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再びの異世界、シャーシード国
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しおりを挟む午後のお茶の時間のこと。
王妃様が僕を手招きする。
丁度子ども達がお昼寝に入ったところだったので、乳母達に任せて王妃様に続くと、到着したのは国王陛下の執務室だった。
「失礼致します。」
礼を執る王妃様に続いて、僕も礼を執った。
ソファを案内され、3人掛けに王妃様の指示で並んで掛けた。
執務机から書類を数枚抜き取り、国王陛下が僕達の向かいに掛けた。
「シノダ、こちらに足を運んでくれて、感謝する。」
国王陛下が優しい表情で僕の目を真っ直ぐに見るので、僕は緊張しながらおずおずと目を合わせ、頭を振った。
「緊張することないわよ? 国王仕様なのは最初だけよ。今日は義父母だと思ってね。」
隣の王妃様から声が掛かった。
「…………はい。」
僕の返事を待つように、国王陛下は話し始めた。
「ずっと緊張されちゃうのも寂しいな。だから、こっちの話を先にするね。
まずはこちらを見て欲しい。」
国王陛下は、3枚程度の書類を見せてくれた……のだけれど……
「申し訳ありません。僕、読めません。」
「あ、ごめん。それじゃ、かいつまんで話すね。
まず最初にこの書類は、シノダが女の子を産み出してから、女の子の出生率が上がったという報告なんだ。」
「はい?」
「前に話してくれただろう? シノダはシーシャの魂の、最後の欠片を持って生まれたと。
それで、この国にも女神が居着くようになったのが、出生率に現れているのではないかと思ったのだ。
ならば、この先、きっと女の子の出生率が上がるだろう?
だからね、こんな法律を作ってみた。
それがこっち。次の書類に書いてある。」
「はい。」
「こちらは、以前……それこそダンネス王の時代から引き継がれた法律で、『何人たりとも、何歳であろうと、時間に関係なく、この国内への女人滞在を禁ずる』と書いてあるんだ。
私はこの度、国王としてこの法律を改定した。
それがこの次の書類だ。」
「はい。」
「『我が国シャーシード国は、性別や年齢、立場や階級に関わらず、全ての国民を幸せにするとここに誓う。
ただし、出生や移住などで新しくこの国の民となった折には、必ず王城まで知らせること。以上。』」
僕は、目を見開く。
だって、僕も娘も、この国で幸せに暮らせるってことだ。
「ありがとうございます、国王陛下。王妃様も、ありがとうございました。」
僕はお2人へ、娘の分も感謝を伝え、頭を下げる。
「ねぇシノダ、君は、このシャーシード国の民になることを選んだね。ということは、君の父と母は、ここにいる私達だけということになる。
だからどうか、私達のことは、お父様、お母様と呼んでくれないだろうか。」
「はい。喜んで!」
それから、国王陛下の方へ姿勢を正して、
「お父様。」
王妃様へも姿勢を正してから、
「お母様。」
お呼びしたら、お2人とも、とても喜んでくださった。
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