家族で突然異世界転移!?パパは家族を守るのに必死です。

3匹の子猫

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第44話

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《それで親とはぐれてどれくらい経つんだ?》


俺の質問にノアが答えた。


《正確には分からないが、1年くらい前だったと思う。

…あの日、お父様とお母様と森で狩りの練習をしていたんだ。私は調子に乗ってお父様から言われていた範囲を遥かに越えて獲物を追っていった。


そして…偶然にもこの空間の入り口へ辿り着いてしまった。初めて見る不思議な光に吸い寄せられるように、この結界の中に入りこんでしまったのだ。

一度入りこむと、どう抵抗しようとも外に出ることは叶わなかった。


仕方ないから中にいた奴らを下僕とし、暮らしていたというわけだ。》



《そうか…じゃーこの空間の中には親御さんたちは入って来てないんだな?》


《それは分からない…この中は色々なことが特殊で気配が上手く感知できない。》


《ノアの親御さん探しも、やはりここを出ることが先決か…

俺たちは3年前エルフの族長に騙され、ここに閉じ込められた。この3年間で、この空間の大元となっているだろう位置は特定できたんだ。

しかし、そこには何もないんだ。地下に何かあるのかもと、範囲を広げて探っているが、洞窟の入り口や特殊な装置のようなものも何一つ見つけられない…正直手詰まりだ。》


《そんな場所を特定しているのか!明日私をそこに連れていけ!何か分かるやもしれん。》


《あー、期待してる。

俺たちはそろそろ寝るけどノアも一緒に寝るか?》


《ノアはひかりの隣なのー!》


《ノアはあかりのとなりー!》


《はいはい、じゃー2人の真ん中だな!》


《待て!何故私がお前の子供たちの間で寝なければならんのだ?》


《ノアは人気者だからさっ!子供たちはすぐに寝ると思うから、それまでだけでも付き合ってやってくれないか?》


《うまい食事のお礼だ!それくらいは言うことを聞いてやる!》


《良かったな2人とも!ノアが一緒に寝てくれるってさ!!》






《本当にすぐに寝たな…しかし、2人とも私にしっかりと掴まっていて動けんぞ!》


《へー、ひかりのテレパシーってひかりが寝ても会話できるんだな!本当に便利だな。

ノアが動きたいのなら、起こさないようにゆっくりと動いてやってくれ。》


ノアは言われたように、ゆっくりと体を起こした。


《ありがとう、ノア。》



 ひかりのテレパシーは、現在レベル5まで上げている。

レベル1では1対1でしか会話できなかったが、レベル2になるとパーティーを組んでいたら会話できるようになった。

レベル3になるとパーティーを組んでなくとも、ひかりが会話したいと思う相手と会話ができるようになった。

レベル4になるとひかりの見ている映像を共有できるようになった。

レベル5になるとその映像に音まで共有できるようになった。


情報伝達のないこの世界でこの能力は非常に役立っていた。原始時代の世界にスマホを持ち込んだようなものなのだ。


こんな世界では…特にこの森では少しでもはぐれると永遠に再会することが叶わない恐れが常につきまとう。

魔物と戦闘で多少離ればなれになっても、心配なく合流できるのもこのテレパシーのお陰なのだ!



 では、あかりのユニークスキルはどんなものだったかというと、【アイドル】という能力だった。

最初に聞いたときは正直???となってしまった。


能力の詳細を聞くと、自分を磨く努力をした時に能力が上昇しやすくなることと、みんなの応援を受ければ受けるほど本来の能力以上の力を発揮できるらしい。

目がくりっとして、アイドル顔をしてるとは思ってはいたが、まさか自分の娘がこんな能力を持つとは…将来はアイドルになってしまうのだろうか?


親としては正直普通の女の子として幸せになって欲しいものだが…ニュースなどでファンから握手会で襲われたニュースを見た記憶が頭をよぎったからだ。

まあ今のあかりならナイフを刺されても、銃で撃たれても全くダメージを負うことはないだろうが…


いや、ネットで陰険な誹謗中傷で自殺する有名人も多い。そんなことで自殺なんてされたら堪らない。

…うちの場合は、ひかりのテレパシーを利用すれば下手すると書き込みの犯人を特定するのも直接会話を強制するのも簡単なのかもしれない。


ならば…いいのか?まあ、将来の仕事は子供たちが決めることだ!結局親の俺たちはそれを支えてやるだけなんだよな!


 話は逸れたが、あかりの能力はこの世界ではそれほど役に立たない。応援をできる人間の数が家族に限られるからだ。

それでも、あかりは強くなった。

3歳からこんな戦闘ばかりの毎日を強要され、日本では絶対に見ることができない恐ろしい怪物たちと、命の取り合いを日常として成長してきたのだ。

下手をすれば俺よりも度胸があるかもしれない。



 ひかりもあかりも狙撃スキルもそこそこ高いが、今では武器を使う戦闘よりも魔法を使う戦闘を得意としている。

浩美も様々な補助魔法や阻害魔法を習得し、回復以外でも戦闘では必須の存在となっている。


俺はというと相変わらず、玩具メーカーで作成した銃で戦うことが多い。限界まで改造しているとはいえ、既に威力では子供たちの魔法に敵わなくなってしまった。

それでも状況に合わせて作った銃を使い分けることで、討伐数は俺がダントツで多い。




 翌朝俺たちは、早速この空間の中心地に向かった。
そこはやはり古い遺跡の痕跡が残るだけで、他には何も見当たらなかった。


《ノア、何か感じるか?》


《ここに来れば何かあるかと思っていたが、私にも何かの力を感じるが…それが何なのかが分からない。》


《そうか…残念だが仕方ないさ!また周りを探索してみることにしよう。》



「パパッ!!何かすごいのが近づいてくる!!!」


ひかりが慌てた声で叫んだ。


この中心地にいると比較的広範囲の気配を探ることができるのだ。



「本当だ!何だこのものすごい気配は!?」


浩美もあかりもようやく気配を捉えたようで、驚いた顔をしている。



こんな気配をこれまで感じたことないぞ!!これは…遭遇したら不味い存在だ!!!



「みんなこれはヤバい…すぐに逃げるぞ!!!」


「「「うん!」」」



俺たちが慌ててその地を離れようとするが、ノアがついてきていない。


《ノア!早くこの場を離れるんだ!!とんでもない化け物が近づいてきてる!》


聞こえてる筈なのだが、ノアが反応しない…



《おい!ノア!一体どうしたんだ!?》


するとノアはその近づいて来る気配の方に向かって、大きな遠吠えを吠え出した。


「アオーーーン!!!」



これは…一体どうすりゃいいんだ?

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