お嬢様の身代わり役

325号室の住人

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カーテンコール(番外編) BL要素薄め

  ハイド 後の1

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「私がこの国の未来の1つを知ったのは、成人の祝いの前日。シドの父親である伯父が、歓迎の宴席で俺とシドを前に口が軽くなった時だ。
その時に、イードのことも聞いて、それで気になって、父上に調べていただいたんだ。」

その晩もイードを美味しくいただいた後、2人で王宮の風呂に浸かっていた時に、イードに訊ねられた。

『僕は、平民になってすぐに、ハイド様のお名前で公爵家に呼ばれました。
僕のことを、どこで知ったのですか?』と。

──私の返事は、イードの求めるものだったろうか。



「そうなのですね。ならば、僕が男の子で驚いたのじゃありませんか?」
「あぁそうだな。しかし、今の私はお前を愛しているよ。性別は関係ない。」

私が抱きしめれば、イードは私に身を預ける。
となれば、顎を掬って唇を合わせる。
触れるだけで離れれば、まるで《もう終わりなのですか?》というような視線を私に向ける。

ソレに、私ごときが抗える理由などない。

私はまたイードの唇を貪り、そのまままた抱き上げて、寝椅子や風呂の縁でイードを哭かせにかかる。

この時に注意することは、イードをのぼせさせないこと。

先日は浴槽でイードを抱き潰してのぼせさせ、各方面からすごく怒られた。

あの日は翌日に式典でバルコニーに立つ日だった。
肩が少し見えるデザインの決まった衣裳があったのに、私のキスマークが激しすぎて着られなくなったと。

でも、イードの肌を他人に見せるのは我慢ならない。
イードは、私のイードなのだから。






あれから3戦ののち朝風呂の時間が終わり、朝食の時間。

王家の慣わしで、朝食だけは家族揃って一緒に食べている。
本当はイードを膝に乗せて、手ずから…いや、口移しで、食べさせたいのだが仕方がない。

席に着くと、次に入ってきたのは息子たちだった。
1番上は今年で8歳、その次が6歳、5歳は双子、皆男子であり、王家の色も持っている。

それから、よたよたとした歩き方のイードが顔を見せ、息子たちはそちらへ駆けて行く。
イードの手を引き体を支え、椅子まで送れば……
長男が私をじっと見つめる。

まるで、批判しているように…



朝食後、長男は私のところへやって来た。
あまり時間はなく、執務室まで歩きながら話すことにした。

すると奴は、私の左手を取った。
突如、頭の中に声が響く。

──他の従者に聞かせる話でもありませんから…

きょろきょろと辺りを見回し、最後に左手の先を見れば、長男がこちらをじっと見ていた。

──物珍しいですか? この世界の魔法はついえたのでしたね。

私はコクリと頷いた。

──かあ様のことです。あまり抱き潰さないであげて欲しいのです。ボクならもっと優しくお相手します。

私は何も返さず、視線だけを向けた。

──とう様もわかっていらっしゃるでしょう? 我々兄弟は、母様と血の繋がりがない。つまり、父様から母様を奪うことができるのですよ。

「では。」

長男は私の左手を解放し、軽く会釈をすると行ってしまった。

その日は仕事が終わるまで、イードを盗られてしまうような落ち着かない気持ちのまま過ごすことになるのだった。


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