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本編
7月 ①
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あれから毎日、放課後に社会科準備室で皇貴先輩に勉強を見てもらったおかげで、期末試験前までに授業に追いつくことができた。
この補講自体は6月いっぱいで終わりだったのだけど、皇貴先輩が期末試験対策もすると言い出して7月に入ったこの週も続いている。
職員室でそのことを担任に話すと隣の席の3-Aの皇貴先輩の担任に、このまま続けて欲しいと言われた。
ならば瑠可も誘おうと思ったら、それは皇貴先輩に却下された。
結局、マンツーマンの補講は今週末までやることになった。
初日の過度なスキンシップも翌日からなくなり平和そのものだ。
ただ、先週から、皇貴先輩から発せられる薔薇の香りが徐々にに強くなっている気がする。
あれかな、放課後、ここに拘束されていて、発散できずに溜まってるってやつか?
オレに手を出す様子はなさそうだからいいけど。
とはいえ、アルファのフェロモンにオメガが充てられて発情する場合があるっていうから、気を付けないといけない。
でも、皇貴先輩にはお願いし辛い。
「……い。おい。聞いてるか?」
「ふぇっ。あ、は、はい、すみません。聞いてませんでした」
「寝てんじゃねえよ。やる気あんのか?」
「……すみません…」
誰のせいだよ。
この時間帯だけいつもより強めの抑制剤飲んでる。
保健医に相談して2段階くらい強いやつをもらったから、副作用で眠くて仕方がない。
「抑制剤でも変えたのか?」
「ま、まあ、ちょっと強めのものにしました」
「体に合ってねーんじゃねぇの?」
「あーそれはあるかもしれませんね」
「あんま強いやつ使うと体に結構な負担が掛かるらしいから元に戻してもらえよ。あれで十分効いてただろ」
「……ちっ、誰のせいだよ」
「あ?」
しまった。
眠気と皇貴先輩の発言のイライラで、心に秘めておこうと思った言葉をつい口にしてしまった。
あー、すっげー睨んでる。
もういいや。
「そうです。皇貴先輩のせいですよ。先週から先輩のフェロモンが強くなってるから、充てられないようにこの時間だけ強めのやつ飲んでるんです」
「………」
「まあ、オレの勉強見てもらってるし、発散できないのはそれが原因でもあると思うので、皇貴先輩だけのせいじゃないんですけど」
「……悪りぃ」
素直に謝られて拍子抜けする。
「あ、いや、皇貴先輩を責めたかったわけじゃなくて…」
「俺のために強めの抑制剤飲んでくれたんだろ?」
「……はい。そうなりますね」
あの時のように迷惑かけたくないし、発情してまた休むようなことになったら困るから。
「悪かった」
頭を下げられる。
気まずい雰囲気が漂って、最早勉強どころじゃなくなった。
あーもう、面倒くさい。
つか、眠い。
「あの、皇貴先輩」
テーブルに顎を乗せて反対側で俯く先輩を覗き込みながら声を掛けると、先輩の顔がこっちを向いて目線が合う。
「なんだ」
「ちょっと寝ていいですか?今眠すぎて頭働かないんで……だから、ちょっと寝たらスッキリするかなって思うんですよね」
「………」
ううっ…。無言の圧が怖い。
「あ、あの、10分でいいんです。ダメなら今日はお開きーー」
「わかった」
「へっ?」
「10分でいいんだろ……ほら寝ろ」
皇貴先輩はそう言うと、オレの頭をテーブルに押し付けた。
そして、腰に巻いていたカーディガンをオレの肩に掛けて頭をポンポンした。
その一連の動作をテーブルの反対側からしたことに、「長身羨ましいなークソ」とちょっと腹が立ったけど、お言葉に甘えて目を閉じたら案外アッサリ眠りに落ちた。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
さわさわと撫でられる頭が気持ちいい。
そろそろ起きないといけないのについ微睡んでしまう。
「おまえは………あの時の……**なのか?」
オレの頭を撫でる手がそう問いかける声が聞こえた気がした。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
「おい。おい、いい加減起きろ!」
バシッ
「ふあいっ」
頭叩かれて弾かれるように起きた。
社会科準備室はぐるっと見ると、だいぶ暗くなっていた。
「あれっ…今何時ですか?10分以上寝てました?」
「ああ、グッスリな」
「す、すみませんっ」
「ん、今日はいい。ホラ」
渡された教科書にはいくつかの付箋にメモが書かれていた。
「この辺重点的にやっとけば大丈夫だ」
オレが寝ている間にやってくれたんだ。
照れ臭そうにそっぽを向く皇貴先輩がなんか可愛く見えて顔がニヤけた。
「皇貴先輩、ありがとうございます」
「ーーっ」
素直に感謝を述べると、皇貴先輩は驚いた顔で固まった。
「あ、明日はいつもの抑制剤飲んでこい」
「えっ?」
「俺も一応抑制剤飲んでくるから」
チラリとこっちを見た皇貴先輩はそう言うと立ち上がった。
「帰るぞ」
「えっ、あ、はい」
バタバタとテーブルの上のものをカバンに仕舞うと、皇貴先輩を追いかけるように社会科準備室を出た。
あ、カーディガン。
また返すの忘れた……。
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この補講自体は6月いっぱいで終わりだったのだけど、皇貴先輩が期末試験対策もすると言い出して7月に入ったこの週も続いている。
職員室でそのことを担任に話すと隣の席の3-Aの皇貴先輩の担任に、このまま続けて欲しいと言われた。
ならば瑠可も誘おうと思ったら、それは皇貴先輩に却下された。
結局、マンツーマンの補講は今週末までやることになった。
初日の過度なスキンシップも翌日からなくなり平和そのものだ。
ただ、先週から、皇貴先輩から発せられる薔薇の香りが徐々にに強くなっている気がする。
あれかな、放課後、ここに拘束されていて、発散できずに溜まってるってやつか?
オレに手を出す様子はなさそうだからいいけど。
とはいえ、アルファのフェロモンにオメガが充てられて発情する場合があるっていうから、気を付けないといけない。
でも、皇貴先輩にはお願いし辛い。
「……い。おい。聞いてるか?」
「ふぇっ。あ、は、はい、すみません。聞いてませんでした」
「寝てんじゃねえよ。やる気あんのか?」
「……すみません…」
誰のせいだよ。
この時間帯だけいつもより強めの抑制剤飲んでる。
保健医に相談して2段階くらい強いやつをもらったから、副作用で眠くて仕方がない。
「抑制剤でも変えたのか?」
「ま、まあ、ちょっと強めのものにしました」
「体に合ってねーんじゃねぇの?」
「あーそれはあるかもしれませんね」
「あんま強いやつ使うと体に結構な負担が掛かるらしいから元に戻してもらえよ。あれで十分効いてただろ」
「……ちっ、誰のせいだよ」
「あ?」
しまった。
眠気と皇貴先輩の発言のイライラで、心に秘めておこうと思った言葉をつい口にしてしまった。
あー、すっげー睨んでる。
もういいや。
「そうです。皇貴先輩のせいですよ。先週から先輩のフェロモンが強くなってるから、充てられないようにこの時間だけ強めのやつ飲んでるんです」
「………」
「まあ、オレの勉強見てもらってるし、発散できないのはそれが原因でもあると思うので、皇貴先輩だけのせいじゃないんですけど」
「……悪りぃ」
素直に謝られて拍子抜けする。
「あ、いや、皇貴先輩を責めたかったわけじゃなくて…」
「俺のために強めの抑制剤飲んでくれたんだろ?」
「……はい。そうなりますね」
あの時のように迷惑かけたくないし、発情してまた休むようなことになったら困るから。
「悪かった」
頭を下げられる。
気まずい雰囲気が漂って、最早勉強どころじゃなくなった。
あーもう、面倒くさい。
つか、眠い。
「あの、皇貴先輩」
テーブルに顎を乗せて反対側で俯く先輩を覗き込みながら声を掛けると、先輩の顔がこっちを向いて目線が合う。
「なんだ」
「ちょっと寝ていいですか?今眠すぎて頭働かないんで……だから、ちょっと寝たらスッキリするかなって思うんですよね」
「………」
ううっ…。無言の圧が怖い。
「あ、あの、10分でいいんです。ダメなら今日はお開きーー」
「わかった」
「へっ?」
「10分でいいんだろ……ほら寝ろ」
皇貴先輩はそう言うと、オレの頭をテーブルに押し付けた。
そして、腰に巻いていたカーディガンをオレの肩に掛けて頭をポンポンした。
その一連の動作をテーブルの反対側からしたことに、「長身羨ましいなークソ」とちょっと腹が立ったけど、お言葉に甘えて目を閉じたら案外アッサリ眠りに落ちた。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
さわさわと撫でられる頭が気持ちいい。
そろそろ起きないといけないのについ微睡んでしまう。
「おまえは………あの時の……**なのか?」
オレの頭を撫でる手がそう問いかける声が聞こえた気がした。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
「おい。おい、いい加減起きろ!」
バシッ
「ふあいっ」
頭叩かれて弾かれるように起きた。
社会科準備室はぐるっと見ると、だいぶ暗くなっていた。
「あれっ…今何時ですか?10分以上寝てました?」
「ああ、グッスリな」
「す、すみませんっ」
「ん、今日はいい。ホラ」
渡された教科書にはいくつかの付箋にメモが書かれていた。
「この辺重点的にやっとけば大丈夫だ」
オレが寝ている間にやってくれたんだ。
照れ臭そうにそっぽを向く皇貴先輩がなんか可愛く見えて顔がニヤけた。
「皇貴先輩、ありがとうございます」
「ーーっ」
素直に感謝を述べると、皇貴先輩は驚いた顔で固まった。
「あ、明日はいつもの抑制剤飲んでこい」
「えっ?」
「俺も一応抑制剤飲んでくるから」
チラリとこっちを見た皇貴先輩はそう言うと立ち上がった。
「帰るぞ」
「えっ、あ、はい」
バタバタとテーブルの上のものをカバンに仕舞うと、皇貴先輩を追いかけるように社会科準備室を出た。
あ、カーディガン。
また返すの忘れた……。
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