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木曜日のパペットさん
元演劇部のパペットさん 7
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翌週。
「ハジメ、どーしたんだよー」
「ずっと元気ないよな。なんかあった?」
「……別に……ウギュゥ」
オレが言い終える前に矢野がのし掛かってきた。
不意打ちに咳き込むオレに矢野は更に追い討ちをかけるようにデコピンをした。
「いっつ!」
「『別に』って顔じゃねえだろ」
「そうそう。『話を聞いて』って顔して何言ってんだよ」
「い゛っっつぅ」
近藤にまでデコピンされた。
痛むおでこをさすると2人はオレを立ち上がらせた。
「ここで話せないなら場所変えるぞ」
「次自習だし屋上行くか」
2人は文字通りオレを引きずって屋上へ向かった。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
「で、何があったんだよ」
屋上の隅で矢野と近藤に囲まれたオレは逃げられないと察し、覚悟を決めて話すことにした。
「金曜、廊下で田波先輩に会ったんだけど、めっちゃ避けられた……」
「田波先輩?あー、ボランティア部のリスのパペットさんね」
「リスじゃない。リスくんだよ」
「今それどうでもよくね?」
近藤との小競り合いは矢野に止められた。
「で、そこまで落ち込む理由をハジメはわかってんの?」
「理由?」
「まさか気づいてねぇの?マジか……」
2人は残念な生き物を見るような目をオレに向けた。
「ハジメはさ、田波先輩と毎週放課後一緒にいんのどうして?」
「先輩と過ごすのが楽しいから、かな」
「どう楽しいんだ?」
「先輩マスクして表情がわかり難いんだけど、笑った時の目が三日月みたいになってすっげー可愛いんだ。その顔見るとオレ心臓がバックンバックン鳴ってちょっと痛くなるんだけど、それをさっ引いてもあの笑顔が見たいから、それで……あとただ一緒にいたいんだと思う」
思い出すとつい笑顔になる。
それにマスクを外して口角を上げて歯を見せて笑ったらもっともっと可愛いんだろうって思ってる。
マスクの下の顔を見たのはあの一度だけだけどオレの脳裏にしっかりこびり付いてるから、それを基に笑顔の妄想したらニヤけた。
「じゃあさ、なんでハジメは田波先輩に避けられちゃってんの?なんかあったんじゃね?それともなんかした?」
「なんか……あ」
矢野に言われて考えたオレはその原因にすぐに思い至った。
「何があった?」
「先週の木曜日。美術室に戸塚が田波先輩と一緒にいた」
「戸塚って教育実習の?」
聞いてきた近藤を頷き、あの時オレが見たものを思い出す。
「扉開けたら先輩が戸塚と一緒に居て、オレを見た先輩がすごくビックリした顔してて……それだけじゃなくて、なんかそん時の空気が……あ……」
「ハジメ?」
「ごめん。これ以上は話したくない、かも」
近藤は不服そうな顔をしたが、無理矢理聞き出そうとはしなかった。
「ならしゃーないな。なっ、矢野……?」
「矢野?」
難しい顔で俯いていた矢野は、顔を上げてオレたちを見た。
「少し調べたいことができた」
矢野はそう言い残して屋上から出て行った。
____________________
次回は18時更新予定です。
「ハジメ、どーしたんだよー」
「ずっと元気ないよな。なんかあった?」
「……別に……ウギュゥ」
オレが言い終える前に矢野がのし掛かってきた。
不意打ちに咳き込むオレに矢野は更に追い討ちをかけるようにデコピンをした。
「いっつ!」
「『別に』って顔じゃねえだろ」
「そうそう。『話を聞いて』って顔して何言ってんだよ」
「い゛っっつぅ」
近藤にまでデコピンされた。
痛むおでこをさすると2人はオレを立ち上がらせた。
「ここで話せないなら場所変えるぞ」
「次自習だし屋上行くか」
2人は文字通りオレを引きずって屋上へ向かった。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
「で、何があったんだよ」
屋上の隅で矢野と近藤に囲まれたオレは逃げられないと察し、覚悟を決めて話すことにした。
「金曜、廊下で田波先輩に会ったんだけど、めっちゃ避けられた……」
「田波先輩?あー、ボランティア部のリスのパペットさんね」
「リスじゃない。リスくんだよ」
「今それどうでもよくね?」
近藤との小競り合いは矢野に止められた。
「で、そこまで落ち込む理由をハジメはわかってんの?」
「理由?」
「まさか気づいてねぇの?マジか……」
2人は残念な生き物を見るような目をオレに向けた。
「ハジメはさ、田波先輩と毎週放課後一緒にいんのどうして?」
「先輩と過ごすのが楽しいから、かな」
「どう楽しいんだ?」
「先輩マスクして表情がわかり難いんだけど、笑った時の目が三日月みたいになってすっげー可愛いんだ。その顔見るとオレ心臓がバックンバックン鳴ってちょっと痛くなるんだけど、それをさっ引いてもあの笑顔が見たいから、それで……あとただ一緒にいたいんだと思う」
思い出すとつい笑顔になる。
それにマスクを外して口角を上げて歯を見せて笑ったらもっともっと可愛いんだろうって思ってる。
マスクの下の顔を見たのはあの一度だけだけどオレの脳裏にしっかりこびり付いてるから、それを基に笑顔の妄想したらニヤけた。
「じゃあさ、なんでハジメは田波先輩に避けられちゃってんの?なんかあったんじゃね?それともなんかした?」
「なんか……あ」
矢野に言われて考えたオレはその原因にすぐに思い至った。
「何があった?」
「先週の木曜日。美術室に戸塚が田波先輩と一緒にいた」
「戸塚って教育実習の?」
聞いてきた近藤を頷き、あの時オレが見たものを思い出す。
「扉開けたら先輩が戸塚と一緒に居て、オレを見た先輩がすごくビックリした顔してて……それだけじゃなくて、なんかそん時の空気が……あ……」
「ハジメ?」
「ごめん。これ以上は話したくない、かも」
近藤は不服そうな顔をしたが、無理矢理聞き出そうとはしなかった。
「ならしゃーないな。なっ、矢野……?」
「矢野?」
難しい顔で俯いていた矢野は、顔を上げてオレたちを見た。
「少し調べたいことができた」
矢野はそう言い残して屋上から出て行った。
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次回は18時更新予定です。
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