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本編
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しおりを挟む「……んっ」
肌寒さに目が覚める。
全開にした窓の外は茜色に染まっている。
僕は全裸をシーツに包まれて、ハイド様の腕の中に居た。
右耳に違和感があり、指を伸ばすと石に台座だけのピアスが付いていた。
身動げば、僕を膝に乗せていたハイド様は服を着たままで…
それは、僕とハイド様が最後まではシていない証明になっている。
少し残念な気持ちののち少し安心したものの、ハイド様の服の臭いに愕然とする。
生臭さとところどころ白く固まったソレはまさしく……
──弁償!
慌ててハイド様から降りると、
「起きたのか?」
声が掛かる。
「あの! 申し訳ありません、服…僕の、僕の白い…」
「鍛錬用のボロだ。気にするな。」
「でも…弁しょ」
すると、ハイド様の腕にふわりと包まれ、膝に戻された。
「ならば、詫びにこれからお前の全部を貰おうか?」
「!!」
「そんな顔をして…」
──そんな顔? どんな顔だ?
僕は、自分の手で頬をつねってみた。そこで気付いたこともあった。
「あ、シーツがありません!」
「シーツ?」
「僕は、ハイド様のシーツを回収に来ましたから。」
「そうか。ならばもっとかわいがってやらねば。」
立ち上がるハイド様に、シーツごと抱き上げられる。
「え…ちょっ……降ろしてください!」
「ふふっ冗談だ。夕食に私が現れなければ大変なことになる。」
ハイド様は僕を解放してくれた。
椅子の横に落ちていた服を拾い集めて身に付けると、
「ふふっ…かわいかったぞ。次はもっと啼かせてみたい。」
「そんな!」
「ハハハ…時間が許すなら、次こそは……」
ハイド様の指が優しく僕の頬を撫でる。
別れの挨拶にと、唇同士触れ合わせた。
僕はもろもろ思い出してしまって顔が熱くなり、一礼すると走って使用人棟の自分の部屋に戻った。
扉を閉めて、そのまま凭れる。
恥ずかしさに顔を被うと、脳裏に蘇るのはハイド様から享受されたアレやコレだ。
──気持ち、良かったな…
頭の中に蘇るのは、ハイド様からのキスや舌先の。
自分の手指が胸に伸び…でも頭を振って、その欲を追い出す。
──思い出すのは、お一人様プレイではなくハイド様の舌の感触が良いから。
僕はどうやら、そのまま自室で眠ってしまったみたいだった。
次に目が覚めたのは、たぶん深夜だった。
自分の身体を押さえ付けるように、何かの重石が乗っているみたいだった。
ただの重石と違うのは、ソレには手が生えていて、僕の切っ先の先の先に触れていたから。
触り方はハイド様のとは全く違って、全然気持ち良くないどころか痛くて、ゾクゾクとした快楽の始まりではなく、ゾワゾワとした恐怖しかなかった。
「…だれ?」
声を掛けてみた。
「まさか、お前がこっち側の人間だったなんてな!」
声を荒げ過ぎた、掠れた声が言った。
「こっち側…?」
「そう。お前が、まさかハイド様と抱き合っているなんて! お前に目を付けたのは俺のが先だったのに。まさか平民のお前をハイド様が…優しく仕事を教えて懐かせてから美味しくハジメテをいただこうと思っていたのに…ハァッ!」
今度はブツブツと呟くような声になった。
そういう喋り方なら、声の主に心当たりができた。
「マルコ…さん?」
「流石にバレたか。そうだよ。」
マルコさんは、ピィッと指笛を吹いた。
すると、真っ暗な室内へドカドカと複数の足音が聞こえ、あっと言う間に手足を拘束され、シャツはボタンが飛び、ズボンは寛げられた腰から切っ先を引っ張り出された。
「この状況分かってるか? お前、これから俺たちに回されるんだぜ? かわいそうにな。ハハハ…」
途端に複数の手が僕に触れた。
ハイド様に触れられた切っ先も、舌で転がされた胸の尖りも、乱暴に抓まれ、引っ張られ、爪を立てられた。
「ホラ、啼けよ! 昼間はアンアン言ってただろ?」
痛みで涙が滲むけれど、歯を食いしばって意地でも声は出さない。
けれどそれに腹を立てたのか、1つの手に頬を叩かれた。
それでも僕は泣かなかった。
その時……
ドドドドン!
ノックと言うには荒っぽい音が響き、複数の手が僕から離れた。
その瞬間、僕を囲む人間を振り払って、僕は窓から飛び出した。
自分の部屋が1階だったことに感謝しながら、僕は建物を背に走り続けた。
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