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異世界 シャーシード国
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しおりを挟む『シノダ…大丈夫か?』
リンの声に、僕はゆっくりと瞼を上げた。
最初はショボショボとしたけれど、徐々に目は慣れてきた。
焦点が定まるようになるけれど、全体にぼんやりとした白い部屋だというのはわかった。
『……リン、ここは?』
『わからない。確かに祭壇の前で愛を誓ったハズなのだが……』
どうやらリンにもわからないようだ。
すると、僕の右の方から桃色と黄色の光の珠がふやふやと飛んできた。
その光は、僕らの前までやって来ると少しずつ縦に長くなり、人型になると、顔が現れた。
黄色や桃色の光に顔が付いただけなのに、僕には誰なのかわかってしまう。
『ダンネス、シーシャ…』
『え…創生物語の最初の王と、悲恋の妃の……?』
顔だけが見えるダンネスとシーシャは、笑顔になり、そして揃って悲しそうな表情に変わった。
『そうだ。いかにも、わしはダンネス…』
『わたしはシーシャ…』
『我らの記憶を守ってきた人間よ、よく参った。』
『シンヤ…私の記憶を守りし最後の子…ごめんなさい。そのせいで辛い目に遭ったね。』
僕によく似た顔のシーシャは、僕より幾分低いハスキーな声で言うと、僕を抱きしめてくれた。
瞬間的に心も体も温かくなる。
『わしが愛するシーシャを探すべく王太子に施した魔法で、2人には辛い目に遭わせることになったのだろう。
反省しておる。』
『そうですよ、ダンネス様ぁ。シーシャは「必ずお傍に参ります」とお伝えしましたよ。』
『聞いとらん!』
『確かに返事をしたのに覚えてないんですから。僕は《その言葉をダンネス様に伝える》という望みの達成のせいで魂を10に割かれたのに酷いですぅ。』
『シーシャ、すまない。わしのキッスで許しておくれ。』
むっちゆううっちゅっちゅっ……
『あんっ…ダンネス様ったらぁ~。天上へ戻るまでまってくらさいぃ~。』
ところどころ、黄色と桃色が交ざって薄いオレンジ色のような光に変わる。
『ナニしてんですか!』
『御用はお詫びだけですか?』
ハッ
僕らのツッコミに、2人(?)は状況を思い出してくれたようだ。
『『違う!』』
『実は、天上でやっと最愛に会えたのだ。シーシャの魂を解放してくれてありがとう。』
桃色の光─シーシャ─もペコリと頭を下げたようで、一瞬顔が見えなくなった。
『ど、どういたしまして。わざわざ御礼のためにこちらへ下りて下さってありがとうございます。』
『否、それだけではない。実は天上に居たら、君らの魂の誓いが聞こえてきてな。無事に受理されたぞ。』
『『魂の誓い?』』
『そうだ。』
『あ、ダンネス様ぁ、もしかしたら彼ら、気付いてないのかもしれませんよ?』
『『何がです?』』
『ほらね。』
するとシーシャは桃色の光の中からキラキラと反射させる何か─手鏡─を取り出し、僕らに見せた。
『ほら、コレが、君らが一般的に見えている状況だよ。』
映ったソレは、水色と青のモニャモニャで出来た人型だった。
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