お嬢様の身代わり役

325号室の住人

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カーテンコール(番外編) BL要素薄め

  ハイド 後の5

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「イードォォ!!」
「ぁああ…んっ」
「まだか…」
「まだまだです。イききれません。」
「ハァハァハァ……」

あれから、何度果てただろうか。
私がいくら果てようとも、作り変わったカラダのせいか、何故かイードは絶頂を迎えなくなった。

いつもなら、イードは私の精を3回も受ければ眠ってしまう。
なのに、受胎してからというもの、何度シてもバテない。

それどころか……

「イード…休憩させてくれないだろうか。」
「えー! ダメですよぉ! さっき休憩したばかりではないですか!!」
「しかし…イードだって少し眠らなければ、母体がバテてしまうのではないか? それに、卵だって吸収し消化する時間があった方が……」
「そうでしょうか。」
「それに! 私はそろそろ肉を喰いたいのだが。こう、霞ばかりでは食べた気が全くしない。」
「まぁ、確かに……わかりました。少し待っていてください。」

イードは肩にガウンを引っ掛けると、軽い足取りで部屋の隅に近付く。
何やら壁に手のひらを当てているのを確認したところまでで、私の意識は夢の世界へと旅立った。






受胎からこちら、僕は淫乱になってしまった。
…というより、胎の中からの、もっともっとという渇望が酷い。
最近、ハイド様はお痩せになったような気がする。
もしかして、昆虫みたいに胎に卵のいるメスがオスを食べて栄養にしてしまったりして……

とにかく、ハイド様にお肉!

僕はその部屋を出ると、長い廊下を歩きながらエイドを探す。
すると、首の後ろで無造作に縛った腰までの月光色の髪に、碧の瞳という色合いの若い男が、釣り糸を垂れていた。
僕が近付けばこちらに気付いて、子どもみたいに駆け寄ってきた。
そして抱きついてくる。

母様かあさま! やっぱり、いくつ産んでも美しいままですね。」

耳元に聞こえる声は、心做しかエイドの面影もあり…

──やっぱり、成人を迎えたボクでは、母様にはわかってもらえない? でも今なら…

「あの! 母様…ボクは母様を……」

その時、月光色の鱗に腹に近付くにつれて碧いグラデーションの大きな龍が男と僕との間に入り、僕を背に乗せたまま建物の中へと滑るように入る。

流れるように廊下を進み、そうしてやって来たのはいつもの寝室。
龍の背に乗っていたはずの僕は、気付けばハイド様を見上げていた。

──怒っている?

「なぜ、私の前から消えてしまおうとするのだ?」
「え?」
「なぜ、アイツの手を取ろうとするのだ?」
「アイツ?」
「アレはエイ…名前を言ってやるのも嫌だ。また私のイードを拐いに来て……」
「まさか!」
「たぶん、ここは地上と時間の流れが違うのだろう。
…………やっぱり、イードは若い男がいいのか?」

いろいろと話されて、頭の中はぐるぐるとしている。
けれど目の前のハイド様が悲しそうな表情でこちらを見ている。

僕は両手を伸ばすと、ハイド様の両頬をつまんで横に引っ張ってやった。

「ハイド様は僕を信じてくださらないのですか? 僕にはハイド様だけですのに。」

ハイド様は泣きそうながらも口角を上げながら、僕に顔を近付け、優しいキスが落とされる。
離れれば僕からキスをし、そしてまたハイド様からのキスとなる。
それが徐々に深くなり、けれど体には触れてくださらない。

ハイド様は僕を抱きしめると、

「やはり、一緒に少し眠ろう。イードは何処にもいかないで…」

次の瞬間には、僕の耳元に響くのは穏やかな寝息となった。
僕もつられるみたいに瞼が重くなった。


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