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第51話 それは突然に…
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神殿のとある部屋では、2人の男が話をしていた。
『で…調べはついたのか?このアランという近衛兵は一体何者なのだ?』
疑問を投げ掛けたのは、初老の法衣の男だ。
情報を集めることを生業にしている、もう1人の男が答える。
『今、話題になっているラトル教育村の村長の長男のようです。今年成人の儀を迎えたようですが、どのギルドにも所属してませんでした。
何のジョブを取得してるかは未だに不明です。
噂によれば、ハリー王子からは、親友と呼ばれるほどの間柄で、王子の勉強の全てを担っているようです。
マリア王女からは、自分の全てを捧げるとまでの求愛を受けているようです。
新しく王女になったエリス王女からの信も厚いようです。
この者が間に入ったことにより、この3人の王位継承権上位3名の争いが無くなり、逆に協力体制に入ったと言われております。
今話題のラトル教育村の教育方法、テキストの作成も全てこの者が1人で行ったとされております。また、王都学園学園長であるミグルス・ミドローアからも信頼され、学園の教育にも関わり、現在先頭に立って変革を行ってる模様です。
これだけの偉業と、人脈作りを、成人の儀からたった半年の現在までに行ったというわけです。』
『誰が、偉業の数々を調べて来いと依頼した?私は、この若者が、どのような特殊な方法でこれらの偉業や人脈を作ったのかを知りたいのだ。』
『分かっているのは、成人の儀の直後、初級者ダンジョンチューケイブの前にて、このアランの婚約者がナンパ男たちから絡まれているところを見事に退治したことをエリス王女が気に入り、この2人をパーティーに誘ったようです。これには多数の目撃者がおりました。
その後、エリス王女の紹介で近衛兵の就職試験を受けてます。この出会いは、おそらく偶然でしょう。
次に、エリス王女の直属となると思われますが、配属は、何故かハリー王子のところへなっておりました。
調べたところによると、配属の直前にハリー王子の陣営とエリス王女の陣営で秘密裏に会合が行われていたようです。
おそらく、この時に、何らかの理由で、アランのハリー陣営へ入ることが決まったものと考えられます。
最後に、マリア王女ですが、マリア王女とハリー王子は敵対しており、一度マリア王女の手の者に、アランとエリス王女の陣営に入ったアクティーというもの2名が拉致されたのでは?という目撃者がおりました。その後、この神殿に運ばれた模様ですが、そこから先のことは分かりません。
しかし、マリア王女に拉致された敵陣営の者を、仲良くどころか、愛してるとなると…
可能性と予測の範囲は出ませんが、魅了系の何らかのスキルを持っている可能性がありますな…』
『魅了スキルだと?そんなスキル、物語の中でしか存在しないのではないのか?』
『物語とは、一部事実が混じることもあります。しかし、あくまでも私の勘ですので、あまり鵜呑みになさらぬようお願い致します。
それと、ラトルの教育方法もテキストの内容も疑いようのないほど素晴らしい内容でした。歴史上稀にみる天才というのは間違いないかと。
就職試験の学科は120分のテストを35分で満点でした。疑いようがない天才ですな…』
『そうか、そこは本物だと言えるのだな?』
『そこは間違いないかと…』
「コンコンコン…」
扉が叩かれ、もう1人の人物が現れる。アランの成人の儀でお世話になった教皇ロメロだ。
『おや、珍しい人物がいますね?大事な話の最中でしょうか?出直した方がよろしいですかな?』
ロメロは優しい口調で問いかける。
『教皇ロメロよ…我々などにそのようなお気を使われる必要はございません。ただ、最近世間を騒がしている者について話していただけです。』
『世間を騒がす者ですか?どのような方でしょうか?
神殿に籠ってばかりで世間の変化についていけない老いぼれにご教授願えますか?』
『教皇…
そのような冗談はお辞め下さい。我々のような下々のものには肝が冷えますので…
世間を騒がす者ですが、この者です。』
ロメロに、似顔絵付きの資料が渡される。
『今年成人の儀を迎え、近衛兵になったものなのですが、名をアランと申します。
今話題になってる、ラトル教育村の教育方法からテキストの全てを1人で作り上げた天才です。
さらに、ハリー王子とマリア王女とエリス王女の王位継承権上位3名の仲を取り持った立役者とも言われております。
この者の憶測によると、もしかしたら魅了系のスキルを持つかもしれないとのことです。』
『魅了系のスキルですと?それは神を冒涜する力として、昔から悪魔の能力と言われてる筈です。
ジョブは神から与えられる能力であり、そのようなスキルを持つジョブは私は知り得ません。
憶測といえど、そのような考えは危険な思想といえるかもしれません。』
『もしかしたら、過去にそのようなジョブが存在していた歴史があるかもしれないとしてもでしょうか?』
ロメロが現れてから、今までずっと黙っていた情報屋が語りだす。
『約1000年前、この国ではとある魔女が3代にも渡って王家を完全に支配し、乱れた時代がありました。その魔女は、人を魅了するスキルを持つジョブを得ていたと言われております。』
『それは、物語の話ではないのですか?』
『ジョブの名前は伝わってませんが、その歴史が事実であると考えることが出来る文献は、数多く見つかっております。
私は、情報屋として、資料の信憑性などからおそらく真実の歴史だと考えております。』
『あなたがそこまで言うということは、それなりの文献から歴史を紐解いたのでしょうね…
分かりました。私の方でもこのアランという者のこと、1000年前の魔女のことを調べてみることにしましょう。』
ロメロは自分の部屋に戻り、先ほど預かった資料に目を通す。そして、あることを思い出すのだった。
(この似顔絵の少年…
成人の儀の時に私のところへ来た少年にそっくりだ。真面目そうな少年だったが、あの少年が半年で、そのように活躍していることは喜ばしいことだ。
たしか…ジョブは「遊び人」だったかな?
明日本格的に調べてみましょうか。)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
それは、突然の出来事だった。
俺がいつものようにハリーに勉強を教えていると、突然部屋に立派な鎧を纏った近衛兵の人たちが入ってきた。
彼らは俺の前に来ると、いきなり俺を押さえつけ、
『アランだな!?お前を、「国家転覆罪」の容疑で連行する。』
というのだ…
(国家転覆罪!?…俺がマリア王女を抱いたからか?
それでも国家転覆罪は大袈裟でないか?)
『何事ですか?この者が何をしたというのですか?』
ハリーが俺を庇って場を収めようとするが、
『ハリー王子、これはあなたの父上からの直々の御命令ですので、たとえ王子といえど話せません。御許し下さい。』
『父上の?何故父上がアランを??』
兵士たちは黙ったまま、俺の両脇前後を固め、どこかへ連れていかれる。
『ハリー、俺にも何がなんだかわからないけど、きっと何かの間違いだ!みんなに俺は何も悪いことはしていない。心配するなと伝えておいてくれ。』
『アラーン!!』
ハリーの泣き声混じりの叫びが遠くで聞こえてくる。
(一体何がどうなってるんだ…)
不安になりながらも、国家転覆罪と言われるようなことに繋がるような悪事を一切働いてないことは自負していたので、何とか心を保つことが出来た。
連れていかれたのは、王の謁見の間であった。
外で武器を外され、両手を後ろで縛られた状態で中に案内される。両端には、常に俺の動きを制する屈強な男に囲まれ、非常に居心地が悪い。
中で俺を待ち受けていたのは、現国王ヴェルサス・ルイ・クリスタリアと、アリスト教の教皇ロメロだった。
『で…調べはついたのか?このアランという近衛兵は一体何者なのだ?』
疑問を投げ掛けたのは、初老の法衣の男だ。
情報を集めることを生業にしている、もう1人の男が答える。
『今、話題になっているラトル教育村の村長の長男のようです。今年成人の儀を迎えたようですが、どのギルドにも所属してませんでした。
何のジョブを取得してるかは未だに不明です。
噂によれば、ハリー王子からは、親友と呼ばれるほどの間柄で、王子の勉強の全てを担っているようです。
マリア王女からは、自分の全てを捧げるとまでの求愛を受けているようです。
新しく王女になったエリス王女からの信も厚いようです。
この者が間に入ったことにより、この3人の王位継承権上位3名の争いが無くなり、逆に協力体制に入ったと言われております。
今話題のラトル教育村の教育方法、テキストの作成も全てこの者が1人で行ったとされております。また、王都学園学園長であるミグルス・ミドローアからも信頼され、学園の教育にも関わり、現在先頭に立って変革を行ってる模様です。
これだけの偉業と、人脈作りを、成人の儀からたった半年の現在までに行ったというわけです。』
『誰が、偉業の数々を調べて来いと依頼した?私は、この若者が、どのような特殊な方法でこれらの偉業や人脈を作ったのかを知りたいのだ。』
『分かっているのは、成人の儀の直後、初級者ダンジョンチューケイブの前にて、このアランの婚約者がナンパ男たちから絡まれているところを見事に退治したことをエリス王女が気に入り、この2人をパーティーに誘ったようです。これには多数の目撃者がおりました。
その後、エリス王女の紹介で近衛兵の就職試験を受けてます。この出会いは、おそらく偶然でしょう。
次に、エリス王女の直属となると思われますが、配属は、何故かハリー王子のところへなっておりました。
調べたところによると、配属の直前にハリー王子の陣営とエリス王女の陣営で秘密裏に会合が行われていたようです。
おそらく、この時に、何らかの理由で、アランのハリー陣営へ入ることが決まったものと考えられます。
最後に、マリア王女ですが、マリア王女とハリー王子は敵対しており、一度マリア王女の手の者に、アランとエリス王女の陣営に入ったアクティーというもの2名が拉致されたのでは?という目撃者がおりました。その後、この神殿に運ばれた模様ですが、そこから先のことは分かりません。
しかし、マリア王女に拉致された敵陣営の者を、仲良くどころか、愛してるとなると…
可能性と予測の範囲は出ませんが、魅了系の何らかのスキルを持っている可能性がありますな…』
『魅了スキルだと?そんなスキル、物語の中でしか存在しないのではないのか?』
『物語とは、一部事実が混じることもあります。しかし、あくまでも私の勘ですので、あまり鵜呑みになさらぬようお願い致します。
それと、ラトルの教育方法もテキストの内容も疑いようのないほど素晴らしい内容でした。歴史上稀にみる天才というのは間違いないかと。
就職試験の学科は120分のテストを35分で満点でした。疑いようがない天才ですな…』
『そうか、そこは本物だと言えるのだな?』
『そこは間違いないかと…』
「コンコンコン…」
扉が叩かれ、もう1人の人物が現れる。アランの成人の儀でお世話になった教皇ロメロだ。
『おや、珍しい人物がいますね?大事な話の最中でしょうか?出直した方がよろしいですかな?』
ロメロは優しい口調で問いかける。
『教皇ロメロよ…我々などにそのようなお気を使われる必要はございません。ただ、最近世間を騒がしている者について話していただけです。』
『世間を騒がす者ですか?どのような方でしょうか?
神殿に籠ってばかりで世間の変化についていけない老いぼれにご教授願えますか?』
『教皇…
そのような冗談はお辞め下さい。我々のような下々のものには肝が冷えますので…
世間を騒がす者ですが、この者です。』
ロメロに、似顔絵付きの資料が渡される。
『今年成人の儀を迎え、近衛兵になったものなのですが、名をアランと申します。
今話題になってる、ラトル教育村の教育方法からテキストの全てを1人で作り上げた天才です。
さらに、ハリー王子とマリア王女とエリス王女の王位継承権上位3名の仲を取り持った立役者とも言われております。
この者の憶測によると、もしかしたら魅了系のスキルを持つかもしれないとのことです。』
『魅了系のスキルですと?それは神を冒涜する力として、昔から悪魔の能力と言われてる筈です。
ジョブは神から与えられる能力であり、そのようなスキルを持つジョブは私は知り得ません。
憶測といえど、そのような考えは危険な思想といえるかもしれません。』
『もしかしたら、過去にそのようなジョブが存在していた歴史があるかもしれないとしてもでしょうか?』
ロメロが現れてから、今までずっと黙っていた情報屋が語りだす。
『約1000年前、この国ではとある魔女が3代にも渡って王家を完全に支配し、乱れた時代がありました。その魔女は、人を魅了するスキルを持つジョブを得ていたと言われております。』
『それは、物語の話ではないのですか?』
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私は、情報屋として、資料の信憑性などからおそらく真実の歴史だと考えております。』
『あなたがそこまで言うということは、それなりの文献から歴史を紐解いたのでしょうね…
分かりました。私の方でもこのアランという者のこと、1000年前の魔女のことを調べてみることにしましょう。』
ロメロは自分の部屋に戻り、先ほど預かった資料に目を通す。そして、あることを思い出すのだった。
(この似顔絵の少年…
成人の儀の時に私のところへ来た少年にそっくりだ。真面目そうな少年だったが、あの少年が半年で、そのように活躍していることは喜ばしいことだ。
たしか…ジョブは「遊び人」だったかな?
明日本格的に調べてみましょうか。)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
それは、突然の出来事だった。
俺がいつものようにハリーに勉強を教えていると、突然部屋に立派な鎧を纏った近衛兵の人たちが入ってきた。
彼らは俺の前に来ると、いきなり俺を押さえつけ、
『アランだな!?お前を、「国家転覆罪」の容疑で連行する。』
というのだ…
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『何事ですか?この者が何をしたというのですか?』
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『ハリー王子、これはあなたの父上からの直々の御命令ですので、たとえ王子といえど話せません。御許し下さい。』
『父上の?何故父上がアランを??』
兵士たちは黙ったまま、俺の両脇前後を固め、どこかへ連れていかれる。
『ハリー、俺にも何がなんだかわからないけど、きっと何かの間違いだ!みんなに俺は何も悪いことはしていない。心配するなと伝えておいてくれ。』
『アラーン!!』
ハリーの泣き声混じりの叫びが遠くで聞こえてくる。
(一体何がどうなってるんだ…)
不安になりながらも、国家転覆罪と言われるようなことに繋がるような悪事を一切働いてないことは自負していたので、何とか心を保つことが出来た。
連れていかれたのは、王の謁見の間であった。
外で武器を外され、両手を後ろで縛られた状態で中に案内される。両端には、常に俺の動きを制する屈強な男に囲まれ、非常に居心地が悪い。
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