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異世界 シャーシード国

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「あら。リンジェルド、急に大人になってしまったのに嬉しそうね。」
「はい。僕はその…目が覚めただけで嬉しいですので。」
「そうね。私達も、あなたと12年ぶりにお喋りできたこと、とても嬉しいわよ?」

母はそう言うと、私を抱きしめてくれた。

温かかった。
自然と涙が流れた。

顔を上げれば母も、それから父もエミリも涙を流していた。

暫く、私達は室内のみんなで泣いた。



エミリがお茶を淹れてくれ、みんなで一息つく。

それから、父がふと呟いた。
「しかし、リンジェルドは24歳。期限内に目覚めたということか。」

「そうですねぇ。」
母もしみじみと頷いた。

「ですが、リンジェルド様はそのせいで……」
エミリは慌てたように言う。

「何でしたっけ?」

私はまだ、自分の中での記憶が色々と混濁しており、自分が何故眠りにつくことになったのか記憶が繋がらなかった。

「あぁ、まだハッキリ思い出せないのね。かわいそうに。」

母は私の頭を撫でる。

「母様、恥ずかしいです。」
私が言えば、
「あら、ごめんなさい。つい懐かしくて。」
母は言う。

私は、マザコンだったのだろうか。

「リンジェルドは、この国の王太子の婚約者なんだよ。
この国では、公爵家から持ち回りで王族へ嫁ぐ者を差し出すことになっている。のだが……」

父は一度口を閉じると私を見て、それから続けた。

「リンジェルドは初等学園の卒業式後、城で女役の魔術を受ける最中に、魔力暴発が起きてしまったのだ。」

「!!」

私は目を見開く。

「幸いと言うのか何と言うのか、儀式に使っていた部屋の損傷は少なかったのでリンジェルドが魔力を放出し終えて気を失ってから儀式が続行し、リンジェルドの体は既に、男役のオスを体内に受ければ受胎できるようになっている。」

「それでね。貴方が眠りについてしまってから、国王の方から申し入れがあったの。
『24歳までに意識を取り戻せば、すぐに王太子と婚姻させる。だから、安心して養生するように。』と。」

「これも義務だから、これから国王へ報告せねばならない。」

父は言うなり目元を押えた。

「あの、王太子はそんなに酷い人なのですか?」

「あぁ、そういう訳では…ただ、一度王族へ嫁いだ者は、男児を出産しないことには城から出られないし、誰とも面会できないのだ。だから、だからな……お前との別れが辛くて。
すまないな、リンジェルド。」

父は私の肩を叩きながら、しばらく泣いていた。






何枚目かの壁を叩くと、そこに扉を見つけた。

開いて見れば、そこは廊下で………
全裸な僕は慌てて扉を閉めた。

次の壁を叩けば、そこも扉だった。
引けば、クローゼットだとわかる。
僕は、その中で服を物色しながら、男が部屋を出るまで潜伏することにした。


クローゼットの手前には王子らしい綺羅びやかな服が並ぶので、奥へ入ることにした。

思った通り、奥には少し小さく少し地味な服があった。

シンプルに、白のシャツと黒のスラックスを選んで身に纏うと、いろいろあったので心身共に疲れていたのか、衣装部屋が暖かかったのか、眠くなってしまった。

僕は、端に積まれた衣装の包みに紛れるようになりながら、眠ってしまった。






「今回の寄付は…あぁ、あれです。あの端に積んである。」

「わかりやした。それじゃ、コレは教会に運びやすんで。」


僕は、次に目覚める場所が衣装部屋ではなくなることを、まだ知らない。


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