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七十八発目 暗闇の狩人
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私とシュヴェーアトは洞窟の奥へと進んでいく。私は右手に魔法杖を持ち左手を前方にかざし照光魔法で眼前を照らしながら進む。その後ろを赤い甲冑に身を包み長剣を腰元に帯刀したシュヴェーアトが続く。今のところ魔物の気配は無いが用心に越したことはない。この洞窟はいくつもの通り道が分岐し地下に向かって蟻の巣穴のように広がっている。
「シュヴェーアト、何か気配は感じない?」
「今のところは何もだな。マギー」
振り返るとシュヴェーアトはいつでも剣を抜けるよう腰元の剣の柄に片手を置いている。
「ひっ・・・!」
しばらく洞窟を進んだところでシュヴェーアトの声が響き何かが転がる音がする。音の方向に光り輝く左手を照らすとそれは人間の白骨化した頭蓋骨だった。シュヴェーアトが歩み寄り長剣を抜いて剣先を頭蓋骨の口の中に差し入れ引っかけるとそのまま宙に持ち上げてみせる。頭蓋骨を照らしてよく観察してみるとその額部分に何か鋭いものが貫通したような穴が見られる。
「これは・・・一体・・・?」
シュヴェーアトは眉をひそめながら言う。おそらくこの洞窟に探検に入った冒険者のものだろう。あの呑み助の男の言う事は単なる酔いどれの戯言ではなかったというわけだ。
それからも私とシュヴェーアトは洞窟の奥へと歩を進め続けた。深部にだんだんと近づいている感はあるが未だ地底で咲く光輝く花とやらにはお目にかかれてはいない。しばらく進むとシュヴェーアトが私の肩をぐっと掴む。
「待て、マギー。何かが近づいてくる」
振り返ると私の肩を掴みながらシュヴェーアトは背後を向いて警戒している。この洞窟は蟻の巣穴のように幾筋にも分岐している。そこを何者かが駆け巡り私たちの方に急接近している。
「シュヴェーアト、どうする?逃げる?」
「いや、背中を向けて逃げているところを後ろから襲われるかもしれない。ここで迎え撃つ!」
シュヴェーアトは長剣を鞘から抜いて戦闘態勢に入る。確かに逃げ場はなさそうだ。緊急時は転送魔法で外に脱出することは考えていたがまだ引き下がるわけはいかない。また洞窟内で適当に転送魔法を使えばとんでもないところに迷い込む危険性もある。シュヴェーアトの言う通りここで迎え撃つしか無い。
「来た・・・!」
シュヴェーアトが叫ぶ。洞窟の向こうから高速でこちら側に接近してくる存在は明らかに人外と見て間違いない。
「シュヴェーアト下がって!」
私はシュヴェーアトを押しのけると闇のなかから向かってくる相手に向けて左手をかざして火炎魔法を派手にぶっ放す。私の左手からドラゴンのごとく炎の波が相手に向かって放たれ洞窟内が一気に明るくなり異形がその姿を露わにする。
その身体は明らかに人間よりふた回り大きく鉛のような黒い表皮に覆われていた。その魔物には前腕が二本も備わっており三本の鉤爪がついた前腕のその上部には先端が黒い槍状と化した前腕がそれぞれ左右に備わっていた。これで先ほどの冒険者の頭蓋骨を貫いたというわけか。さらに長く発達した両脚を見てその俊足がどこから発生するのかを理解する。さらに目を引くのはその頭部である。それはさしずめ耳も目も無い馬といったところか。
黒く滑っとした表皮に覆われており顔が無いのが不気味さを際立たせる。私の火炎魔法を食らってその黒い頭部の中心がかぱっと開き長く赤黒い舌を露出させ耳に不愉快な高音質の咆哮を上げる。おそらくこいつはずっと暗闇の中に生息していて視覚に頼らずも気配だけで獲物の位置を察知しその槍状の前腕に鉤爪のついた前腕で息の根を止めて来たのだろう。
私たちふたりはその犠牲者リストに名を書き連ねようとしている。少なくともこのまま手をこまねいてるうちはだ。だがそうさせはしない。私はシュヴェーアトの身体を掴み転送魔法で化物の上空に飛ばす。シュヴェーアトは持ち前の反射神経で即座に反応し魔物の右側の槍状の前腕を長剣で切り落としそのまま着地し剣を横文字に振りさらに魔物の右側の脚を切断する。切断面から黒い血潮がほとばしるのが見える。魔物は瞬時に右側の鉤爪のついた前腕を地面について身体を支える。器用な奴だ。
「キッエエエエエエエエエエッ!!!!」
魔物は咆哮を上げて咄嗟に左側の鉤爪のついた前腕でシュヴェーアトを弾き飛ばす。
「うっ!!!!」
シュヴェーアトは吹っ飛ばされそのまま洞窟の壁に叩きつけられる。
「化物!!こっちよ!!」
私は再度、火炎魔法を思いっきり魔物にぶつける。頑丈な奴だ。炎に包まれながらも叫び声を上げながら倒れようとはしない。力を振り絞り残った槍状の前腕を私に伸ばしその尖った先端が私の腹部を貫く。壁際で倒れていたシュヴェーアトが叫ぶ。
「マギィィィィィィィィィィィィ!!!!!!!」
「シュヴェーアト、何か気配は感じない?」
「今のところは何もだな。マギー」
振り返るとシュヴェーアトはいつでも剣を抜けるよう腰元の剣の柄に片手を置いている。
「ひっ・・・!」
しばらく洞窟を進んだところでシュヴェーアトの声が響き何かが転がる音がする。音の方向に光り輝く左手を照らすとそれは人間の白骨化した頭蓋骨だった。シュヴェーアトが歩み寄り長剣を抜いて剣先を頭蓋骨の口の中に差し入れ引っかけるとそのまま宙に持ち上げてみせる。頭蓋骨を照らしてよく観察してみるとその額部分に何か鋭いものが貫通したような穴が見られる。
「これは・・・一体・・・?」
シュヴェーアトは眉をひそめながら言う。おそらくこの洞窟に探検に入った冒険者のものだろう。あの呑み助の男の言う事は単なる酔いどれの戯言ではなかったというわけだ。
それからも私とシュヴェーアトは洞窟の奥へと歩を進め続けた。深部にだんだんと近づいている感はあるが未だ地底で咲く光輝く花とやらにはお目にかかれてはいない。しばらく進むとシュヴェーアトが私の肩をぐっと掴む。
「待て、マギー。何かが近づいてくる」
振り返ると私の肩を掴みながらシュヴェーアトは背後を向いて警戒している。この洞窟は蟻の巣穴のように幾筋にも分岐している。そこを何者かが駆け巡り私たちの方に急接近している。
「シュヴェーアト、どうする?逃げる?」
「いや、背中を向けて逃げているところを後ろから襲われるかもしれない。ここで迎え撃つ!」
シュヴェーアトは長剣を鞘から抜いて戦闘態勢に入る。確かに逃げ場はなさそうだ。緊急時は転送魔法で外に脱出することは考えていたがまだ引き下がるわけはいかない。また洞窟内で適当に転送魔法を使えばとんでもないところに迷い込む危険性もある。シュヴェーアトの言う通りここで迎え撃つしか無い。
「来た・・・!」
シュヴェーアトが叫ぶ。洞窟の向こうから高速でこちら側に接近してくる存在は明らかに人外と見て間違いない。
「シュヴェーアト下がって!」
私はシュヴェーアトを押しのけると闇のなかから向かってくる相手に向けて左手をかざして火炎魔法を派手にぶっ放す。私の左手からドラゴンのごとく炎の波が相手に向かって放たれ洞窟内が一気に明るくなり異形がその姿を露わにする。
その身体は明らかに人間よりふた回り大きく鉛のような黒い表皮に覆われていた。その魔物には前腕が二本も備わっており三本の鉤爪がついた前腕のその上部には先端が黒い槍状と化した前腕がそれぞれ左右に備わっていた。これで先ほどの冒険者の頭蓋骨を貫いたというわけか。さらに長く発達した両脚を見てその俊足がどこから発生するのかを理解する。さらに目を引くのはその頭部である。それはさしずめ耳も目も無い馬といったところか。
黒く滑っとした表皮に覆われており顔が無いのが不気味さを際立たせる。私の火炎魔法を食らってその黒い頭部の中心がかぱっと開き長く赤黒い舌を露出させ耳に不愉快な高音質の咆哮を上げる。おそらくこいつはずっと暗闇の中に生息していて視覚に頼らずも気配だけで獲物の位置を察知しその槍状の前腕に鉤爪のついた前腕で息の根を止めて来たのだろう。
私たちふたりはその犠牲者リストに名を書き連ねようとしている。少なくともこのまま手をこまねいてるうちはだ。だがそうさせはしない。私はシュヴェーアトの身体を掴み転送魔法で化物の上空に飛ばす。シュヴェーアトは持ち前の反射神経で即座に反応し魔物の右側の槍状の前腕を長剣で切り落としそのまま着地し剣を横文字に振りさらに魔物の右側の脚を切断する。切断面から黒い血潮がほとばしるのが見える。魔物は瞬時に右側の鉤爪のついた前腕を地面について身体を支える。器用な奴だ。
「キッエエエエエエエエエエッ!!!!」
魔物は咆哮を上げて咄嗟に左側の鉤爪のついた前腕でシュヴェーアトを弾き飛ばす。
「うっ!!!!」
シュヴェーアトは吹っ飛ばされそのまま洞窟の壁に叩きつけられる。
「化物!!こっちよ!!」
私は再度、火炎魔法を思いっきり魔物にぶつける。頑丈な奴だ。炎に包まれながらも叫び声を上げながら倒れようとはしない。力を振り絞り残った槍状の前腕を私に伸ばしその尖った先端が私の腹部を貫く。壁際で倒れていたシュヴェーアトが叫ぶ。
「マギィィィィィィィィィィィィ!!!!!!!」
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