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カーテンコール(番外編) BL要素薄め
前々王の王女だった女
しおりを挟むわたくしは、とある国の王女。
8歳で隣国の第2王子との婚約が決まった。
彼は、国では《面倒くさいことを言うお荷物王子》との噂のある子だったと後で聞かされた。
でも、わたくしは彼を信じてしまった。
──政略結婚でも、仲の良い夫婦で居たいわ。
そんな小さな願いを叶えるために彼に何度も会いに行った、その5回目に聞いた話が、わたくしが彼を信じさせてしまったの。
「そんな! お父様の国が?」
「そうです。信じられないと思うのですが、貴女のお好きな物語の中の世界なのですよ。」
「そんな…」
「では、1つ予言めいたことを言いましょうか。
貴女のお父上は、明後日1人の下卑た笑みをした女を城へ召し上げます。
しかし、その女の言い分は穴だらけ。貴女の弟だと言って抱いている赤子には貴女と血の繋がりは一切ありません。」
「何ですって!」
でも、その予言は当たってしまう。
国の王であるお父様が、本当に嫌な笑い方をする女を、側妃だと言って連れてきたのだ。
けれど、私には王子である弟が既に居るわ。
基本的に面倒くさがりだけど、優秀な弟だもの。きっと大丈夫。
「お父上が身罷られる時に、事実は捻じ曲げられ、謀反人として断頭台に立ちます。
だから、あの血の繋がらない男が貴女の国の王となるのですよ。」
「は? あの子が首を? そんな…」
「きっと、今この世界を牛耳る黒幕にとって邪魔だったのでしょうね。
だって彼は私と同じ転生者。物語が正されてしまうと思われたのでしょう。」
「転生者?」
「そうです。それでは今晩、『弟にお話を聞かせてあげて』と強請ってみてください。彼は、黒髪黒目の聖女の話をするでしょう。それは、以前の私が暮らしていた世界のおとぎ話であり、貴女の国が舞台の物語ですよ。」
その予言は当たった。
確かに、黒髪黒目の聖女がその国の王と恋に落ち、めでたしめでたしとなるお話を、弟に聞かせていた。
ちなみにその聖女と国王が立派に国を治め、国はとても繁栄すると弟は話していた。
それじゃ、やっぱりこの国は滅亡なんてしないんじゃ?
「いいえ。その世界は、そのおとぎ話の設定を利用したラノベです。
ちなみに、貴女の末の弟さんの息子さんは、将来的に殺人鬼になりますよ。」
「何ですって!」
「かのおとぎ話は、その代のお話なのです。国王になって、黒髪黒目の聖女と恋仲になって幸せに国を治めるはずの男が、恋仲になるはずの聖女に出会えなかったらという話です。」
「そんな…なんて不憫な! ハッピーエンドになる物語をわざわざ捻じ曲げるなんて…」
わたくしは、彼に抱き締められる。
「しかし私の国に来れば、貴女を守って差し上げられます。もう来月には、貴女は私の国にお嫁にいらっしゃいますからね。」
「しかし、祖国は祖国ですわ。」
「ならば、弟君に何とかしてもらいましょう。弟君が生きながらえられれば、きっと貴女の祖国は滅亡を免れられるのではないでしょうか。」
そうしてわたくしは、嫁ぐために隣国へ向かう前日、あの子に伝えたの。
彼は言ったわ。
「お父上も身罷られ、貴女の弟君も失われれば、血の繋がらない弟の手によって私の国との間で諍いが生まれ、戦争になります。」
「戦争?」
「はい。戦争は、どうしても嫌です。きっと貴女の弟君も、あちらの記憶があるなら、絶対に戦争はイヤなはずだ。」
「私の弟よ! わたくしの方があの子を知ってるわ!!」
「ならばいかがでしょう?」
「えぇ。きっと戦争なんて面倒くさい諍いは大嫌いだわ。」
「では、きちんと伝えてください。絞首刑になりたくなければ、国外追放されるように仕向け、我々の国へ来て欲しいということと、貴方の知っている話ではなく《ラノベ》だと。この際、戦争のこともお伝え頂いて構いません。」
「わかったわ。」
「それから、こちらの国では貴女の助けが必要です。」
そうしていろいろあって、わたくしとあの方はこちらの国で国王と王妃になった。
それからは、あの子も無事にやって来たし、きっとあの国の滅亡も阻止されたと信じているわ。
だから、まさかそんなことがと、あの報告には自分の耳を疑ったの。
「は? 今、何て?」
「だから、黒髪黒目の聖女が、男だったのです。」
「そんな! それじゃ、将来の国王との恋なんて…」
「あぁ。だから、俺が動きます。姉上は…」
「もちろん! 子どもたちは手を離れたわ。わたくしも協力致します。」
すると、そこへ新たな人物が…
「リアルBLが見られるの? 絶対に行くわ! ねぇ叔父様、私も連れて行って!!」
父親の血の他にも体質も受け継いだ、前世の記憶を持つ、わたくしの末の娘です。
そうして、わたくしたちはあの家の侍女として潜入に成功したのでした。
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