【完結】僕の彼氏の婚約者は、前世の恋人である僕が忘れられないらしい

325号室の住人

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再びの異世界、シャーシード国

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午後のお茶の時間のこと。

王妃様が僕を手招きする。

丁度子ども達がお昼寝に入ったところだったので、乳母達に任せて王妃様に続くと、到着したのは国王陛下の執務室だった。

「失礼致します。」
礼を執る王妃様に続いて、僕も礼を執った。

ソファを案内され、3人掛けに王妃様の指示で並んで掛けた。

執務机から書類を数枚抜き取り、国王陛下が僕達の向かいに掛けた。

「シノダ、こちらに足を運んでくれて、感謝する。」

国王陛下が優しい表情で僕の目を真っ直ぐに見るので、僕は緊張しながらおずおずと目を合わせ、かぶりを振った。

「緊張することないわよ? 国王仕様なのは最初だけよ。今日は義父母だと思ってね。」

隣の王妃様から声が掛かった。

「…………はい。」

僕の返事を待つように、国王陛下は話し始めた。

「ずっと緊張されちゃうのも寂しいな。だから、こっちの話を先にするね。
まずはこちらを見て欲しい。」

国王陛下は、3枚程度の書類を見せてくれた……のだけれど……

「申し訳ありません。僕、読めません。」

「あ、ごめん。それじゃ、かいつまんで話すね。
まず最初にこの書類は、シノダが女の子を産み出してから、女の子の出生率が上がったという報告なんだ。」

「はい?」

「前に話してくれただろう? シノダはシーシャの魂の、最後の欠片を持って生まれたと。
それで、この国にも女神が居着くようになったのが、出生率に現れているのではないかと思ったのだ。
ならば、この先、きっと女の子の出生率が上がるだろう?
だからね、こんな法律を作ってみた。
それがこっち。次の書類に書いてある。」

「はい。」

「こちらは、以前……それこそダンネス王の時代から引き継がれた法律で、『何人たりとも、何歳であろうと、時間に関係なく、この国内への女人滞在を禁ずる』と書いてあるんだ。
私はこの度、国王としてこの法律を改定した。
それがこの次の書類だ。」

「はい。」

「『我が国シャーシード国は、性別や年齢、立場や階級に関わらず、全ての国民を幸せにするとここに誓う。
ただし、出生や移住などで新しくこの国の民となった折には、必ず王城まで知らせること。以上。』」

僕は、目を見開く。
だって、僕も娘も、この国で幸せに暮らせるってことだ。

「ありがとうございます、国王陛下。王妃様も、ありがとうございました。」

僕はお2人へ、娘の分も感謝を伝え、頭を下げる。

「ねぇシノダ、君は、このシャーシード国の民になることを選んだね。ということは、君の父と母は、ここにいる私達だけということになる。
だからどうか、私達のことは、お父様、お母様と呼んでくれないだろうか。」

「はい。喜んで!」

それから、国王陛下の方へ姿勢を正して、
「お父様。」

王妃様へも姿勢を正してから、
「お母様。」

お呼びしたら、お2人とも、とても喜んでくださった。


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