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四十八発目 哀願する淫魔
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「おい!待て!男という男を連れてこい!わらわが全員満足させてやるぞい!」
リリスは地下牢から連れ出され今こうして王室騎士団の支部の芝生の上で兵士数人に取り押さえられている。その首元には俺の握る聖剣が当てられており淫魔の力は封じられている。
「潔ぎが悪いぞ!この淫魔!」
俺の背後に控えるリッターが叫ぶ。俺の肩越しに唾がいくつか飛んでいくのが見える。
「捕えて捕虜として情報を散々聞き出して用済みになったら首チョンパか!人間というやつは血も涙も無いのう!」
数人の兵士達にその小さな身体を抑えつけられながらリリスは何とか顔を上に向けて青筋を立てて抗議する。しかしこいつをどうやって捕えたんだ?
「さあ!シュヴァンツ様!その淫魔の首をお刎ねください!」
リッターは叫ぶ。リリスの首の上には聖剣の刃が白く眩い光を放っている。
「さあ!シュヴァンツ様!早く首を!」
「待てい!嫌じゃあ!首を刎ねられるのは嫌じゃあ!」
リリスは抑えられながら大粒の涙を流し悪戯が見つかりお仕置きを受ける子供のように哀願する。そしてその容姿はあどけない少女にしか見えないのが実に困ったものだ。
「シュヴァンツぅ~!やめてくれ~!嫌じゃあ!」
リリス先ほどの威勢とは打って変わって駄々っ子のように泣きじゃくっている。
「参ったなあ・・・」
「さあ!シュヴァンツ様!早く!」
俺は聖剣を構えながら空を眺める。ふと考え込んだのちに自らの口から出た言葉は自分でも意外なものだった。
「あ~、ウチ来る?」
「ふぇっ?」
「シュヴァンツ様。よろしいのでしょうか?そいつは魔族ですよ」
リッターは納得がいかない表情である。
「まあ、こいつは仮に野に放ったところで男を誘惑して精を吸い取るくらいしかしませんので。害はないでしょう」
「それはそうですが・・・」
リリスはというと迷子になり彷徨った挙句の果てにやっと親を見つけた児童のように俺の腕にすがりついて離れない。その巻き角が伸びた頭をそっと撫でる。
「まあ、うちでちゃんと面倒見ますから」
帰路。来る時にはひとりしか乗っていなかった馬の背には俺とリリスが乗っている。リリスは馬を操る俺の背にしがみついている。
「わらわを連れて帰ってどうするつもりじゃ」
「そうだなあ。うちに嫁に来るかあ?」
「魔族であるわらわが人間風情に嫁ぐだと?冗談もほどほどに・・・おい、どこに向かってるのじゃ?」
馬の向きを反転させ来た道を戻る。
「それじゃあリッターに可愛がってもらうんだな」
「おい!待て!待て!わかった!特別に嫁に行ってやる!だから待て!シュヴァンツ!」
「わかればよろしい」
俺たちふたりは馬に揺られながら我が家へと向かう。
俺とリリスを玄関先にて出迎えたアリサはリリスを見て眉間に皺を寄せ目を細めている。視線の先にはあるのはリリスの頭にある巻き角だろう。気がつけばバタン!と玄関のドアが閉まり俺とリリスは締め出されていた。
「どうなってるんじゃ?シュヴァンツ。ここの主はお前ではないのか?」
リリスはぽかんと俺にたずねる。それは確かにその通りだ。
「おい!開けろ!アリサ!俺はここの主だぞ!」
俺はドアを叩きながら叫ぶ。ドアはもはやドアでなく壁と化している。そうしているとドアが微かにアリサが隙間から顔を覗かせる。
「魔族じゃないですか・・・」
「そうだ、今度からうちに嫁ぐことになるリリスだ!」
「・・・・・・」
アリサの顔から血の気が引いていく。またしてもバタン!とドアは閉められ壁と化す。
「どうなっているんじゃ。シュヴァンツ。愛想の悪いメイドやのう」
「参ったぜ。怒ってやがる」
俺とリリスは途方に暮れるがふと妙案を思いつく。
「おい、リリス。俺に掴まってくれ」
「こうか」
そう言ってリリスは俺の身体にしがみつく。
「そうだ。手を離すなよ」
うまく行くかわからないが試してみる価値はある。俺は目を閉じ意識を集中させた。
リリスは地下牢から連れ出され今こうして王室騎士団の支部の芝生の上で兵士数人に取り押さえられている。その首元には俺の握る聖剣が当てられており淫魔の力は封じられている。
「潔ぎが悪いぞ!この淫魔!」
俺の背後に控えるリッターが叫ぶ。俺の肩越しに唾がいくつか飛んでいくのが見える。
「捕えて捕虜として情報を散々聞き出して用済みになったら首チョンパか!人間というやつは血も涙も無いのう!」
数人の兵士達にその小さな身体を抑えつけられながらリリスは何とか顔を上に向けて青筋を立てて抗議する。しかしこいつをどうやって捕えたんだ?
「さあ!シュヴァンツ様!その淫魔の首をお刎ねください!」
リッターは叫ぶ。リリスの首の上には聖剣の刃が白く眩い光を放っている。
「さあ!シュヴァンツ様!早く首を!」
「待てい!嫌じゃあ!首を刎ねられるのは嫌じゃあ!」
リリスは抑えられながら大粒の涙を流し悪戯が見つかりお仕置きを受ける子供のように哀願する。そしてその容姿はあどけない少女にしか見えないのが実に困ったものだ。
「シュヴァンツぅ~!やめてくれ~!嫌じゃあ!」
リリス先ほどの威勢とは打って変わって駄々っ子のように泣きじゃくっている。
「参ったなあ・・・」
「さあ!シュヴァンツ様!早く!」
俺は聖剣を構えながら空を眺める。ふと考え込んだのちに自らの口から出た言葉は自分でも意外なものだった。
「あ~、ウチ来る?」
「ふぇっ?」
「シュヴァンツ様。よろしいのでしょうか?そいつは魔族ですよ」
リッターは納得がいかない表情である。
「まあ、こいつは仮に野に放ったところで男を誘惑して精を吸い取るくらいしかしませんので。害はないでしょう」
「それはそうですが・・・」
リリスはというと迷子になり彷徨った挙句の果てにやっと親を見つけた児童のように俺の腕にすがりついて離れない。その巻き角が伸びた頭をそっと撫でる。
「まあ、うちでちゃんと面倒見ますから」
帰路。来る時にはひとりしか乗っていなかった馬の背には俺とリリスが乗っている。リリスは馬を操る俺の背にしがみついている。
「わらわを連れて帰ってどうするつもりじゃ」
「そうだなあ。うちに嫁に来るかあ?」
「魔族であるわらわが人間風情に嫁ぐだと?冗談もほどほどに・・・おい、どこに向かってるのじゃ?」
馬の向きを反転させ来た道を戻る。
「それじゃあリッターに可愛がってもらうんだな」
「おい!待て!待て!わかった!特別に嫁に行ってやる!だから待て!シュヴァンツ!」
「わかればよろしい」
俺たちふたりは馬に揺られながら我が家へと向かう。
俺とリリスを玄関先にて出迎えたアリサはリリスを見て眉間に皺を寄せ目を細めている。視線の先にはあるのはリリスの頭にある巻き角だろう。気がつけばバタン!と玄関のドアが閉まり俺とリリスは締め出されていた。
「どうなってるんじゃ?シュヴァンツ。ここの主はお前ではないのか?」
リリスはぽかんと俺にたずねる。それは確かにその通りだ。
「おい!開けろ!アリサ!俺はここの主だぞ!」
俺はドアを叩きながら叫ぶ。ドアはもはやドアでなく壁と化している。そうしているとドアが微かにアリサが隙間から顔を覗かせる。
「魔族じゃないですか・・・」
「そうだ、今度からうちに嫁ぐことになるリリスだ!」
「・・・・・・」
アリサの顔から血の気が引いていく。またしてもバタン!とドアは閉められ壁と化す。
「どうなっているんじゃ。シュヴァンツ。愛想の悪いメイドやのう」
「参ったぜ。怒ってやがる」
俺とリリスは途方に暮れるがふと妙案を思いつく。
「おい、リリス。俺に掴まってくれ」
「こうか」
そう言ってリリスは俺の身体にしがみつく。
「そうだ。手を離すなよ」
うまく行くかわからないが試してみる価値はある。俺は目を閉じ意識を集中させた。
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