ボッチ英雄譚

3匹の子猫

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第9話

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 僕の目の前にはレッドキングスパイダーの大きく開かれた口が、今にも僕をおいしく食べようと迫っています。


僕は体の自由を奪っている蜘蛛の糸をどうにかしようと必死にもがきますが、余計に絡まって身動きが取れなくなります。



このままじゃ、食べられてしまう!でもこの糸はどうにもできそうにない…これは詰んだ…


 僕は絶望し、諦めかけていました。


「どんなピンチが訪れても最後まで生きることを諦めちゃダメ!どんなに惨めでも最後まで足掻いて生きなさい!!」


ハーレー先生の声が聞こえてきたように感じました。


そうだ!最後の瞬間まで絶対に諦めちゃ駄目なんだ!僕はあの人たちの弟子なんだから!!



 僕は必死に体を捻り、地面に倒れこみ、レッドキングスパイダーの補食を命からがらで避けました。


それが気に入らなかったのか、レッドキングスパイダーは糸で動けない僕に向けてさらに毒の霧を吐き出しました。


できるだけ吸わないようにはしましたが、完全には無理でした。


体はみるみるうちに力が抜けていき、糸と相まって殆ど動けなくなってしまいました。


どうする…どうすればいい?毒消薬を飲むにしろ、この糸をどうにかしないといけない。……糸!?そうか!糸だ!!



 僕はあるスキルを放ちました。

それは裁縫のスキルで、糸切りというスキルです。魔力を込めた丈夫な糸を切る為だけのスキルです。


魔物の作り出す糸にも効果があるのかは自信がなかったのですが、やるしか助かる道はないのです。


賭けは成功したようで、僕に絡まっていた蜘蛛の糸は「ぶちぶちっ」という音を立てて、次々と切れていきました。


僕はそのまま転がってレッドキングスパイダーと距離を取り、急いで毒消薬を飲みました。

薬の効果は絶大で、あれほど力が入らなくなっていた体は瞬時に元の状態に戻っていました。


お陰ですぐに追撃をしようとしていた、レッドキングスパイダーの足を振り下ろす攻撃も無事に避けることができました。


これで、ようやく戦いはスタート時点に戻ったのです。



 僕は逃げることを諦めました。目の前のレッドキングスパイダーは完全に捕らえた餌が再び動き出したことにお怒りの様子で、凄い声をあげて威嚇してきています。

さらに先ほど回り込んで追い詰めようとしていたことから、移動速度は残念ながら僕よりレッドキングスパイダーの方が上なんでしょう。

とても僕を逃がしてくれるとは考えにくいです。



 生き残る為には戦ってこいつを倒すしかないのです!!


僕はこの凶悪な敵を倒す決断をし、目の前のレッドキングスパイダーと相対しました!!!




 先制してきたのはレッドキングスパイダーでした。

再び糸を吐き出し、僕を拘束しようとしてきました。僕は今度はくることが分かっていたので、落ち着いて横に避けました。

レッドキングスパイダーはそれを追うように次々と糸を吐き出してきます。僕はそれを避けながらチャンスを待ちました。


いくら魔物といえど体内で糸を作成しているのだから、これだけ吐き出し続ければいつかは止まるだろうと…すぐにその時はやってきました。


 僕は糸を吐き出すのが止まると同時に、レッドキングスパイダーに全力で駆け寄りました。右手にはハンマーを持ち、その頭を目掛けておもいっきり殴り掛かりました。

ハンマーは見事に命中し、レッドキングスパイダーの8つあるうちの2つの目を潰すことに成功しました。


「ぐぎゃーーーー!!」



 しかしこれはレッドキングスパイダーの益々の怒りを買うことになり、僕を襲う攻撃はこれまでの比にならないくらい熾烈なものとなりました。


これまではただ餌を補食しようとしていたのが、敵と判断されたのでしょう。捕まえる目的の糸や毒霧だけでなく、口から溶解液を吐き出し飛ばしてくるようになりました。

その溶解液は地面に落ちると「ジュワッ」という音を出して、そこにあった草花を一瞬にして溶かしてしまいました。


 そこからは防戦一方でした。

次々と糸、毒霧、溶解液、さらには8本ある足のうちの4本までも僕を殺そうと襲いかかってきたのです。


 そんなもの完全に防ぎきれる筈もなく、溶解液だけは喰らっては不味いと、糸を喰らったらすぐに糸切りで逃れ、毒霧を喰らえば毒消薬で回復して何とか凌いでいましたが、とうとうその凶悪な足に腹部を殴り飛ばされて吹き飛ばされてしまいました。

痛かったですが、僕は追撃を恐れてすぐに起き上がりました。だが既に目の前には溶解液が既に広がっており、僕に降りかかろうとしていました。


「ジュワッジュワッジュワッ!!!」



熱い!!顔が熱い!!痛い!!痛すぎる…!!!


溶解液は容赦なく僕の皮膚を溶かして、さらには肉をも溶かそうとしてきます。
体中が痛みに耐え切れず痙攣を起こしています。


 レッドキングスパイダーは勝利を確信してゆっくりと僕を補食しようと近づいてきます。


 僕は痛みに耐えながらも、必死に回復薬を飲み込みました。するとあれほどあった痛みや熱さが嘘のように引いていき、再び自由に動けるようになりました。


危なかった…苦痛耐性のスキルが上がってなければ、今の溶解液で回復薬を飲むことすらできずにやられていた。ハーレー先生の強烈なハグに毎日耐えてきたのがこんなところで役立ったぞ!


 回復薬1つでは顔の怪我は全然治りきれていませんでしたが、今は動けるだけでも感謝したい…これがカミュー師匠の言っていた回復薬を実際に使う者の気持ちなのでしょう。

あの地獄の痛みから解放され、僕は回復薬のありがたみが心の底からよく分かりました!!



 目の前には大きく口を開けたレッドキングスパイダーが迫ってきていました。

僕はここをチャンスと思い、残る6つの目のうち同時に3つを潰せそうな場所に思いっきりハンマーで叩きつけました!!


「ぐぎゃー!!うぐぎゃー!!」


レッドキングスパイダーは痛みにもがいていたので、さらに追撃でもう2つの目を狙いハンマーを降り落としました。


これで残す目は1つだけ!それも潰しておきたいと思いましたが、さすがにレッドキングスパイダーもそれを嫌い距離を取ってきました。


 僕はその隙にもう1つ回復薬を飲み込みました。これで溶解液でやられた傷は完全に回復したようです。


残る回復薬は3つ、毒消薬は1つ。
これがこの強大な魔物と戦う僕の生命線です!


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