49 / 57
再びの異世界、シャーシード国
11
しおりを挟む午後のお茶の時間のこと。
王妃様が僕を手招きする。
丁度子ども達がお昼寝に入ったところだったので、乳母達に任せて王妃様に続くと、到着したのは国王陛下の執務室だった。
「失礼致します。」
礼を執る王妃様に続いて、僕も礼を執った。
ソファを案内され、3人掛けに王妃様の指示で並んで掛けた。
執務机から書類を数枚抜き取り、国王陛下が僕達の向かいに掛けた。
「シノダ、こちらに足を運んでくれて、感謝する。」
国王陛下が優しい表情で僕の目を真っ直ぐに見るので、僕は緊張しながらおずおずと目を合わせ、頭を振った。
「緊張することないわよ? 国王仕様なのは最初だけよ。今日は義父母だと思ってね。」
隣の王妃様から声が掛かった。
「…………はい。」
僕の返事を待つように、国王陛下は話し始めた。
「ずっと緊張されちゃうのも寂しいな。だから、こっちの話を先にするね。
まずはこちらを見て欲しい。」
国王陛下は、3枚程度の書類を見せてくれた……のだけれど……
「申し訳ありません。僕、読めません。」
「あ、ごめん。それじゃ、かいつまんで話すね。
まず最初にこの書類は、シノダが女の子を産み出してから、女の子の出生率が上がったという報告なんだ。」
「はい?」
「前に話してくれただろう? シノダはシーシャの魂の、最後の欠片を持って生まれたと。
それで、この国にも女神が居着くようになったのが、出生率に現れているのではないかと思ったのだ。
ならば、この先、きっと女の子の出生率が上がるだろう?
だからね、こんな法律を作ってみた。
それがこっち。次の書類に書いてある。」
「はい。」
「こちらは、以前……それこそダンネス王の時代から引き継がれた法律で、『何人たりとも、何歳であろうと、時間に関係なく、この国内への女人滞在を禁ずる』と書いてあるんだ。
私はこの度、国王としてこの法律を改定した。
それがこの次の書類だ。」
「はい。」
「『我が国シャーシード国は、性別や年齢、立場や階級に関わらず、全ての国民を幸せにするとここに誓う。
ただし、出生や移住などで新しくこの国の民となった折には、必ず王城まで知らせること。以上。』」
僕は、目を見開く。
だって、僕も娘も、この国で幸せに暮らせるってことだ。
「ありがとうございます、国王陛下。王妃様も、ありがとうございました。」
僕はお2人へ、娘の分も感謝を伝え、頭を下げる。
「ねぇシノダ、君は、このシャーシード国の民になることを選んだね。ということは、君の父と母は、ここにいる私達だけということになる。
だからどうか、私達のことは、お父様、お母様と呼んでくれないだろうか。」
「はい。喜んで!」
それから、国王陛下の方へ姿勢を正して、
「お父様。」
王妃様へも姿勢を正してから、
「お母様。」
お呼びしたら、お2人とも、とても喜んでくださった。
0
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説
【完結】嘘はBLの始まり
紫紺
BL
現在売り出し中の若手俳優、三條伊織。
突然のオファーは、話題のBL小説『最初で最後のボーイズラブ』の主演!しかもW主演の相手役は彼がずっと憧れていたイケメン俳優の越前享祐だった!
衝撃のBLドラマと現実が同時進行!
俳優同士、秘密のBLストーリーが始まった♡
※番外編を追加しました!(1/3)
4話追加しますのでよろしくお願いします。

離したくない、離して欲しくない
mahiro
BL
自宅と家の往復を繰り返していた所に飲み会の誘いが入った。
久しぶりに友達や学生の頃の先輩方とも会いたかったが、その日も仕事が夜中まで入っていたため断った。
そんなある日、社内で女性社員が芸能人が来ると話しているのを耳にした。
テレビなんて観ていないからどうせ名前を聞いたところで誰か分からないだろ、と思いあまり気にしなかった。
翌日の夜、外での仕事を終えて社内に戻って来るといつものように誰もいなかった。
そんな所に『すみません』と言う声が聞こえた。
僕たち、結婚することになりました
リリーブルー
BL
俺は、なぜか知らないが、会社の後輩(♂)と結婚することになった!
後輩はモテモテな25歳。
俺は37歳。
笑えるBL。ラブコメディ💛
fujossyの結婚テーマコンテスト応募作です。
俺の好きな男は、幸せを運ぶ天使でした
たっこ
BL
【加筆修正済】
7話完結の短編です。
中学からの親友で、半年だけ恋人だった琢磨。
二度と合わないつもりで別れたのに、突然六年ぶりに会いに来た。
「優、迎えに来たぞ」
でも俺は、お前の手を取ることは出来ないんだ。絶対に。
後輩に嫌われたと思った先輩と その先輩から突然ブロックされた後輩との、その後の話し…
まゆゆ
BL
澄 真広 (スミ マヒロ) は、高校三年の卒業式の日から。
5年に渡って拗らせた恋を抱えていた。
相手は、後輩の久元 朱 (クモト シュウ) 5年前の卒業式の日、想いを告げるか迷いながら待って居たが、シュウは現れず。振られたと思い込む。
一方で、シュウは、澄が急に自分をブロックしてきた事にショックを受ける。
唯一自分を、励ましてくれた先輩からのブロックを時折思い出しては、辛くなっていた。
それは、澄も同じであの日、来てくれたら今とは違っていたはずで仮に振られたとしても、ここまで拗らせることもなかったと考えていた。
そんな5年後の今、シュウは住み込み先で失敗して追い出された途方に暮れていた。
そこへ社会人となっていた澄と再会する。
果たして5年越しの恋は、動き出すのか?
表紙のイラストは、Daysさんで作らせていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる