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再びの異世界、シャーシード国
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しおりを挟む「まずは、説明を先延ばしにしてしまったこと、すまなかった。
あの日、シノダの手は私から離した。
その前から、王太子ダリンスは廃されるだろう。もしそうなれば私が繰り上がりの王太子になるであろうことは、何となく感じていたのだ。
あの石の記憶……青髪の青年を見ていて、シノダを王太子妃にしてしまうのは、シノダにとって幸せなのだろうかと、考えてしまったのだ。」
「それなら、言ってくれればよかった。僕はあの日、リンに捨てられたんだよ?
振り返ったらリンが居なくて…どれだけ泣いたことか!」
なのにリンは、
「あぁ、そうだったな。見ていたよ。」
「はぁ? 悪趣味!」
「それしかできなかったんだ。こっちと繋げる魔術が完成してなくて……完成するまで2週間掛かったんだ。
その間は、弱って行くシノダの体を媒介にして、シノダの夢から見るしかできなくて。
どうしてあの時、私はシノダの手を離してしまったのかって、ずっと後悔して自分を呪ってた。」
「リン……泣いたって僕はごまかされないよ。」
僕が少し強い口調で言えば、リンはおもむろにベッドから下りて、正座姿勢から膝の前に両手をついた。
それから次の瞬間、額が床にめり込む勢いで下ろした。
「シノダ、申し訳なかった!!」
「…………………………わかったよ、許す。それで?」
リンは顔を上げると続けた。
「うん。それで、結局魔術は完成しなくて、悶々としていたら…」
「していたら?」
「何日も完徹が続いて寝落ちしたある日、夢の中にダンネスとシーシャが出てきて説教された。
《魂の誓い》をした同士なのに、なぜ離れているのかと。
その時に教えてもらったんだ。私もシノダも懐妊していると。」
「………………そうか。」
僕は言いながら、内心シーシャとダンネスに『グッジョブ』とサムズアップしていた。
「それから、父母が国王と王妃になることに決まって、国を立て直すのに付き合って、もろもろ断罪して……」
「うん。」
「シノダをこっちの世界に連れてくるには、代わりに1人送らないといけないって言われて、用意して、で、やっと迎えに行けたんだ。」
「ん?リン。僕の代わりって、もしかして?」
「あぁ。ダリンスだよ。あの時、ポイッと…」
「麻袋だったよね?」
「そうだよ。もうさ、顔見るのも嫌だろう?」
「そうだけど!」
「それでさ、もう謝罪も終わったことだし、シノダさん?」
「は?」
「あの…上に上がらせていただいても?」
僕は、1つ溜息を吐くと、
「仕方ないなぁ…いいよ。」
答えて、リンに右手を差し伸べた。
リンは、確かに僕の右手を掴んだ。
掴んだけれど、どういう訳か僕はそのまま半回転し、気付いた時にはリンに組み敷かれていた。
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