敏感パラレルワールド

さよなら現代

グワングワン

クリスマスイブ。
僕は塾にいた。
仕方なくだ。仕方なく。
親がお金を払ってくれているなら行くしかない。
やりたい事もない。だからとりあえず行くんだ。

もちろん18年間彼女はいない。
仕方なくだ。たぶん。
ただいないわけじゃない。
好きな子はいる。
同じクラスの永江リコ。
大人しくてピアノが弾ける。
上品でとにかく優しい。
もちろん喋ったことない。

来年から大学かぁ…。。
あんな子と付き合えたらなぁ…。。。

塾が終わった。
いつも通りシャッターが妙に味がある閑散とした地元の商店街を歩く。
真っ暗だ。でも通い慣れた道。

路地裏に近道がある。
スマホのゲームがいい感じ。
集中していたら来たことない場所にきた。
少しだけ地下に続く階段があるのを見つけた。
先に錆びついた扉が見える。
少しだけ開いている。

「なんだこれ」

せっかくだ。今日はイブなんだ。
そんな日にちょっと冒険すれば将来話のネタになる。
変な店に入って猫が急に出てきて…的なベタな話でいい。
このまま18歳のイブを終わらすのは無性に悲しい。

「よし、行こう。」

そういって扉を開けて中に入った。

その瞬間、強い光に包まれて視界がグワングワンに揺れた。