金の野獣と薔薇の番

むー

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本編

9月 ①

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夏休み最終日は皇貴先輩のせいで眠れない夜を過ごし、寝不足で二学期を迎えた。
二学期の初日は始業式だけだったから、帰ってから泥のように眠った。
23時頃、一度目が覚めるとスマホに皇貴先輩からメッセージが来ていた。
でも、見たら眠れなくなりそうだったからスルーして寝た。

翌日、登校すると抜き打ちテストがあった。
義兄のスパルタ課題のおかげで設問は全部埋められた。
後で見た皇貴先輩のメッセージが『明日抜き打ちテストあるから勉強しとけよ』で、オレは読まなかったことを少し後悔した。

9月の最終週は体育祭があるため、その日のHRは種目別の出場者を決めることになった。
温暖化進む昨今、なにもこの時期にやらなくてもと思ったが、進学校であるこの学園ではこの時期しかなかったらしい。
予想通り参加希望がエアコン完備の屋内競技に集中した。
ちなみにオメガは発情期があるため、辞退しても良いそうだ。
瑠可は早々に辞退した。

「ボク、暑いのと汗掻くの嫌なんだ」

別の意味で汗を掻くのは良いんだけどね、とオレの耳元で小声で付け足した。
何言ってんだ。

オレは折角だから参加することにしたのだけど、屋内競技の争奪戦という名のジャンケンに尽く負け、結局、屋外のフットサルになった。
フットサルは5人競技のため、参加人数は補欠要員含め7人だ。
そのうちの3人は掛け持ちのため、掛け持ちのないオレ含む4人の出場が決定した。
オレの発情期は前回7月だったから、たぶん大丈夫だろう。
それ以上に問題なのは、フットサルのルールを知らないことだ。


各競技についての学園独自のルールブックを配布されたので読んでみた。

時間の都合上、1ゲームは20分。同点の場合は、5分の休憩の後、10分の延長戦。それでも決まらない場合はジャンケンで決める。
審判が危険と判断したスライディングやチャージをした行為を行なった場合は、相手チームのフリーキックを認める。

うーん、途中まで読んだけど、比較的小柄なオレにはキツいかもしれない。
とはいえ、やると決めたのだから頑張ろう。


と、意気込んだ昨日のオレに説教したい。
今日から始まった練習は、まず走り込みから始まった。
20分をフルで走れる持久力が必要だと、運動部のメンバーが言い出したからだ。

始まって20分経つが、トラック何周走っただろう…と思ったが、まだ3周しか走っていなかった。
子供の頃の事故後、あまり激しい運動はしてこなかったから、5分も走ったら息が上がった。
いや、5分持ったのは言い過ぎた。
運動部の奴らのスピードに合わせて走ったから1分でゼーゼー言った。
トラック10周がノルマで、他のメンバーはさっき走り終わってボール練習始めている。
オレはあと7周走らないといけないが、1時間の持ち時間内で終わる気がしない。

運動場にはオレたちのAクラス以外に2,3年も居た。
クラス単位で1時間毎で割り振っているようだから、ここにいる2,3年はたぶんAクラスの人なんだろう。

あーヤバい。
頭がクラクラしてきたかも。
水分と休憩は適度に摂るようにと言われていたから休憩しようと、半周先にある休憩用のテントまで頑張って走った。
日陰でスポーツドリンクを飲んだら少し楽になったが、今度は汗を吸ったシャツが張り付いて気持ち悪くなった。

「如月ー、サボんなー」
「休憩入ったばっかだよ」

パス練習しているクラスメイトからヤジが飛ぶから言い返すが、今日のパス練習は無理だとしてもノルマはなんとかしないとな、と太腿を叩いて立ち上がる。
少しクラっとしたが構わず走り込みを再開したが、休憩入る前より体が重く感じてスピードが上がらない。

「大丈夫ですか?」
「えっ?……生徒、会長?」

肩を叩かれ振り返ると、生徒会長がオレに合わせて並走していた。

「顔色が悪いですがどこか調子が悪いのではないですか?」
「だっ、だいっ、じょ、ぶ、です。あっ、と、ろく、しゅう、ノルマ、なん、で…」

息切れしながら何とか答えるが、オレを見る生徒会長の眉間の皺は深くなった。

「ダメです」
「わっ、ぶっ」

生徒会長はオレの前に立ち塞がり肩を押さえた。

「今日はここまでです」
「え…、生徒会ちょ…っ」

オレの目の前が急に暗くなった。
足に力が入らず、オレの肩を掴む生徒会長に寄りかかってしまう。

「熱中症になりかけてるのかもしれません。大丈夫ですか?」
「…あ…すみません」

生徒会長から体を離そうと腕を掴もうとしたが逆に掴まれた。

「保健室まで運びます」

そう言うと、オレの手を離し後ろを向いて片膝をついて屈んだ。

「生徒会長?」
「背負いますから乗ってください」
「ええっ」

直立不動で固まった。
生徒会長は屈んだ状態で後ろを向いて、ふーとため息をついた。

「横抱きの方がお好みですか?」
「いいっ、いえっ。おんぶでお願いします」

生徒会長の肩に手をついて体を預けると、膝裏に手を回され軽々と抱え上げられた。

「その掴み方では危ないので、首に手を回してください」
「あ、はい…」

その場にいた教員や生徒のいろんな視線を浴びながら、保健室へと運ばれた。

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