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異世界 シャーシード国
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しおりを挟むそれから私は、試しに魔法を使ってみたり、自分の今の体を動かす練習をしたりした。
目が覚めたのは午前10時頃だろうか。
それが、過保護過ぎるほどの父母とエミリに見張られながら少しだけ訓練して、夕食前には徒歩移動ならば無理なくできるまで、体が馴染んだ。
まぁ、若い体とは言え、学校で朝から晩まで何棟もある校舎内を上に下に徒歩移動していたことを考えると、12年間眠っていた体は弱く、だからすぐにバテた。
階段を1階から2階へ上がるだけで息を切らしてしまうし、自室から1階下の食堂まで歩くだけで、椅子に掛ける時の《どっこいしょ》感が違う。
その点は少しずつ体に魔力を纏わせることで、関節にバネを仕込んだように軽く補助しながら体を使う塩梅を身に着けた。
夜には気持ちいい疲労感に包まれ、その晩は1度も目覚めることなくよく眠れた。
父が昨日のうちに私の目覚めを国王へ知らせたそうだ。
私が明日の午後から王城へ上がることに決まったと、朝食の時に言われた。
なので、今日は母と一緒に外出することになった。
母には私の他に私の8歳上の長男が居るそうだ。
兄は領地に家族と家を持って居るそうで、とりあえず手紙で私の目覚めを報せたそうだが、明日王城へ上がる迄にこちらへ来ることは距離的に難しいそうだ。
私には家で兄と過ごした楽しい記憶はあまりない。
私が物心つく頃には、私の活動時間中に兄は学園へ通っていたし、学園では初等学園はそれ以上の学園と校舎同士が離れているので、何かの行事で一方的に見た程度の記憶しか残っていなかった。
さて。
私は今、母と他愛ない話をしながら馬車に揺られている。
この国には男しか居ないが、12歳になると、素質のある者や私のように必要がある者のみ、魔術で体を女役に変えられる。
女役になった者は、裾を足の付け根までたくし上げられるデザインのスボンを穿き、上もゆったりと、ボタンではなく紐で3ヶ所結ぶタイプのシャツを着ることになるのだが、私はずっと眠っていたので、今日の朝イチにその服を購入することになったのだ。
そして早速着替え、母と私は教会併設の孤児院に向かっている。
何でも、昼時に孤児院へ子どもの人数分のパンを寄附して一緒に食事するのが、母の最近のルーティンなんだそうだ。
「到着したわよ。」
母は言うと、1人でサッと降車した。
僕には母が手を貸してくれた。
降りた先には、壁が今にも崩れそうな建物がある。
母に改修しないのか訊ねるが、国からそういった計画や援助はないという。
だからせめて飢えることがないようにと、昼のパンだけは寄附していると教えてくれた。
「次の王と王妃に期待だわね。」
母は私にウィンクした。
そうか。私は王太子の婚約者。
次の王妃=私…
私は母に
「善処します。」
と伝えると微笑んだ。
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