お嬢様の身代わり役

325号室の住人

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本編

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「アリス…アリス、なのか? まさか本当に…ボクのためにこんなことになってしまうなんて…ごめん。ごめんよぉ~…
うわぁ~~~~~ん、え~~~~~ん……」

ベッドサイドの丸椅子に座り、僕の目の前でアニメばりに子どもみたいに泣いているのは、この国の王子であり王太子の地位も持っている成人男性だ。
けっして嘘泣きではないし。声だけじゃないし、ちゃんと涙も出てるし鼻水も出てる。

「あらあら…」

キャルルは王子に布を手渡す。
──…ってそれ、壺の中から出してないか?

「すまない。」

王子は、キャルルに礼を言って受け取ると、カギカッコ型に黒い跡がついた面をこちらに見せながら涙を拭い、鼻もかむとキャルルに手渡し、キャルルはそれを2本指で摘むと壺の中にポイッと投げ込んだ。

──あの壺の中はもう触らないぞ!

「はぁ~~~~~~…」

王子は大きく息を吐くと勢いよく立ち上がった。

「また来るね。」

目元と鼻を赤く染めた顔でへろっと笑うと、そのまま回れ右して部屋から出て行った。
キャルルは慌てて追い掛ける。

お嬢様の婚約者は、確かにお嬢様本人やハイド様とは合わなそうな感じの奴だった。
キャルルはすぐに戻ってくるだろうと特に施錠もせず、僕は緊張から解放されて、少しだけうとうとしてしまった。

微睡みの中、扉の開閉音を聞いたような気がした。






「……アリス…眠っているのかい?」

誰かの声がする。

──これは夢なのか…?

「眠っているなら良いんだ。しかし…このままでは君は…」

スルリ…

何かが掛け布の中へ入ってきた。

モゾリ…

大きな手だった。
掛け布の中で、僕の手を握る。

僕はこの手を知っている。

触れた時に少しひんやりとした大きな手はゴツゴツとしており、どうやら剣を握る男の手のようだった。

その手が、ゆっくりとした動きで僕の腕をマッサージする。

だんだんと進んで肘まで来た大きな手は、そのまま肩まで上るのかと思いきや、指の関節が僕の脇腹に触れた。

ピクッ

反射で肩を揺らしてしまったけれど、手のひらはものともせずに、腕から脇腹へと上陸し、寝間着の上から臍を撫でた。

「…ん!」

僕の声に、手のひらの動きが止まる。

「目が覚めたのか?」
 
扉に近い右耳へ囁かれる時に、息が掛かってくすぐったい。

「憶えているかい? 子どもの時、アリスがお腹が痛い時には、よくこうしてマッサージしたろう?」

掛け布の中ですっかり温まっまた手のひらが、臍の周りをゆっくりと、くるくると撫でる。
親指の先が僅かに胸を掠めるので、なんだか胸の先が痒いような感じになる。

「早く元気になっておくれ。」

言葉の後、右耳へ唇が触れた。
触れるだけのやさしいキスのようだ。

「愛しているよ、我が妹。」
チュッ

今度は右頬へのキスが、だんだんと唇へ移動しながら移動してないか?

気付けば臍を周回していた手のひらは、股間へ向かってゆっくりと移動していた、

「あうっ…」

僕の声に反応するように、大きな熱い手のひらが僕の切っ先を柔らかく掴む。

「ん!」

柔らかい唇は僕の唇に到達し、舌先でチロチロとノックしてくる。

切っ先から根元へと、手のひらは大きく動いた。

「ア…」

声を発した瞬間に侵入した舌が、僕の舌に絡む。
快楽が頭を支配し始める。

その頃にはもう気付いていた。
これは夢ではない。ハイド様に襲われている…と。

──お嬢様のベッドなのに、イッてしまう…

その瞬間だった。
全てが動きを止め、僕から離れて行った。

直後、右の耳たぶがチリリと痛んだ。

「待ってる…」

右耳へ囁かれたすぐ後、控えめに扉の閉まる音が聞こえた。

切っ先からチョロと何かが漏れた感覚があり…慌ててトイレに駆け込んだのは、言うまでもない。


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