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木曜日のパペットさん
元演劇部のパペットさん 9
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オレは心臓の痛みを抱えたまま木曜日を迎えた。
昨日は廊下で戸塚と一緒にいるところを見かけた。
戸塚に肩を掴まれた田波先輩は戸塚から目を逸らすように俯き、その様子は怯えているように見えた。
オレに気付いた戸塚は先輩の耳元に顔を寄せて、肩を竦める先輩に耳打ちするとオレに笑みを向けて離れていった。
その後、オレに気付いた田波先輩も走っていった。
モヤモヤしたまま迎えた今日は、朝からイライラした。
教壇に立つ戸塚がご機嫌なのが兎に角腹が立った。
「そういえば、今日も矢野休みだけど大丈夫なのか?」
「確かに。風邪酷いのかな?」
矢野は一昨日から欠席している。
一昨日メッセージを送った時『ちょっと風邪ひいただけ。軽めだから大丈夫』と返事はきたが、それ以降既読スルーされている。
オレたちに心配かけまいとしているのかと思うと余計心配になる。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
放課後。
足は自然に美術室に向かった。
行ったところで追い出されるかもしれない。
それでも会いたかった。
「こんちはー」
気合を入れてからガラッと扉を開けると、そこには誰もいなかった。
「先輩?……あれ?」
暫く呆然と立ちすくんでいると、ドタバタと煩い足音が近づいてきた。
振り返ったタイミングで開けられた扉から現れたのは矢野だった。
「えっ、矢野?風邪は大丈夫なのか?」
「んなのっ、仮病だよ。ハアッハアッ……それより、田波先輩を助けに行くぞ」
「助けって……まだ来てないだけじゃ……」
「たぶん此処には来ねえよ。ハジメ、お前がここに来るのわかってるから」
矢野の言葉に心臓が痛くなった。
「な、んで……」
「決まってんだろ。戸塚に別のとこに呼び出されたからだろ」
矢野に手を引かれ美術室を出たが、まだオレは混乱して足が動かなかった。
戸塚が田波先輩を呼び出したってどういうことだ?
「戸塚、あいつ此処の演劇部のOBだって言っていたから、演劇部の先輩に田波先輩のことについて聞いたんだ。そしたらなんかきな臭くて、学校休んでOBの何人かに話を聞きに行ってたんだ。そしたら埃が出るわ出るわ」
「埃って?」
「あいつ、気に入った部員を口説いて手を出していたんだよ」
手を出すってまさか……。
「おっ、察したか。たぶん田波先輩が演劇部を辞めてパペットがないと話せなくなった原因は戸塚だ」
「それって」
「近藤から戸塚が昨日田波先輩と何か話していたって聞いた。だとしたら、あいつはまた田波先輩を狙っている。で、行動を起こすとしたら今日だ」
「また……」
その言葉に昨日の田波先輩の様子を思い出す。
あの時耳打ちは今日先輩を呼び出すためのものなのか。
ならば、先輩は今戸塚にーー。
「矢野、先輩が何処にいるかわかるか?」
「わからない。今近藤が探しているがまだ見つかってない。戸塚は脅して口止めしてたみたいで今も怯えてて話してもらえなかった」
「なら探して早く見つけないと」
「ーー場所なら俺が知ってる」
走り出そうとしたオレと矢野がその声に振り返る。
そこにはボランティア部の顧問の細田が息を切らして立っていた。
昨日は廊下で戸塚と一緒にいるところを見かけた。
戸塚に肩を掴まれた田波先輩は戸塚から目を逸らすように俯き、その様子は怯えているように見えた。
オレに気付いた戸塚は先輩の耳元に顔を寄せて、肩を竦める先輩に耳打ちするとオレに笑みを向けて離れていった。
その後、オレに気付いた田波先輩も走っていった。
モヤモヤしたまま迎えた今日は、朝からイライラした。
教壇に立つ戸塚がご機嫌なのが兎に角腹が立った。
「そういえば、今日も矢野休みだけど大丈夫なのか?」
「確かに。風邪酷いのかな?」
矢野は一昨日から欠席している。
一昨日メッセージを送った時『ちょっと風邪ひいただけ。軽めだから大丈夫』と返事はきたが、それ以降既読スルーされている。
オレたちに心配かけまいとしているのかと思うと余計心配になる。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
放課後。
足は自然に美術室に向かった。
行ったところで追い出されるかもしれない。
それでも会いたかった。
「こんちはー」
気合を入れてからガラッと扉を開けると、そこには誰もいなかった。
「先輩?……あれ?」
暫く呆然と立ちすくんでいると、ドタバタと煩い足音が近づいてきた。
振り返ったタイミングで開けられた扉から現れたのは矢野だった。
「えっ、矢野?風邪は大丈夫なのか?」
「んなのっ、仮病だよ。ハアッハアッ……それより、田波先輩を助けに行くぞ」
「助けって……まだ来てないだけじゃ……」
「たぶん此処には来ねえよ。ハジメ、お前がここに来るのわかってるから」
矢野の言葉に心臓が痛くなった。
「な、んで……」
「決まってんだろ。戸塚に別のとこに呼び出されたからだろ」
矢野に手を引かれ美術室を出たが、まだオレは混乱して足が動かなかった。
戸塚が田波先輩を呼び出したってどういうことだ?
「戸塚、あいつ此処の演劇部のOBだって言っていたから、演劇部の先輩に田波先輩のことについて聞いたんだ。そしたらなんかきな臭くて、学校休んでOBの何人かに話を聞きに行ってたんだ。そしたら埃が出るわ出るわ」
「埃って?」
「あいつ、気に入った部員を口説いて手を出していたんだよ」
手を出すってまさか……。
「おっ、察したか。たぶん田波先輩が演劇部を辞めてパペットがないと話せなくなった原因は戸塚だ」
「それって」
「近藤から戸塚が昨日田波先輩と何か話していたって聞いた。だとしたら、あいつはまた田波先輩を狙っている。で、行動を起こすとしたら今日だ」
「また……」
その言葉に昨日の田波先輩の様子を思い出す。
あの時耳打ちは今日先輩を呼び出すためのものなのか。
ならば、先輩は今戸塚にーー。
「矢野、先輩が何処にいるかわかるか?」
「わからない。今近藤が探しているがまだ見つかってない。戸塚は脅して口止めしてたみたいで今も怯えてて話してもらえなかった」
「なら探して早く見つけないと」
「ーー場所なら俺が知ってる」
走り出そうとしたオレと矢野がその声に振り返る。
そこにはボランティア部の顧問の細田が息を切らして立っていた。
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