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現代日本
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しおりを挟むだけど、リンジ先生の奥さんに恨まれていたとしても、先生の奥さんにこの白濁を用意することは難しい……となると、やっぱり生徒か教員か………
しかし、残念ながら僕には全く心当たりがないのだった。
翌日………
とりあえず僕は、家庭科室で翌日の授業の仕込みとして目立つ色の糸でパジャマを縫った後、教室へ向かっていた。
外を見れば、昨日と同じ時間という空の色だった。
棟を繋ぐ階段を上がり、僕は自分の教室へ向かう。
すると、やはり昨日と同じような、すすり泣きが聞こえて来た。
『えっ…ふっ………ひぃんっ………………』
けれど今日のは昨日に比べると、すすり泣きと言うよりもソッチの色が強い。
それから、僕の手ががドアに届く直前には、
『はぁんっ……ふっ…あんっヤ……あぁんっ……んんっぁああああーーーー!!!』
僕はまた走ってドアをガラリと開けると、電気を点けた。
けれどそこは無人で、僕の椅子には白濁の飛び散りと、明るい茶色の陰毛が1本残されていた。
僕は仕方がないので、また掃除をしてから教室を後にした。
そのまた翌日は卒業式の1週間前、自由登校の中の登校日だった。
とは言え、1年の調理も2年のミシンも授業はある。
家庭科部もある。
久し振りの盛り沢山な仕事内容に、今日という今日は、本当に疲れた最終下校時刻の18時半を迎えていた。
けれど、家庭科準備室の僕の作業机の片隅に常備している1口チョコを口に入れると、僕はリンジ先生の待つ、美術準備室へ向かった。
「「さようなら。」」
向かう途中で、大きなトートバッグを肩に掛けた集団とすれ違う。
「本当にチャリ鍵見つかって良かったね。」
「リンジ先生、あんな場所から見つけるなんて、スゴい。」
「普通見ないでしょ、カンバスのカート下なんて。」
「ね。」
通り過ぎた生徒達の会話が聞こえる。
今日の美術部はトラブルで終了時間が遅れたようだ。
僕は美術準備室へ向かいながら、僕の高校時代の記憶を辿っていた。
僕は、この学園に在学していた頃、美術部だった。
当時、この学園唯一の女性教員(のちのリンジ先生の奥さん)が美術の先生で、友人たちと一緒に美術部に入部したんだ。
けれど、その女性教員が産休に入ると、代行でやって来たのは《リンジ先生》だった。
リンジ先生は男にしては綺麗で中性的な顔つきをしているけれど、やはり男ではあるので体に凹凸はない。
その後の美術部員は、ゴッソリと幽霊部員と退部が増えて、気付けば部員は30人から3人に減っていた。
僕は…絵を描くのは好きだったから、居残ることにした。
高3の夏のある日、コンクールに出す課題を仕上げるために部活があった。
午後から開始した部活。
気付けば他2人はしっかり仕上げて、僕が気付いた時には既に下校していた。
夕方、これ以上は居残れない時間になった時、帰り支度をする僕は自分の自転車の鍵がないことに気付いた。
その時、リンジ先生は最後まで探すのに付き合ってくれたんだ。
そして見つけてくれたのが、大きなカンバスを運搬するカートの、キャスターのタイヤの裏側。
たぶん、さっきの彼の自転車の鍵も、そこにあったのだろう。
「コレかい?」
言った先生のフニャッとした笑顔に、こめかみを流れる汗や、汗で貼り付くYシャツ…ちょっとセクシーだなって思ったの、今思い出した。
当時は最終下校時刻の1時間前にエアコンが切れる設定になっていた。
3階の、上には屋上しかない美術室はあっという間に暑くなったんだ。
だから僕もリンジ先生も汗だくで…
──あれ? 他にも何かあったような……
そうだった。
「見つけてくださって、ありがとうございます。」
僕が頭を下げると、暑さもあって少しクラリとした。
「危ない!」
倒れ掛けた僕をリンジ先生が支えてくれた……けど2人で美術室の床に倒れ込んで、気がつくと僕はリンジ先生の上に、抱きしめられるみたいに乗ってしまったんだ。
「ごめんなさい。」
僕は慌てて先生の上から退くと、カバンを持って走って逃げた。
そのまま引退してしまい、僕はそのことを今の今まですっっっかり忘れていたのだった。
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