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番外編 瑠可/楓
番外編 Luka-15
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「楓兄に好きって言われた時、ビックリした」
「ビックリだけかよ」
「…だって、エッチしてないのに言われたの初めてだったんだもん」
ただただビックリして、その先にあった揺れ動く気持ちに気づけなかった。
楓兄に繋がれたままの手は、温かい時を過ぎ少し熱くなった。
「前に男に絡まれたって言ったけど、その時絡んできたの田幡さんなんだ。ボク、田幡さんに捕まって、あの場所に連れて行かれて襲われそうになった。そこに近くを通りがかった篠崎さんが来て助けてくれたの。最初はお礼のつもりでお茶に付き合ってた」
「ふーん」
「楓兄が就活であまり会えなくなって、結季くんも皇貴先輩とデートしてたし、ちょっと寂しかったんだと思う。そんな時に告白されたの。楓兄があんなに怒るなんて思わなかった。ごめんなさい…」
あの時、素直に言えなかった謝罪の言葉。
助けに来てくれた時の、あの姿がボクを素直にしてくれる。
「ん」
楓兄はきゅっと手を握って答えてくれる。
「多分、篠崎さんと付き合おうと思ったのは楓兄を怒らせて、それで見捨てられたんだと思ったから。……誰でもいいから縋りたかった」
「ごめん…」
頭をフルフルしてボクは話を続ける。
「それでね、初めてのデートの帰りに『番になりたい』って言われた」
また握る手が強くなる。
少し痛いけど構わず続ける。
「その時、『急がない』『決心できてからでいい』って言われたんだ。……ボクね、篠崎さんとしたの半分ヤケクソだったの。どうせ初めてじゃないし、発情期のエッチなんて熱に浮かされてるんだから、誰としても一緒だって。実際、心の中がどんどん冷めても最後まできた…」
「………」
「でも…、でもね…」
鼻の奥がツンと痛くて、視界がボヤけて言葉に詰まる。
上手く呼吸ができない。
「瑠可、深呼吸して。ちゃんと最後まで聞くから」
おでこにコツンと当たる、ちょっと湿り気が残る髪と体温。それと、石鹸に混じって届く森林の香り。
何度も何度も吸い込むと、呼吸が落ち着いていく。
「項舐められた時、不快感で鳥肌が立った。全然気持ち良くなかったの…。それで…う、項噛むって言われて、怖くなった。楓兄の顔がチラついた。だって……だって…項噛まれたら、もう、楓兄の匂いわからなくなるって…頭くしゃくしゃしてもらえない…抱きしめてももらえない…そう…そう思ったら…すごく嫌だった。嫌で嫌でたまらなかった……ふっ、ふっ」
ボクは楓兄の肩口に顔を埋める。
「考えて、ずっと考えて……ボクね、やっ……やっと…わかったんだ…でも…」
いろんな男に抱かれたこの身体は汚れてる。
そんなボクが気持ちを伝えていいのだろうか?
迷いがボクの喉の奥をつっかえて言葉が出ない。
「るーか、これ以上俺を焦らすなよ」
耳元で囁かれる。
「でもっ、でもっ…」
「瑠可、待てない。言って」
どこまでも優しい声が耳の奥まで響く。
ボクは三度深呼吸をして顔を上げる。
優しい目と合う。
「ボク…楓が…好き」
気持ちと一緒に涙が溢れで目を閉じると、フニっと目蓋に触れた。
驚いて目を開けると、目の前いっぱいに楓兄の顔があった。
「よくできました」
握られていた手を離されたボクは、楓兄に思いっきり抱きしめられた。
「俺も瑠可が好きだよ」
その声が泣きじゃくるボクの耳に響いた。
「ビックリだけかよ」
「…だって、エッチしてないのに言われたの初めてだったんだもん」
ただただビックリして、その先にあった揺れ動く気持ちに気づけなかった。
楓兄に繋がれたままの手は、温かい時を過ぎ少し熱くなった。
「前に男に絡まれたって言ったけど、その時絡んできたの田幡さんなんだ。ボク、田幡さんに捕まって、あの場所に連れて行かれて襲われそうになった。そこに近くを通りがかった篠崎さんが来て助けてくれたの。最初はお礼のつもりでお茶に付き合ってた」
「ふーん」
「楓兄が就活であまり会えなくなって、結季くんも皇貴先輩とデートしてたし、ちょっと寂しかったんだと思う。そんな時に告白されたの。楓兄があんなに怒るなんて思わなかった。ごめんなさい…」
あの時、素直に言えなかった謝罪の言葉。
助けに来てくれた時の、あの姿がボクを素直にしてくれる。
「ん」
楓兄はきゅっと手を握って答えてくれる。
「多分、篠崎さんと付き合おうと思ったのは楓兄を怒らせて、それで見捨てられたんだと思ったから。……誰でもいいから縋りたかった」
「ごめん…」
頭をフルフルしてボクは話を続ける。
「それでね、初めてのデートの帰りに『番になりたい』って言われた」
また握る手が強くなる。
少し痛いけど構わず続ける。
「その時、『急がない』『決心できてからでいい』って言われたんだ。……ボクね、篠崎さんとしたの半分ヤケクソだったの。どうせ初めてじゃないし、発情期のエッチなんて熱に浮かされてるんだから、誰としても一緒だって。実際、心の中がどんどん冷めても最後まできた…」
「………」
「でも…、でもね…」
鼻の奥がツンと痛くて、視界がボヤけて言葉に詰まる。
上手く呼吸ができない。
「瑠可、深呼吸して。ちゃんと最後まで聞くから」
おでこにコツンと当たる、ちょっと湿り気が残る髪と体温。それと、石鹸に混じって届く森林の香り。
何度も何度も吸い込むと、呼吸が落ち着いていく。
「項舐められた時、不快感で鳥肌が立った。全然気持ち良くなかったの…。それで…う、項噛むって言われて、怖くなった。楓兄の顔がチラついた。だって……だって…項噛まれたら、もう、楓兄の匂いわからなくなるって…頭くしゃくしゃしてもらえない…抱きしめてももらえない…そう…そう思ったら…すごく嫌だった。嫌で嫌でたまらなかった……ふっ、ふっ」
ボクは楓兄の肩口に顔を埋める。
「考えて、ずっと考えて……ボクね、やっ……やっと…わかったんだ…でも…」
いろんな男に抱かれたこの身体は汚れてる。
そんなボクが気持ちを伝えていいのだろうか?
迷いがボクの喉の奥をつっかえて言葉が出ない。
「るーか、これ以上俺を焦らすなよ」
耳元で囁かれる。
「でもっ、でもっ…」
「瑠可、待てない。言って」
どこまでも優しい声が耳の奥まで響く。
ボクは三度深呼吸をして顔を上げる。
優しい目と合う。
「ボク…楓が…好き」
気持ちと一緒に涙が溢れで目を閉じると、フニっと目蓋に触れた。
驚いて目を開けると、目の前いっぱいに楓兄の顔があった。
「よくできました」
握られていた手を離されたボクは、楓兄に思いっきり抱きしめられた。
「俺も瑠可が好きだよ」
その声が泣きじゃくるボクの耳に響いた。
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