
こっちを向いて不思議そうな目でオレを見るオオキミくんの目を見て続ける。
「やれるんならさ、見つけたその人たちをまず助けてやってさ、自力で生活できるようにしてやってよ。それを続けてよ。そうしたらきっと、前に助けた奴らの誰かが別の誰かを助けてくれるようになるかもしれない。……そうやってさ、少しずつでも犯罪を犯さなくても生きていける世の中を作っていったらいいじゃん」
ニッて笑うとオオキミくんに呆気に取られた顔をした。
「そんなの、机上の空論にすらならない陳腐な夢物語だ」
スパッと切られた。
「ううっ、おっしゃる通り」
やっぱり甘いよな、オレの考えなんて。
ちょっとへこたれるオレの頭にオオキミくんの大きな手が乗ってぐしゃぐしゃとされる。
「うおっ、な、何すんだよ」
「ふっ……でも、アユム……お前のその考え、俺は嫌いじゃない」
オレはオオキミくんの作り物じゃない笑顔をこの国に来て初めて見た。
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