性なる勇者シュヴァンツと七人の花嫁

ひらきみ

文字の大きさ
上 下
10 / 82

十発目 嵐の夜

しおりを挟む
 ここは王都の宿だ。俺たちに用意されたのはこの小さな部屋だけ。部屋に小さなベッドがポツンと置かれている。外は凄まじいまで豪雨だ。今晩はここで過ごす他あるまい。俺とメイドのアリサのふたりで。何でこのようなことになったか?時間を過去に戻して振り返るとしよう。

 食材などを買い出しに俺とアリサは王都に向けてともに馬に乗り向かった。我が邸宅は王都を見下ろすように丘の上に建っている。食材もろもろが無くなってきたのでアリサが馬で買い出しに出ると言い出した。途中の山道で山賊のような連中に襲われる可能性もなくはない。というわけで俺も同行することに決まった。とはいえ本音は屋敷の中ではアインスとエレンの姉妹に絶えずつきまとわれ落ち着かないためそこから解放されたいというのがあった。

 ミルヒから必要なもののリストを渡され俺たちは王都へ向けて馬を走らせた。途中アリサはほとんど口を聞いてくれなかった。彼女なりに溜まっているものがあるのだろう。俺は途中、木々の間から降り注ぐ日差しや羽ばたく虫たちを眺めながら馬を走らせた。

 ミルヒから頼まれた食材や調味料や花の種などは市場で大方、入手することが出来た。


「もうちょっと寄り道してもいいかな?」

「ええ、お好きに」

 婦人服店で俺はミルヒ、アインス、エレンに似合う服を選ぶ。アリサの助言に従って。このためにアリサに同行してもらったのだ。

「ところでアリサ、お前に似合う服も買ってあげようと思うんだが」

「私にはいいですよ。どうぞお気遣いなく」

 アリサは伏し目がちに答える。

「あら、お嬢さん。試着してみる?」

 全身を装飾品で派手に飾り厚化粧の店のおばちゃんが出てくる。今日はアリサはいつものメイド服ではなく外行きの服を着ているため恋人か何かだと思ったのだろう。

「あら、やっぱり似合うじゃない」

 試着を終えたアリサにおばちゃんが声をかける。紫のワンピースがアリサのスラリとした身体を引き立たせている。

「うん、それも買って帰ろう」
「あ、ありがとうございます」

 アリサはうつむき気味に礼を言う。婦人服店を出て帰路につこうとしたところ空模様が急激に変わる。灰色の雲が空一面を支配し神様が風邪を引いてくしゃみでもしたかのように辺り一面に雷雨が降り注ぐ。俺たちは仕方なく目についた宿に逃げ込んだ。

「この雨を避けるためにお客様が殺到しましてね。どの部屋も埋まっておりまして。ご用意できるお部屋といえば単身のお客様用の小さなお部屋となりますがお二人様には窮屈かと」

 ちょび髭の宿の番頭は言う。

「それでも構わないから用意してもらえますか」
「かしこまりました」

 それで通されたのこの部屋だ。簡潔なベッド一台に机と椅子があるだけの確かに単身向けの質素な部屋だ。とりあえず天気が良くなるまでの避難所とするか。

 窓の外は相変わらず豪雨が降り続けており神様はなかなか機嫌を直してくれそうにない。馬たちは宿に備え付けの厩舎に入れてある。俺は椅子に腰かけ机に頬杖をついて外を眺めている。アリサはベッドに腰かけて所在なさげにしている。

「なかなか止みそうにないなあ」
「ええ」
「ここで一晩明かすことになるかもなあ」
「シュヴァンツ様とですか・・・」
「嫌?」
「いえ、そんな・・・」

 ここは宿の中にある食堂。レストラン並みとはいえないが宿泊客に料理や酒が振る舞われる。テーブルに座った俺の前ではアリサがジョッキに入ったワインをぐびぐびと飲んでいる。お前もどうだとすすめたの俺だがアリサははじめは遠慮がちだったもののだんだんと酔いが回るにつれ手が止まらなくなりつつある。

「ったく!何れあんな田舎の町娘の姉妹なんか引っ掛けたんれすかー!あのふたりマナーも作法もあったものじゃない!奥様の植えたお花を勝手に抜いちゃうし、泥だらけの脚で屋敷の中をうろつくし!掃除するのあたしなんれすよー!」
 
 アインスとエレンのことか。アリサは日頃の鬱憤を酔った勢いで俺にぶちまける。

「シュヴァンツ様が鼻の下伸ばして甘やかすからいけないんれすよー!」
「わかったよ。俺からも注意しとくから。もうちょっと飲み過ぎじゃないか。部屋に戻って休もう」 

 アリサに肩を貸し立たせるとそのまま部屋まで連れて帰る。部屋に戻りドアを閉めた途端アリサは俺に口づけしそのままベッドに押し倒す。

「シュヴァンツ様、駄目じゃないですか。妻帯者だというのに・・・」

「言ってることとやってることが逆じゃない?・・・んぐっ・・・」

 アリサはそう言う俺の口を唇で塞ぐ。抵抗する間もなく舌が挿入してきて俺の口腔内をかき回す。アリサが口を離すと唾液の糸が引く。アリサは寝ている俺を下に仁王立ちになりその白い素脚の先で俺の股間をもて遊ぶ。

「あっあっ」
 
 思わず変な声が漏れる。アリサはそんな俺を見て不敵な笑みを浮かべている。酔っぱらってすっかり人格が変わってしまったたようだ。いや、これが彼女の本質なのか。アリサはその白い脚のつま先を俺の顔面には突きつけこう言った。
 
「舐めて」



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

処理中です...