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第15話 エリスの父

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時間は少し遡る。


アランが崖から落とされた直後のこと。

(…ん?急に気配が1人消えた?何かあったのか?)

イアンは普段から、起きてる時は常に気配感知で周りの様子を探る癖があった。そのお陰で、アランが崖から落ちたことを気付けたのだ。


イアンとクリスは実は今年が成人ではない。前の年に成人し、エリスの父の部下として雇われた者たちなのだ。

エリスの父がエリスの安全なレベル上げのために成人の儀の日、同期の2人と偽って2人をエリスに付けた。


イアンの気配感知と速射、クリスの棒術と回復魔法の組み合わせは、初心者ダンジョンでは通常過保護以外何物でもない。

今回はアランの運に引きよせられ、予想の3倍以上の襲撃があったために、逆にそれが目立たなくて済んでいたのだ。


クリスが走って夜営地に戻ってくる。
『みんな大変だ!!アランが崖から落ちた!!』

騒ぎで寝ていた皆は慌てて起き、クリスの元に集まる。

『クリス何があったのだ?』

『はっ!アランと一緒に奥に異常がないか、探索をしていたのですが、アランが崖に寄りすぎてしまったようで、目の前で崖から落ちていってしまいました。

余りに突然のことで、助けようにももう姿は見えず。泣く泣く戻ってきた次第です。』


『そんな!アランがそんなわけ…』
ビアンカは状況を受け入れられず、顔を真っ青に染めていた…


『すぐに現場に向かう!松明とロープを用意しろ!!』
素早いエリスの指示が飛ぶが、その顔はとても暗い…

全員で手分けしてすぐ準備は完了する。皆、言葉なくクリスの後に続く…


『ここからアランが落ちて行ったんだ!器用で料理が上手く、とてもいい奴だったのに…』

現場に到着するとクリスが悔しそうにそう呟いた…


エリスも呟く…
『本当に残念だ…クリス何を企んでいる?何故アランを殺さねばならなかったのだ!?』

エリスの横ではイアンがクリスに向けて弓を構えていた。

『な、何の事だ?何故俺が疑われてるんだ!?』

クリスは往生際悪く惚けている。


『答えは簡単…俺の気配感知だっ!

クリスお前の失態は、俺のジョブレベルの上昇を計算に入れてなかったことだ!このダンジョンでどれだけ戦ってきたか知ってるお前なら、俺たちですら多少は、レベルが上がってることも考慮すべきだった。

スキルがパワーアップすることもある。

以前の俺の気配感知の距離をおおよそ把握していたことで油断し、アランが崖から落ちた後、すぐこの場を離れた。しかも、のんびりとゆっくり歩いて…

お前が走り出したのは、以前の俺の気配感知の距離のちょっと手前だった。これでは自分が犯人だと言ってるようなもんだ!!』

『ちっ!糞どもがっ!!』
クリスがこちらに向かって来ようとしている。


イアンの放った2本の矢が容赦なくクリスの両足を貫き、前へ倒れ込む。

『動くな!今度動けば、口以外は動けないよう全身串刺しにしてやるからな。』

『痛ってーな!?だいたい余計な成長なんてしやがって…

人がせっかく考えた作戦を全部台無しにすんじゃねーよ!!』

クリスの口調の変わりように、皆目を丸くした。


これが本性なのだろう…


『何でよ!何でなのよ!?アランが何をしたっていうの?アランを返してよ!!』
ビアンカが叫ぶ。

『邪魔だったからに決まってんだろ!恨まれるような奴ではないことはお前が一番分かってんだろ?』

『邪魔って何がよ!明日で私とアランはサヨナラの予定だったのに何の邪魔になるっていうのよ!?』

『あいつの運だ!あれは本物だ…

万が一そこのバカにあいつが仕えられると厄介なんだ。昨夜もあいつの指摘でそこのバカが現実に目覚めちまったしな…』

『バカとは私のことか?昨日私たちが話してたのを聞いていたのか?それが、人1人殺す理由にはならんと思うが…』

『それが分からないくらいバカだから、バカって呼んでんだろうが…お前の父親が何者かさえ考えれば簡単な答えだろうが!!』

しばしの沈黙の後…エリスが答える。
『…跡継ぎ争い…のことか?それなら私には益々関係ない話だろう…そんなことのためにアランを。。』

『ちっ!どんだけおめでたいオツムしてやがる!?こんな奴に巻き込まれて死ぬことになったアランが可愛そうになってくるぜ!』

『ちょっと!自分が勝手にアランを殺そうとした癖に、なに人のせいにしてるのよ!!』

『このバカはな…

これでもこの【クリスタリア王国】の現国王【ヴェルサス・ルイ・クリスタリア】の娘、継承権第3位、第2王女【エリス・クリスタリア】なんだぞ!

関係無いわけあるか!』

『えー!?エリスさんが王女様?』

『成人の儀で【賢者】のジョブを引き、王自らの推薦で、突然王家の一員になったんだ!そんなやつが、他の候補者から注目されない訳がないだろう!?

愚かなこの女は昨夜までは勝手に王を恨んで王家と関わることを拒み、その状況を知ろうともしてなかった。

それをアランが変えちまったのさ!このバカだけなら何ら脅威にすらならんが、アランの運が加わると何が起きるか分からん…

だから排除した。』


『っで!?クリスお前は誰の差し金で動いている?ユリウス王子か、マリア王女辺りか?』
イアンが問い詰める。

『流石にそれを言うと思うか!?どんな拷問されても言わねーよ!!』


『ちっ!こんな時に…

嬢さんよ!この地域一帯が敵に囲まれつつあるぜ!!おそらく100匹は下らない数だ。。』
イアンの声に緊張が走る!

『なに!…そうか、アランがいなくなったから、夜営中にも敵襲が来るか。。仕方ない…迎え撃つぞ!!』

エリスの声がダンジョンに響いた!

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