上 下
13 / 82

十三発目 勇者に勝利するシュヴェーアト

しおりを挟む
 剣同士がぶつかり合う音が響きシュヴェーアトの長剣が空高く舞い上がる。その剣の側面は太陽の光を受けまばゆい光を放ちながら空中をくるくると回転し続け我が家の緑が茂る庭園に落ちそのまま突き刺さる。

「くっ!私の負けだ!殺せ!」

 シュヴェーアトは我が家の庭園に膝を突き地面を拳骨で叩く。

「殺さないって・・・大げさなやつだな」

 シュヴェーアトは実は俺のパーティー候補だったが当時はまだ未熟で代わりに戦士のクリーガーが参入することになったのだが彼女からすると勇者の仲間に入れてもらえなかったことは大変な屈辱だったらしく雪辱のため特訓を重ねてきたらしい。

 確かに手合わせしてみると腕の上達を実感することが出来た。剣を振り下ろす力強さ、俊敏さは以前と比べて段違いである。しかし、女は斬るものでなく抱くものだ。俺との勝負を申し出るシュヴェーアトには木剣での勝負を申し出たが真剣での勝負にこだわり言って聞かない。

 仕方なく承諾するもその小麦色の柔肌に傷はつけたくない。彼女を傷つけないようにその長剣を天高く跳ね飛ばす。これも元勇者のジジイのもとで修行をさせられ事あるごとに杖で頭を叩かれ剣技を嫌と言うほど叩き込まれた成果だ。あの地獄のような日々は二度と思い出したくもないが。

「例の看板を見て来たんだ・・・」

 ああ、あの花嫁募集の看板か。まだ出しっぱなしだがまあ、いいか。

「お前、この私を嫁に貰わないか」

「え?」

「剣の腕で敵わないなら女の魅力でお前を屈服させたい!」
  
「主旨変わってない?」

「あー、この娘アレだわ。脳筋つーか。アホの子だわ」

 いつの間にか起きてきたエルフィが俺の耳元でささやく。

「どうすんのよ」

「どうするって・・・」

「どうしてあの双子といいあんたが引っ掛ける娘はアホの子しかいないのよ」

「そう言うなって・・・」

「おい!女一匹が全身全霊かけて求婚してるんだ!どうするんだ!シュヴァンツ!」

「もう嫁は三人いるしな。ちっとばかし考えさせてくれ」

 アインスとエレンの双子の姉妹だけで我が家はてんやわんやだ。そこにシュヴェーアトまで加わるとなるとさらに一家騒然なことになるのは火を見るより明らかだ。

「どうしても我が願い聞き届けられぬというなら・・・」

 シュヴェーアトはふらふらと地面に突き刺さったおのれの長剣を引き抜くと両膝をつき剣の刃を自らの首すじに当てる。

「我が命を断つ!」

「おい!ちょっと待てっ!」

「もうしょうがないから嫁に貰ってあげて面倒見たら?」

 俺の耳元でエルフィは呆れ気味に言う。  

「わかった!嫁に来い!だから剣を下ろせ!」 

「貰ってくれるのか?この私を?」

「ああ、俺の負けだよ」

「負け?」

 フフフとシュヴェーアトはうつむきながら笑い出す。そして両腕を高らかに中に向けて突き上げると叫ぶ。

「勝ったあ!勇者に勝ったあ!」

「何を持って勝ち負けなのかお前の基準がさっぱりわからないが俺の負けで良いよ・・・」

「あー、やっぱりこの娘アホの子だわー」 

 エルフィが呆れ気味につぶやく。気付くと背後ではメイドのアリサが両手を前で組んで黙って立っておりこちらを凍てつくような視線で睨んでいる。我が家もまた一層騒がしくなりそうである。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?

ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。 それは——男子は女子より立場が弱い 学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。 拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。 「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」 協力者の鹿波だけは知っている。 大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。 勝利200%ラブコメ!? 既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...