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四十七発目 地下牢の魔物

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「ご足労いただきまことに感謝します。勇者シュヴァンツ様」

 俺の目の前には若い騎士の男が立っている。その鮮やかな金髪に白い制服がよく似合っている。腰元には鞘に収まった剣が見える。   

「私は王立騎士団のリッターと申します。どうも初めまして」

 そう言ってリッターは握手を求めてくる。その手は品の良い白手袋がはめられている。リッターは非礼と思ったのか白手袋を外す。その手を握り握手に応じる。こちとら孤児院育ちで柄が悪いものでこういった儀礼的なのはこそばゆいものを感じてしまう。ここは王立騎士団の支部。俺たちの向こうでは騎士の卵たちが青空の下、芝生の上で訓練に励んでいる。

「例の者ですが地下牢に幽閉しております。是非とも勇者様のお力添えをお願いしたい」

 地下牢へ続く階段を降りるリッターの後ろをついて歩く。階段を降りると通路が奥まで続いており左右の燭台が石造りの殺風景な道を照らしている。通路をある程度進むとリッターはいったん立ち止まり言う。

「シュヴァンツ様、申し訳ございませんがここから聖剣を抜いてかざしながら先頭を歩いてもらえますでしょうか。奴の妖気を聖剣の力で防ぎながら進まねば」

「ああ、わかった」

 俺は聖剣を抜いて前にかざしながら先頭を歩く。その後ろをリッターとその配下が数名並んで歩く。この向こうにいると聞くのは魔族。どんな化物が待ち構えているのか。唾をごくりと飲みながら進む。その後ろをリッターと配下たちが付いてくる。みんな、無言である。

 壁に燭台の灯りに照らされた歩く俺たちの影法師ゆらゆらと映っている。我々が歩みを進めるたびに影法師も共に動く。前にかざした聖剣の刃には燭台の灯に照らされた俺の顔が反射されている。その顔には緊張の色が見える。さらに角度を変えると俺の後ろにいるリッターの顔も反射して見える。その顔は出会った時の爽やかな愛想の良さとは打って変わり強張っている。

「この向こうです。シュヴァンツ様」

「ああ」

 微かに男の呻き声が聞こえる。この先で拷問でも行われているのだろうか。鼻をつくこの生臭い匂い。これは一体、何だろうか。よく嗅いだことのある匂いにも思える。

「ん、んおぅ・・・」

 通路の行き止まりに行き当たる。その右側に牢屋がある。男の声が鉄格子の向こうから聞こえてくる。

「シュヴァンツ様、警戒を怠らないでください」

 背後からリッターが小声で警戒を促す。俺は聖剣をかざしながら牢屋の中に目を凝らす。男の声は鉄格子の向こうから聞こえてくる。暗くて見えない。何が起こってる?誰か食われでもしてるのか。

 聖剣を右手で構えながら左手で火炎魔法により小さな火球を作る。こんな小さなものでもこの狭い地下牢を照らすには十分だろう。牢の中が季節が変わったようにぱあっと明るくなる。

 急に明るくなり目がびっくり気味だが次第に慣れてくる。中にはひとりの男がいる。格好からしてここの兵のようだがその頭には兜、その胴には甲冑を着込んでいる。だが、下半身はというとおおよそ兵としては似つかわしくない格好だ。何せズボンを下ろして剥き出しなのだから。

 兵の男はその剥き出しの尻をわなわなと震わせながらおおおおぉと声を漏らしている。拷問でもされているのかと思ったが違う。その兵の股間にひとりのあどけない少女に見える姿があった。その少女のような存在はうっとりしながら兵の男の肉棒をしっかりくわえ込んで口淫を続けている。

「んがぁ・・・」

 兵の男は股間をさっきから攻められて続けているようでもはや決壊寸前といったところである。牢全体に濃厚な雄の匂いが充満している。さっきここに向かう途中に嗅いだ匂いはこれだったのか。

「こいつ、また看守の兵をたらし込んで連れ込みおって・・・!」

 リッターが忌々しげに嘆く。

「騒がしいのう。こんな大所帯で来おって。何の用じゃ」

 少女のような姿のものは兵の男のモノから口を離しだるそうに悪態をつく。そのあどけない姿を見て思わず呟く。

「こいつが魔族・・・?」
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