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木曜日のパペットさん
元演劇部のパペットさん 4
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無事、田波先輩にご挨拶と自己紹介ができたオレは、毎週木曜日の放課後に美術室へ行くのが日課になった。
田波先輩に認識してもらったことで、校内でも会えることが増えた。
1ヶ月も通うと、いくつかわかったことがある。
田波先輩はそれほどお喋りな方でない。
喋る時は必ずリスくんを通すがそれでも口数は少ない。
でも、話し掛けるとちゃんと答えてくれるし、たまにだけど笑ってくれる。
田波先輩は喋るのが嫌いな訳ではないようだ。
「先輩。新作のチョコ見つけたんです。食べませんか?」
左手にリスくんを付けたまま本を読んでいた先輩は、“チョコ”という単語にガバリと頭を上げてまん丸な目をしてオレを見た。
「チョコ?」
「そ、チョコっす。はいどーぞ」
差し出したチョコレートの箱を恐る恐る覗き込んだ先輩は、本を置き右手で一つ取りマスクをずり下げてパクリと食べた。
何回か咀嚼した後「美味しい」って笑った。
その一連をポカンと口を開けたまま見ていたオレに気づいた先輩は慌ててマスクを付け顔を隠してしまった。
「あっ!なんで隠しちゃうんですか?」
「なんでって、見せたくないからだよ。だから、倉田くんも忘れてよ」
リスくんがそう言ったけど、忘れられるわけがない。
だってマスクの下に隠されていた鼻や口は小さくて可愛らしかった。
目が大きいから小さく見えるのかな。
あと、左の下唇のすぐそばに黒子があって、それが咀嚼した時に上下に動いてちょっと上がった口角が色っぽかった。
それは、オレの心臓を坂道を全力で駆け上がった時並みにドキドキさせた。
「先輩!もう一個どうですか?」
「はいっ」と差し出すと目を細め不審者を見るような目を向けられた。
その顔のままチョコをもう一個摘むと、オレに背を向けて食べた。
先輩の笑顔は一晩経っても忘れられなかった。
もう一度だけ。
いや、もっともっと見たい。
そう思ったオレは、翌週から餌付け作戦を始めた。
田波先輩に認識してもらったことで、校内でも会えることが増えた。
1ヶ月も通うと、いくつかわかったことがある。
田波先輩はそれほどお喋りな方でない。
喋る時は必ずリスくんを通すがそれでも口数は少ない。
でも、話し掛けるとちゃんと答えてくれるし、たまにだけど笑ってくれる。
田波先輩は喋るのが嫌いな訳ではないようだ。
「先輩。新作のチョコ見つけたんです。食べませんか?」
左手にリスくんを付けたまま本を読んでいた先輩は、“チョコ”という単語にガバリと頭を上げてまん丸な目をしてオレを見た。
「チョコ?」
「そ、チョコっす。はいどーぞ」
差し出したチョコレートの箱を恐る恐る覗き込んだ先輩は、本を置き右手で一つ取りマスクをずり下げてパクリと食べた。
何回か咀嚼した後「美味しい」って笑った。
その一連をポカンと口を開けたまま見ていたオレに気づいた先輩は慌ててマスクを付け顔を隠してしまった。
「あっ!なんで隠しちゃうんですか?」
「なんでって、見せたくないからだよ。だから、倉田くんも忘れてよ」
リスくんがそう言ったけど、忘れられるわけがない。
だってマスクの下に隠されていた鼻や口は小さくて可愛らしかった。
目が大きいから小さく見えるのかな。
あと、左の下唇のすぐそばに黒子があって、それが咀嚼した時に上下に動いてちょっと上がった口角が色っぽかった。
それは、オレの心臓を坂道を全力で駆け上がった時並みにドキドキさせた。
「先輩!もう一個どうですか?」
「はいっ」と差し出すと目を細め不審者を見るような目を向けられた。
その顔のままチョコをもう一個摘むと、オレに背を向けて食べた。
先輩の笑顔は一晩経っても忘れられなかった。
もう一度だけ。
いや、もっともっと見たい。
そう思ったオレは、翌週から餌付け作戦を始めた。
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