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勇者が仲間
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「あんたら鬼と....そこの牛はよ?」
餓鬼さんとウーさんを指差す山月。
「どちらも、相当昔に滅んだ筈だろ?」
「だから、あんな鬼みてぇな足跡、存在するわけねぇと思ってたんだが....」
「だが、てめぇは生きている」
「....ってことはあのデッケェ足跡はてめぇの....鬼のってものになる」
「となると、あの黒い物体は....」
「お前らの中の誰か」
「ってことになるかなってな」
先程まで笑っていた山月の表情は、とてつもなく真剣な表情をしており、さっきから話を茶化していた人物像とは思えないほどだ。
「俺は、あの黒い物体が....あいつらを殺したってことになる」
「ただな、俺を殺さなかったってことはよ?」
「恐らく、何かしらの理由があると思っている」
「理由もなく、あいつらを殺すような奴らなら、俺を今ここで殺しても良いってことになるだろ?」
「だから、本人にその理由を聞きたいんだよ」
「....な?ライト」
山月は僕を、凄い形相で睨んでくる。
殺気が駄々漏れだ。
「おい、誰に向かって殺気向けてやがる?」
餓鬼さんが山月の事を睨む。
「ライト様!」
殺気に気付いたのか、ミールとモカが同時に僕の方を向き安否を確かめる。
「そうカッカするなよ~、ただ理由を聞いているだけだぜ?」
「その理由が....“正当”な物なら全然いいんだよ」
「例えば....仲間を傷つけられて、抵抗したら勢い余って殺しちゃった....とかな、まぁ、そういうのでも良いよ、事故扱い的な物にしてやる」
「まっ大方、そこのスライムちゃんが殺されかけたから....ってのだろうけど」
「ただ本人から聞きたいなって」
山月の言うことは最もだ
仲間になるのであれば、それ相応の信頼が必要。
自分の同族を簡単には殺せるような奴に自信の命は預けられないし、何より、プライドが許さないだろう。
「お前の言う通り....スイを傷つけられたからってのが大まかな理由だ」
「ふ~ん....他には?」
「....他には?」
山月の言葉に、思わずオウム返ししてしまう。
「スキルの暴走だ」
セリナさんが説明をする。
言葉に詰まっていた僕に助け船を出してくれたのであろう。
「貴様....なかなかみる目があるな」
セリナさんは、山月を見ながら感心する。
「どういうことですか?」
「へぇ、そこまで読む?凄いっすね」
「だからよ?まず、それだけの....まぁ、仲間を殺されかけてこそいるが....」
「その理由だけで人間を殺すような奴らには見えなかった」
「それに....仮にも“将来、人間と同盟を結びたい”と言ってる奴だ」
「そんな奴が、人間を簡単に殺すなんてことするか?それって矛盾だらけだろ?」
「お前らが、自信の夢を叶えるためには多少の犠牲は仕方ないと感じるような奴らなら話は変わるが....そういう奴らにも見えなかった」
「まぁ、仲間を傷つけられた訳だし、理由としては分からんくもないがな」
「だから、他には?って聞いたんだ」
「それを読みますか?まるで将棋の解説者みたいだな」
「....例えの意味は分からないが、褒めてると受け取っておこう」
「よかった~、スルーしてくれた」
「これスルーされなかったらどうしようとか考えてて....」
「....あー、まぁ話がまた逸れたな」
「で?スキルの暴走?」
山月は僕に目線を向け、僕に説明するよう促す。
それに気付き、僕は説明を始める。
「....あぁ、スキルの暴走だ」
「“人格”と名付けた、このスキルは....感情が昂ると、その感情にあった人格が僕を乗っとるらしい」
「それぞれの人格に応じて、効果も違う」
「制御は?」
山月の問いに僕は首を降る。
「めんどくせぇスキルだな....」
正直、僕もそう思う。
「まぁ、理解はしたよ」
「つまりは、その“人格”ってスキルを持ってるライトの感情が爆発して、あの黒い物体になって、意識乗っ取られて、奴らを殺したってことか?」
「あぁ」
「ふ~ん....まぁ信じるよ」
「本当か!?」
「あぁ、嘘ついてるようにも見えなかったしな」
「ただ....」
山月はそう言いながら下を向く。
下を向いて、山月の体は震えだし、口元は少しニヤけている。
「人格ってスキル名なんだよ!」
「誰が付けたんだよ、そのまんまの名前」
「ネーミングセンス最高かよ!」
バカにしたように言う山月、恐らく僕が付けたと思っているのだろう。
これを聞いた途端、後ろにいる、“名前を付けた人”の殺気がヤバイ。
魔法の音がする。
「あ~ぁ、おっかし....ぃ....嘘っすよね?」
気付く山月。
「いや、えぇ」
「ジョーダン、冗談ですやん」
「もう、それは通用しないぞ?」
「いや....で、でも、俺を殺したらそこにいるリーダーの意思と真反対の事をすることになりますよ?」
「大丈夫だ、お前は勇者だから死なん」
「いや、話聞いてましたか?“元”ですって」
「いや、お前は勇者だ」
「いやぁ、だから、元だって」
「大丈夫、お前は勇者だ」
「その自信はどこから?」
「大丈夫だ、私が今決めた」
「いや....あの....」
「大丈夫、私には分かる」
「あーはい、もうあの....出来れば....一瞬で....お願いします」
「フフッ、あぁ!」
ニコやかに笑うセリナさん、覚悟を決める山月。
「あぁ、死ぬ前に童貞....卒業したかったなぁ」
――――――――
「ったく、話してるだけの筈なのに体はボロボロだぜ」
「寸前で僕が止めてなかったら大変なことになってたからな、感謝しろよ?」
「いや、もう本当にライト様は命の恩人すわ!」
「山月....ライトのスキル名は....ダサいか?ダサくないか?」
「ダサくありません!」
「よし、良いだろう」
そんな話をしていると、セリナさんの研究室のドアが開く。
「....」
牛人族の子だ。
餓鬼さんとウーさんを指差す山月。
「どちらも、相当昔に滅んだ筈だろ?」
「だから、あんな鬼みてぇな足跡、存在するわけねぇと思ってたんだが....」
「だが、てめぇは生きている」
「....ってことはあのデッケェ足跡はてめぇの....鬼のってものになる」
「となると、あの黒い物体は....」
「お前らの中の誰か」
「ってことになるかなってな」
先程まで笑っていた山月の表情は、とてつもなく真剣な表情をしており、さっきから話を茶化していた人物像とは思えないほどだ。
「俺は、あの黒い物体が....あいつらを殺したってことになる」
「ただな、俺を殺さなかったってことはよ?」
「恐らく、何かしらの理由があると思っている」
「理由もなく、あいつらを殺すような奴らなら、俺を今ここで殺しても良いってことになるだろ?」
「だから、本人にその理由を聞きたいんだよ」
「....な?ライト」
山月は僕を、凄い形相で睨んでくる。
殺気が駄々漏れだ。
「おい、誰に向かって殺気向けてやがる?」
餓鬼さんが山月の事を睨む。
「ライト様!」
殺気に気付いたのか、ミールとモカが同時に僕の方を向き安否を確かめる。
「そうカッカするなよ~、ただ理由を聞いているだけだぜ?」
「その理由が....“正当”な物なら全然いいんだよ」
「例えば....仲間を傷つけられて、抵抗したら勢い余って殺しちゃった....とかな、まぁ、そういうのでも良いよ、事故扱い的な物にしてやる」
「まっ大方、そこのスライムちゃんが殺されかけたから....ってのだろうけど」
「ただ本人から聞きたいなって」
山月の言うことは最もだ
仲間になるのであれば、それ相応の信頼が必要。
自分の同族を簡単には殺せるような奴に自信の命は預けられないし、何より、プライドが許さないだろう。
「お前の言う通り....スイを傷つけられたからってのが大まかな理由だ」
「ふ~ん....他には?」
「....他には?」
山月の言葉に、思わずオウム返ししてしまう。
「スキルの暴走だ」
セリナさんが説明をする。
言葉に詰まっていた僕に助け船を出してくれたのであろう。
「貴様....なかなかみる目があるな」
セリナさんは、山月を見ながら感心する。
「どういうことですか?」
「へぇ、そこまで読む?凄いっすね」
「だからよ?まず、それだけの....まぁ、仲間を殺されかけてこそいるが....」
「その理由だけで人間を殺すような奴らには見えなかった」
「それに....仮にも“将来、人間と同盟を結びたい”と言ってる奴だ」
「そんな奴が、人間を簡単に殺すなんてことするか?それって矛盾だらけだろ?」
「お前らが、自信の夢を叶えるためには多少の犠牲は仕方ないと感じるような奴らなら話は変わるが....そういう奴らにも見えなかった」
「まぁ、仲間を傷つけられた訳だし、理由としては分からんくもないがな」
「だから、他には?って聞いたんだ」
「それを読みますか?まるで将棋の解説者みたいだな」
「....例えの意味は分からないが、褒めてると受け取っておこう」
「よかった~、スルーしてくれた」
「これスルーされなかったらどうしようとか考えてて....」
「....あー、まぁ話がまた逸れたな」
「で?スキルの暴走?」
山月は僕に目線を向け、僕に説明するよう促す。
それに気付き、僕は説明を始める。
「....あぁ、スキルの暴走だ」
「“人格”と名付けた、このスキルは....感情が昂ると、その感情にあった人格が僕を乗っとるらしい」
「それぞれの人格に応じて、効果も違う」
「制御は?」
山月の問いに僕は首を降る。
「めんどくせぇスキルだな....」
正直、僕もそう思う。
「まぁ、理解はしたよ」
「つまりは、その“人格”ってスキルを持ってるライトの感情が爆発して、あの黒い物体になって、意識乗っ取られて、奴らを殺したってことか?」
「あぁ」
「ふ~ん....まぁ信じるよ」
「本当か!?」
「あぁ、嘘ついてるようにも見えなかったしな」
「ただ....」
山月はそう言いながら下を向く。
下を向いて、山月の体は震えだし、口元は少しニヤけている。
「人格ってスキル名なんだよ!」
「誰が付けたんだよ、そのまんまの名前」
「ネーミングセンス最高かよ!」
バカにしたように言う山月、恐らく僕が付けたと思っているのだろう。
これを聞いた途端、後ろにいる、“名前を付けた人”の殺気がヤバイ。
魔法の音がする。
「あ~ぁ、おっかし....ぃ....嘘っすよね?」
気付く山月。
「いや、えぇ」
「ジョーダン、冗談ですやん」
「もう、それは通用しないぞ?」
「いや....で、でも、俺を殺したらそこにいるリーダーの意思と真反対の事をすることになりますよ?」
「大丈夫だ、お前は勇者だから死なん」
「いや、話聞いてましたか?“元”ですって」
「いや、お前は勇者だ」
「いやぁ、だから、元だって」
「大丈夫、お前は勇者だ」
「その自信はどこから?」
「大丈夫だ、私が今決めた」
「いや....あの....」
「大丈夫、私には分かる」
「あーはい、もうあの....出来れば....一瞬で....お願いします」
「フフッ、あぁ!」
ニコやかに笑うセリナさん、覚悟を決める山月。
「あぁ、死ぬ前に童貞....卒業したかったなぁ」
――――――――
「ったく、話してるだけの筈なのに体はボロボロだぜ」
「寸前で僕が止めてなかったら大変なことになってたからな、感謝しろよ?」
「いや、もう本当にライト様は命の恩人すわ!」
「山月....ライトのスキル名は....ダサいか?ダサくないか?」
「ダサくありません!」
「よし、良いだろう」
そんな話をしていると、セリナさんの研究室のドアが開く。
「....」
牛人族の子だ。
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