上 下
20 / 75

戸惑いと感謝

しおりを挟む
むかしむかしにんげんにわるさをするわるいモンスターがいました。



そのモンスターはまおうという、とってもわるいひとにしたがっていました。



あるひ、ゆめのなかでめがみさまからつよいちからをさずかったゆうしゃがあらわれました。



ゆうしゃは、ひとびとのためにまおうをたおすたびにでました。



たびのとちゅうでであっただいじななかまとともに、せいれいたちをしたがえて、まおうじょうにむかいます。



まおうじょうではげしいたたかいのすえ、ついにゆうしゃはまおうをたおしました。



おしまい



何やらいい匂いが鼻腔びこうをくすぐる。

そういえば私、風邪をひいて寝てたんでしたっけ……

ゆっくりと目を開けると、柔らかく私の手を握り、コックリ、コックリと舟を漕いでいるサキュバスの姿が。

本当に私の体内の魔力を調整してくれていたのだろう、僅かに開いた口から垂れている涎は眠気によるものだと思いたい。

と、

「ん、……目が覚めましたか?お姉さま」

僅かに動いた体にでも気付いたのか片手で目を擦りながらそう聞いてくる。

「えぇ。あなたのおかげで寝る前よりは随分楽になりました」
もやがかかったようだった頭はすっきりしたし、体の気怠さも比べ物にならないほどだ。

「そうですか。それは良かったです」
フフフと控えめに笑い
「ではご褒美をください」
と続けてきた。

「ろくなお願いで無ければ善処ぜんしょしますが」

「身体を触らせろだの、そんな事は言いませんよ」

警戒しているのが丸わかりなのだろう、自分からそう申告してくる。

「とりあえず言ってみてください。聞いてから決めますので」

「私を名前で呼んでください!」
はて?名前などリリスは付けていないはずですが……

「私が勝手に考えましたの。お姉さまと釣り合うような名前を」

ふむ、まぁ、それくらいならば

「構いませんよ。今後なんとお呼びすれば?」

「パパラチア……パパラと呼んでください」

「分かりました。ありがとうございますね。パパラ」

「あぁ……!お姉さまが!誰にも呼ばれた事の無い私の名前を!しかも愛称で!感無量です!」
目の前で急に幸福メーターが吹っ切れた方が一名。

「と、幸せにひたって忘れるところでしたが、食欲はありますか?」

そういえば朝から何も食べていませんでしたね。

風邪とは食欲も無くすのか、言われて気が付きましたが結構空腹です。

「えぇ、お腹……すきましたね」

「スープを作っているので持ってきますね。パンも食べます?」

お願いしますと伝えるとスキップ気味にキッチンへ向かう。

窓に目をやれば辺りは夕暮れ。

結構な時間寝てましたね。

ツヅラオはまぁ……心配はいらないと思いますが、気にはなりますね。大丈夫だったでしょうか。

とそんな事を考えていればパパラがスープとパンを持って来てくれる。

匂いだけで美味しい事を確信しつつ、ゆっくりとその日初めての食事を口にした。

途中で、あーんしましょうか?だったり、
ふーふーしましょうか?
と不要な申し出が多々ありましたが全てを拒否して無事完食しました。

「また寝ていれば明日の朝には完治していると思いますが、くれぐれも!二度と!魔王の悪夢は控えてください。風邪なんかで済んでいるのが本当に奇跡のようなものですからね」

と帰る前にパパラに念を押され、
流石にこんな体験したらしばらくは使わない。
と返すと
「二!度!と!ですよ。もう、……お姉さまだけの御体ではないんですからね?」
と言われましたが……

あなたとの体でもありませんからね?

まぁですがかなり助かった事は事実ですし、後日リリスにも合わせてお礼をしなければ。

と心に決め、また私の意識は沈んでいった。

*

こんにちわなのです!ツヅラオなのです!

マデ姉が体調不良という事で僕がダンジョン課にて対応させていただいているのですが、いつもと様子が変なのです!

強そうな冒険者さん達がいっぱい来て、
マデ姉をパーティに入れたい、や
マデ姉と手合わせをさせてくれ
とお願いに来る人が後を絶たないのです!

ミヤさんや他の課から対応のお手伝いに来て貰っていますがそれでも大変なのです!

さらにはマデ姉とかか……神楽様との闘いを見てやる気になった冒険者さんたちもダンジョンの紹介を受けに大勢来るのです!

今までは一日平均10組前後程度だったのですが、今日だけで40組目になるのです。

他の組に回したダンジョンと被らないように希望に合ったダンジョンを探すのは骨が折れるのです。

ようやくギルドが閉まる時間になった頃には、ギルド全体が疲労困憊ひろうこんぱいだったのです。

「というかマデラを指南の相手にしたのは悪手だった気がしてきた……そらあんだけ強いの見せたら引き抜きに来るって分かりきってるわ」

とミヤさんがぼやきますが、それ、後の祭りなのです。

「本人不在で引き取ってもらったのですが……本人居る時に来られたらどうするのです?」

「本人に対応してもらう」
親指立てて輝く笑顔で言ってますのですが、マデ姉は怒ると思うのです。

そもそも今日体調不良の理由も恐らくかか……神楽様との戦闘のせいなのですし……

なんとかなるっしょー

とミヤさんが叫んで皆さん帰ってますのですが……僕、あまりよくない予感がするのは気のせいなのです?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ポーション必要ですか?作るので10時間待てますか?

chocopoppo
ファンタジー
松本(35)は会社でうたた寝をした瞬間に異世界転移してしまった。 特別な才能を持っているわけでも、与えられたわけでもない彼は当然戦うことなど出来ないが、彼には持ち前の『単調作業適性』と『社会人適性』のスキル(?)があった。 第二の『社会人』人生を送るため、超資格重視社会で手に職付けようと奮闘する、自称『どこにでもいる』社会人のお話。(Image generation AI : DALL-E3 / Operator & Finisher : chocopoppo)

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。 ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。 ※短いお話です。 ※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!

ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。 なのに突然のパーティークビ宣言!! 確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。 補助魔法師だ。 俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。 足手まといだから今日でパーティーはクビ?? そんな理由認められない!!! 俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな?? 分かってるのか? 俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!! ファンタジー初心者です。 温かい目で見てください(*'▽'*) 一万文字以下の短編の予定です!

処理中です...