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再びの異世界、シャーシード国

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翌朝……

リンはすっかり立ち直ったようで、
「たまにはこうして、ちょっとは甘えさせてほしい。」
と言われた。

とりあえず、特に返事はせずに頭を撫でておいた。

子ども達も、何とか乳母だけで一晩乗り切ったようで、安心した。

僕としては、子ども達が僕の乳以外も口にできるようになるまでは、もうちょっとリンには我慢してもらおうと思っている。

《魂の誓い》を果たしてしまったので、お互いに、お互いとしか交われないので、そこは本当に申し訳ないと思ってはいるのだけど……



それからはできるだけ─リンが僕の長男みたいに─リンの体が空く時はリンと2人だけのマッタリした時間を作ったり……
3人にもできるだけ生活リズムを覚えさせて、長く眠る時間帯には僕の体が空くようにしたり……
ハグやらキスやら膝枕やらして過ごした半年後のこと。

3人が初めてのパン粥を食べたその日、僕はリンの執務室のドアの前で、リンの出待ちをしていた。

定時になり、彼の側近たちが次々と退勤して行くのを見送った僕は、執務室のドアの隙間をそっと開いてみた。

リンは、社長デスクみたいな立派な机に座って……
蕩けるような甘い、真っ赤な顔をして、快楽に喘いでいた。

「あっ……そんなに激しくしゃぶらないで……私がシたいのに……あんっ」

──は? リンが浮気?

実は今日僕は、リンをお風呂に誘おうと思ってここに来ていた。

子ども達は、パン粥の方が腹持ちが良いので、リンの仕事が終わる前に入浴させて、もう寝かせて来た。
だから、のんびりお風呂に誘おうかと、思ったのに……

「ぁああっ…出る!出すぞ!飲み込め!!
んんん、ああああーーーー!」

リンのイク声がしたところで、僕はドアをそっと閉め、居住区へ帰った。




「ただいまぁ。シノダ、帰ったぞ!」

何食わぬ顔で帰宅したリンに、いつもならハグして出迎えるところだけれど、抱き着く気にはなれず、子ども達がパン粥を美味しそうに食べてくれたことだけを報告すると、体調不良を訴えて先に就寝した。

──僕のせいだ。

この国の、他の夫婦がどうしているのかはわからない。
でもきっと、恋人同士みたいなスキンシップがなかったから、だからリンは浮気を……

いくら《魂の誓い》を果たしたからといって、ペニスと後孔の交わりはできなくても、口とか手とか、他の場所ならできるんじゃないか。

いつもは僕と同じベッドで眠る子ども達が、今日は続き部屋になっている子ども達の部屋のベッドで寝ている。

リンは、反対側の続き部屋になっている王太子の寝室を使っているので、今日の僕は久々の1人寝だった。

その晩、僕は涙が止まらなかった。


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