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第95話 アクティーたちとの再会

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俺はビアンカの真剣な質問へ返答する。

『はっきりと断言は出来ないが、これらの資料を見る限りは不可能ではないと思う。

だけど、それにはかなりの苦痛が伴うことになるかもしれない…

半端な覚悟では出来ない…それこそ先日の実験の時と同レベルの痛みが襲うかもしれない。。

それでも興味はあるか?』


『勿論興味はあるわ!あの時と同レベルの痛みってのは怖いけどね…でもどうするの?』


『今のビアンカの体の中には、ダイヤウルフの核といわれる存在が全部で6つ結合してるみたいなんだ。そのうちの4つは手足の付け根の部分なので、比較的ビアンカに覚悟さえ持てば取り除くことは出来ると思う。この時の痛みは俺のスキルで気持ちよく変化させることは出来ると思う。

しかし、それを取ってしまうと、おそらくはビアンカの体はまたより人間に近い形へと作り変えられ始めるはずだ。その時は、俺のスキルで痛みを取るとその影響でビアンカの体にどんな影響を与えるか予想出来ないから、体が作り替えられる痛みはビアンカ自身に耐えてもらうしかない。

この時に伴う苦痛のレベルは予測できないので、実験の時と変わらないものだという最悪の覚悟を持って臨むべきだと思う。』


『なるほど…そういう苦痛なのね!それなら、喜んで耐えることが出来そうだわ!…だって、元に戻ってるってことを確認できる痛みなんでしょ?』


『ただ全部取り除く訳ではないから、どの程度変化するかは予想も出来ない。最悪…何の変化もない恐れすらある。。それでも挑戦をするかを決めるのはビアンカに任せる。

俺は挑戦をするにしろ、しないにしろ、ビアンカの体へ一番負担のない形で行えるよう様々な準備だけはしておこうと思う。』


『答えを待つ必要はないわ…私はアランの準備が出来次第挑戦をするわ!それを戸惑う程度の決意なら、こんな自分勝手なことにアランを巻き込んだりしないわ!!』



こうして、俺はビアンカのオペモドキの準備に奮闘した。具体的にいうと、まずはエリーの尻尾で丸薬を作ること。

次に、体に巻き付けるベルトのようなアクセサリーを大量に作った。といっても、ただの布を巻き付けて大きさに合わせてボタンで固定する程度の簡単なものだ。

そんなものを何に使うかというと、付与で大量の「回復速度」を付け、オペの時に胴体部分に巻き付けておこうと思ったのだ。止血の速度も上がり、出血自体減るだろう。効果は微々たるものかもしれないが、思い付く限り少しでも危険を減らすための努力をしているのだ。


そして最後にビアンカの体自体を調べることだ。何だかんだで、今の状態の詳細を調べてないのだ。

顔はやはり狼に変わってしまっている。人間の耳はなくなり代わりに犬耳が頭の上に出来ている。髪の色だけでなく、瞳の色も以前とは違い銀色に変わっていた。

体もよく調べると殆ど全身に毛が生えていた。手足には肉球まで出来ており、爪も人間のものに比べると尖ったものになっていた。

『手の肉球柔らかくて気持ちいいな?それにお腹側の毛は、毛質は柔らかくてさわり心地も悪くない。しかも、胸の毛だけは薄めで何だか強調されていてかなりエロいな…』

『ちょっと!?体の状態を調べるためっていうから、裸で協力してるのに、何だか趣旨が変わってない?』

『ごめんごめん…つい脱線してしまった。

今度は体の中を調べてみようと思う…といっても出来るかは分からないんだけど。。』


俺がしようとしているのは、アーガイア鉱山で出会った「リアム」がしていたことへの挑戦だ。リアムは、俺に気の使い方を教える際に、気の流れを見ることで人の体の状態を把握していたのだ。もし俺にもそれが可能ならば、ビアンカと同化している核の場所が正確に分かるかもしれないと思ったのだ。

3時間ビアンカに触り続けた結果だが、俺に出来たのはビアンカに何となく気が流れてることが分かる程度。とても、治療に役立てられるレベルではなかった。

『やっぱり俺には無理っぽいな…全く分からないや。。』


俺に思い付く限りの準備など、この程度のものだ。丸1日もあれば準備出来てしまった。


しかし、まだオペは行わない。

早ければ明日辺り、アクティーたちが追い付いてもおかしくないので、今日アクセサリー作りに必要な布やボタンを買いに行くついでに、バルマの街の門番に俺たちが元帝国の砦にいることを伝言を頼んだのだ。

到着を待つ理由は、オペの際には、アクティーの手伝いもあった方がより安全性が増すと思ったのだ。


この俺の予想はいい意味で覆された。その夜、部屋でビアンカと談笑していると、兵士がやってきてアクティーたちの到着の報告を受けたのだ。直ぐに部屋に連れて来てもらうことにした。

『アクティー!ギル!早かったな!?』

『アラン!アランとビアンカが心配だったから、急いだのよ!ギルがよく頑張ってくれたわ。殆ど御者を引き受けてくれていたのよ。』

『そうだったのか。ギルありがとう!よくみんなを連れて来てくれた。』

『いえ、僕に出来ることをしたまでです。アラン様に、また会えて嬉しいです。』

『やっとダーリンに追い付いたにゃ♪』
ましろはそういうと、俺の服の中に移動していった。


『ところで、ビアンカはどうなったの?』
アクティーが詰め寄る。

『ビアンカは…今は命の危険はないんだが、大変な状況はまだ脱してないんだ。。』

『えっ?どういうこと!?大怪我でもしたの?』

『違うんだ。ビアンカは、帝国の人体実験に巻き込まれて、モンスターと一体化してしまったんだ。見た目は、ウエアウルフに似ている状態になっている。姿以外は、ビアンカそのものだから安心していい!』

いきなり姿を見せるとびっくりさせると思って、ビアンカは隣の部屋で待たせている。

『どういうこと?何故そんな訳の分からない状況に??』

『後は実際に見てもらった後に説明するよ。』


俺は一度部屋を出て、ビアンカを連れてくる。


『アクティー久しぶりね!』

『っ!!本当にビアンカなの!?何故そんな姿に…』
アクティーは、ビアンカを今の姿を見て絶句してしまった。


『さっきも言ったが、帝国のグロクテス博士って奴の恐ろしい実験のせいだ。人間とモンスターを1つにする実験を行ってる奴だ。王国の囚人が、帝国へ運ばれていたのはこの実験の素材にするつもりだったようだ。

ビアンカを救出するために、俺が奴の秘密基地へ乗り込んだとき、既にビアンカにはモンスターの結合がされており、俺の目の前でビアンカはこの姿になったんだ。』


『そうだったの…でも、そんなことが可能だなんて恐ろしいわね?帝国の技術はそんなにも進んでるの?』

『それはちょっと違うのかもしれない。帝国の技術というよりは、グロクテス博士個人の技術が抜きん出てるだけで、他の人間には真似のしようがないと思うよ。

奴は、「科学者」という特殊なジョブを持ち、「結合」というスキルを利用して、本来合わさることの出来ないものでも無理やり1つにすることが出来るらしい…この実験も奴のスキルの実験と言っても過言ではない内容なんだ。』


『そうなのね…ビアンカを元に戻すことは出来ないの?あのままではあまりにも酷い…』

『完全に元に戻すには、グロクテス博士の協力が不可欠だ!しかし、奴の研究レポートを発見し、読み解いたことで、今よりは、かなり人間の体に戻すことが出来るんではないかと思っているんだ。

今俺たちは、正にその準備をしていたんだ。アクティーにもそのための協力をお願いしたい。』

『勿論協力するわ!私に出来ることがあるなら、何でも言って!!』



こうして、俺たちはビアンカのオペに挑む事となったのだ。
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