ボッチ英雄譚

3匹の子猫

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第18話

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 冒険者として1日目の朝がやってきました!

正確には2日目なんですが、昨日はずっと寝てただけなのでノーカウントでいくことにします。


 冒険者ギルドに到着すると僕たちは依頼の貼ってある掲示板に直行しました。掲示板の前は既に凄い人だかりです。

僕はFランクの依頼を貼ってある掲示板の前に並びました。他のランクの掲示板に比べるとここはあまり人がいません。

理由はやはり登録したての冒険者でもパーティーを組めばDランクの依頼を受けられることと、登録したての冒険者でソロで活動する人も少ないというのも理由かもしれません。

カッシュたちはDランクの討伐クエストを、僕はFランクの薬草採取の依頼を2つ受けました。


 冒険者ギルドでは、依頼は同時に最大3つまで受けることができます。依頼は1度受けると期限までに達成できなければクエスト失敗となり、依頼に最初に記載がなければ特に違約金などは取られませんが、ギルドがその実績を判断して受注できる依頼に制限が掛かってきます。

 さらに常時討伐クエストや常時採集クエストなどがあり、それに該当する魔物を討伐した場合やそれに該当する薬草などを採集してくるといつでもギルドからクエストを成功したものと扱われます。

ただし、常時クエストは報酬額が少ないので、他のクエストのついでに行うものです。


 今回僕が受けた依頼内容は、ヒール草を50本と毒消し草を50本で合わせて銀貨1枚という内容です。そう、カミュー師匠の試験で採集した時と全く同じ内容です。

この2つとも常時採集クエストにも当てはまるのですが、そちらでは半額の銅貨50枚にしかなりません。急ぎで欲しい人がいる場合にはこのように同じ内容でも高額で依頼が出るのです。


 この世界の貨幣は銅貨100枚で銀貨1枚と同じ価値となり、銀貨100枚で金貨1枚と同じ価値となります。もっと上の貨幣もあるそうなのですが、僕には縁のないものです。

銀貨1枚の価値は中級程度の宿に1泊素泊まりできるくらいの価値です。先日の事件に巻き込まれた宿はこの王都でも最安値だった為、4人部屋で1人素泊まり銅貨20枚でした。

事件に巻き込まれるくらいなら、もう少しだけでも良い宿を使うべきだったと今なら思えます。


 受付のお姉さんに聞いたところ、一番近いのは王都の西の森の中で採集できるそうです。魔物も弱く危険は少ないそうです。僕は早速、西の森へ向けて出発しました。


 西の森は徒歩で2時間もかからず行ける場所で、木こりたちが王都で使用する木材を伐採したりもする比較的安全な森です。まあ僕の村でいう東の森のような場所ですね。

西の森に入っても現れる魔物はとても弱い魔物ばかりで、向こうから襲って来ない限りは無視して奥に進んでいきました。20分ほど森の中に進んで行くと、とうとう薬草たちが生えている場所に出ました。


 ここまで来れば、薬草探索スキルを持ってる僕には薬草採集は何の苦労もありません。調子に乗って持ってきた大袋2つが満タンになるまで採集してしまいました。依頼の倍は採ってる筈です。

それでも森に入ってまだ2時間も経ってないです。


 まだ街に戻るには早すぎる時間なので、僕はここで今採ったばかりの薬草から回復薬と毒消薬を作れるだけ作りました。調合は道具と魔力さえあれば、どこでも薬を作ることができるのです。

できた薬を道具袋に入れて、僕は再び袋がいっぱいになるまで薬草を採集しました。


 僕がそろそろ街に戻ろうとしていると、森の奥から誰かの叫び声が聞こえてきました。僕は念の為できる限り気配を消して声の方へ急ぎました。

これも冒険者教本その1ー死なない為の心構えに書かれていたことなのです。


 長生きする為にはトラブルには極力近づかないことだ!ただし、安全な道ばかりを選んでいては大成もあり得ない!!

ならば、どうするか…そのトラブルが自分達に越えられる内容かを見極める目を持つことだ!それを判断できるまでは無闇矢鱈に危険に関わろうとはするな!!

状況を見極め、自分達に越えられるトラブルだと判断するまでは、たとえ人助けだろうと、たとえ誰かが死ぬことになったとしても行動を急ぐな!お前の命は1つだけなのだ!


という内容です。



 声のした方へ近づくと、1人の女性が魔物の集団に襲われていました。魔物はゴブリンのようです。

ゴブリンとは人間の子供ほどの大きさで緑色の皮膚を持ち、醜い鬼のような顔で牙が飛び出た人型の魔物で、人と同じように武器を使って襲ってきます。ゴブリンは個体ではそんなに強くありませんが、集団で襲われると少し厄介な相手となってしまいます。


 僕は悩んだ末、女性を助けることにしました。理由は集団とはいえ5匹程度の数なのと、ゴブリンの中に上位種が混じってなかった為です。何よりもこれで見殺しにしたら目覚めが悪いと思ったからです。

上位種とはゴブリンが進化した個体で、普通のゴブリンよりもはるかに強い存在です。


 僕はゴブリンたちの後方に回り込み、静かに一番近いゴブリンへ向けてハンマーで殴り掛かりました。


「ゴッ!」


という音と共にゴブリンの頭は深く陥没し、そのまま倒れ去りました。その音に反応して他のゴブリンたちも僕の方を振り返りましたが、その時には僕は既に2匹目のゴブリンの頭を殴り殺したところでした。


「「キシャーー!!」」


ゴブリンたちは不意討ちで仲間をやられた怒りからかしきりに声を荒らげてきます。


「大丈夫ですか?」


女性からは返事はありませんでした。どうやら襲われたことで怯えきって声も出ないようです。


 僕はゴブリンたちが女性を襲うのを中断し、僕に標的を定めたことを確認して女性から僅かばかりか距離を取りました。


ゴブリン3匹は連携を取りながら、持っているこん棒を掲げて近づいてきますが、先日のシーフの男の動きに比べれば遅く、稚拙な動きなので簡単に攻撃を受け流すことに成功し、3匹ともあっという間に地面に横たわることになりました。



 僕は改めて怯えている女性に近づき声を掛けました。


「ゴブリンたちは倒しました。大丈夫ですか?」


女性は僕が近づくと僕に抱きついてきました。まだカタカタ震えているようです。


「何故1人でこんなところにいたんですか?」


「助けて頂いてありがとうございます。私はポーターのニコルです。」


「僕はロンといいます。しかし…ポーターですか?余計にポーター1人でこんなところに来るのは危ないですよ!」


 ポーターとは、荷物を運ぶ為の存在です。仲間が倒した魔物を解体して必要な素材だけを取り出し、収納するのが仕事です。ポーターのジョブを持っていると、異空間収納というスキルを覚えることができ、荷物をスキルレベルに応じて異空間に収納し、持ち運ぶことができるのです。

優秀なポーターは有能なパーティーには必ずといっていいほど存在しています。ただしポーターは戦闘能力は上がりにくいので、優秀なポーターほど、必ずといってもいいくらい異空間収納のレベルが上がると安全で稼げる、商人の専属ポーターとなります。



「1人で来たんじゃないんです。冒険者としてパーティーを組んで、ここより奥にあるゴブリンの集落を討伐しに来たんです!!

なのにあいつら…ゴブリンの中に上位種がいることが分かった途端に逃げ出して…!追いつかれそうになったら、私を突き飛ばして自分たちだけ逃げていったんです!!」


「それは酷いですね!街に戻ったらギルドに報告しましょう!!パーティーを組んでいたのなら、誰だか分かりますよね?

それにしても上位種ってゴブリンソルジャーですか?」


「いえ、信じられないかもしれないですが…あれはゴブリンジェネラルだと思います。」


「ジェ、ジェネラルですか!?」


 これには僕もかなり驚きました。

 ゴブリンジェネラルはゴブリンの中でもかなり上位に当たる存在です。そして、ゴブリンジェネラルが存在する集落には高確率でさらに上の存在であるゴブリンの王様であるゴブリンキングが存在することが多いのは冒険者には常識です。


そしてゴブリンキングが存在する集落を討伐するとなれば、かなりの大規模な討伐隊を組む必要があります。



「早くこのことをギルドに報告しないといけません。」


「そうですね!では一緒に街に戻りましょう!」



 僕たちがその場を離れようとしていると、そいつは現れました。
太い手足に、ゴブリンとは思えないくらいの大柄で、皮でできた鎧を着こなし、大型の鉄の剣を腰に携えた存在…


そう、ゴブリンジェネラルでした。

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