家族で突然異世界転移!?パパは家族を守るのに必死です。

3匹の子猫

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第38話

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「一体何が起きたんだ?」


「分からないや!でもどうにかなったね!!」


今の現象を起こしただろう、俺とムー自身が、何が何やら分かっていない状況だった。


「そうだな!ムー、家族のピンチを救ってくれてありがとう!!」


「僕の家族でもあるんだよね?頑張るのは当たり前だよ!」


「そうだよな!ムーも勿論うちの子だ!!

でもね、たとえ家族でも感謝したいときは、ちゃんと言葉で伝えるべきだと思うよ!だからちゃんと言葉で言わせてくれ、ありがとう!」



「今のムーちゃんがしたの?ありがとう!!本当に助かったわ。」


「浩美たちが大好きだから頑張れたんだよ!」


「ムーちゃん、かわいいこと言ってくれるわね!私もムーちゃんのこと大好きよ!!」


「ひかりもー!」

「あかりもー!」


「僕も2人のことも大好きだよ!」


戦闘中にも関わらず、ほのぼのとしてるのはうちの家族のいいとこでもあり、悪いところでもあるだろう。


先程のムーとの光で、あの大量の水だけでなく、吹き荒れていた風も止み、凍っていた大地までも元の通り戻っていた。



 ここでふと気づいたが、ユウナさんの様子がおかしい。暗い顔をして、何かをぶつぶつと呟いていた。


「ユウナさん、どうした?怪我でもしたのか?」


「あっ!いえ、何でもありません。」


そこで俺もようやく理解した。先程の攻撃は俺を崖から落とす為に、ここにいる皆を…実の娘であるユウナさんをも利用して放った攻撃だったのだ。

もしあのまま水に流されていたら、今頃ここにいる者の大半が崖の下へまっ逆さまだったに違いない。

それをユウナさんも理解しているからこそ、この様子なのだろう。


俺は掛ける言葉を必死に考えたが、何も出てこなかった…


アイルは、人間への恐怖心と、過去の過ちへの強烈な罪悪感から、本来一番大事にしないといけないことを完全に見失っている。

それは掟や人間の排除ではなく、娘であるユウナさんの幸せだ!


その大事な娘の命をも、自らの手で簡単に消そうとしている今のアイルは、病的としか言いようがない。同じ娘を持つ親としては、何とか正してやりたいところだが、問題の根が深すぎる。



 そんなことを考えていると、アイルたちが動き出した。
どうやらゆっくりと此方へ向かってきているようだ。

もしかすると、水や氷が消えたことに気づいてないのかもしれない…本当に俺たちを飲み込む直前だったし、大きな岩が邪魔をして、様子を把握しきれていない可能性が高い。

俺たちがここでダラダラしていたことで、崖下に流されたととられてるのかもしれない。


これはある意味チャンスなのかもしれない。


俺は皆を誘導し、アイルたちに見つからないよう崖から遠ざけた。そして、再び俺だけ崖へ戻ろうとしたのだが、ムーから呼び止められた。


「トモヤ、僕も一緒に戦うよ。まだどうすればいいかよく分からないけど、きっと今なら役に立てると思うんだ!」


俺は考えた末に、その申し出を断ることにした。


「ムーの気持ちは嬉しい!でもムーが危険に晒されるのは避けたいんだ。まださっきの力のこともよく分かってないし、この戦いは俺に任せて欲しい。」


「僕は大丈夫だよ!トモヤの中に入るからね。」


「俺の中に!?」


「トモヤは、精霊使いたちの周りに精霊の姿がなかったことに気づかなかったのかい?あれは、精霊と精霊使いが一体化してたからさ!」


「そういえば、一度も他の精霊の姿を見てなかったな!なるほど…色々と納得したよ!でも、一体化した状態で俺がダメージを受ければ、ムーもダメージを負うんじゃないのか?」


「一体化の最中のダメージは本人だけのものだね。精霊にはダメージはないよ。

でも精霊は、契約している精霊使いが死んだら、一度世界樹の木の元に還るんだ。それから世界樹の木の中で、魂を再構築されてから、再び産み出されるんだ。

多分だけど、精霊使いとの魂の結び付きによる影響を無くしておかないと、次に他の人と契約を結ぶ際に悪い影響が出るんじゃないかな?」



「なるほどな…その一体化というのはどうするんだ?」


「トモヤは何もする必要はないよ。僕が勝手にトモヤの中に入り込むだけだから…話してても分かりづらいだろうし、一度やってみよう!」


そう言うと、ムーは俺の胸の中に消えていった。



〈どう?何の違和感もないでしょ?〉


「今のはムーか?何か頭の中に声が聞こえてきたぞ!」


〈そうだよ。一体化してる間は心の中で考えるだけで、会話ができるからいつでも声を掛けてよ!〉


〈これでいいのか…?ムー聞こえてるのか?〉


〈そうだよ!上手だよ!!これで会話も問題なさそうだね!〉


〈ひかりのユニークスキルのテレパシーも同じような感じだからな…これなら戦闘中にも問題なく使えそうだ!〉


〈それならよかった。

さっき何らかの能力を発動したから、トモヤのステータスに魔法が追加されてないかと確認したんだけど、やっぱり何も変化ないんだよね…〉


〈うーん…もう少し、能力のことも調べたかったが、もうそろそろ移動しないとアイルたちがさっきの崖に到着しそうだ!〉



俺は気配を絶ちながら、先程の崖の手前まで急ぎ戻った。




.....
....
...
..






「族長の作戦通り、奴らは全員崖の下に落ちたに決まってますよ!」


「ハルフ、まだ油断は禁物だ!奴は恐ろしく強い…お前の全力の風の刃を首に受けても、死ななかったんだ。いつでも反撃できるよう気を張っておくんだ!!」


ハルフと呼ばれた幼い顔立ちのおさげ娘は、「ウッ」と唸った。
だが、隣にいたきれいな水色の髪を持つ美少女ミールがハルフを擁護した。


「あの時のハルフの攻撃は完璧でした。それに死んでいった他の皆の攻撃も…

あの連続する強力な魔法をまともに受けたにも関わらず、耐えられるあの男が異常なのです!


もし先程の作戦で倒しきれてなければ、我々3人に勝ち目はないのではないでしょうか?」


「ミールの言う通りかもしれない。何とか倒せていると信じよう。もし万が一にも生きていた場合、お前たちは逃げることだけに全力を注ぐんだ!!」


「族長はどうされるのですか?」


「私は刺し違えてでも、奴を倒してみせる!奴が存在する限り、エフロディーテに真の平和が戻ることはないからね…」


「それはなりません!族長はこれからのエフロディーテにも必要な存在です!!それならば我々が、その役目を果たすべきです!」


「これからのエフロディーテには、私みたいな年をとった者よりも、2人のような若者が力を振るっていくべきなのだ!」


「そんな!!族長の代わりになるような者、エフロディーテにはおりません!」


「まあそんなに熱くなるな!あくまでも万が一の話だ。あれだけの状況に追い込まれて、家族を守りながら助かる方法など、私にも難しいからね。」


「それでは家族を見捨てて、自分だけ助かろうとしたならば、方法はあるのですか?」


「私には氷の魔法があるからね。自分だけなら、水の流れを邪魔しないよう自分を囲んでしまえば、水に流されることはないだろう。

奴の戦い方に魔法の要素は見受けなかった。強靭な肉体のみで、あの状況を打破するのは難しいだろう。」


「そうですよね!やっぱりもう死んでますよ!!

でも今さらながら、ユウナ様のこと…本当に良かったのですか?」


「あー、仕方のない犠牲だったのだ…それに、ユウナは愚かにも掟を破り、精霊様の試練の対象となっていたのだ。

いくら私が父親とはいえ、ここでユウナを許せば、掟は掟としての意味を失う!それだけは絶対に避けねばならぬのだ!


またあのような悲劇を繰り返さない為にも…」


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