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しおりを挟む気付くとフレイオは、不思議な空間に居た。
何故か薄青の水の中に居るが、不思議と呼吸は普通にできる。
上から陽の光がキラキラと揺らめいて、とても綺麗だった。
見上げていると、ふと視線を感じて視線をやれば、そこには水の中だと言うのに銀髪を腰までストンと落とした、ズルズルと引きずるような白っぽい服の華奢な男が佇んでいた。
『フレイオ…フレイオ…』
──誰ですか? 僕を呼ぶのは……
『私だ…私だよ、フレイオ。』
声がしたのは、銀髪の男からだった。
歩いた感じもなく、その男は滑るようにフレイオに近付いてくる。
それからフレイオの頬に手を当てた。
『ずっと待っていたよ。私がこの剣に封印されてから、君は何度か生まれ変わっている。
けれど、私はダンジョンの地下、フレイオは地上の国の姫、出会うことはなかった。』
──僕を知っているの?
『君に記憶はないのか。でも思い出す。その体は憶えているはずだよ。』
──え……
フレイオは銀髪の男にキスをされた。
不思議とイヤではない。
『思い出して、フレイオ。私の名前は………………』
フレイオはそこで目が覚めた。
コンコンコン
ノックの音がしたからだ。
返事をする前に体を起こして、身支度を整えた。
コンコンコン
ノックの音と共に、先程の黒髪の男性が入ってきた。
学園から帰宅したままの制服姿ではなく、上から3つ目までボタンを外したシャツの袖を雑に捲り、下はトラウザーズよりもラフなズボンを穿いており、こちらの裾も少し捲くっている。
「先程は名乗りもせずすまない。俺は、ライド・アルタリス。父は騎士団長だ。」
「なるほど。体が大きくて羨ましい。宜しくお願い致します。」
「君の部屋の準備ができた。案内する。」
フレイオは部屋を出て、ライドについて歩いた。
…が、終点は意外と近かった。
同じ廊下を、反対側の端まで歩いただけだったからだ。
「ここだ。さぁ、入って。」
開いた扉をおさえてくれているライドに礼を言ってからフレイオが入室すると、部屋の中央にソファセットのある部屋だった。
ガチャリ
背後で施錠音がすると、扉を背にライドがこちらを見た。
「申し訳ない。今のところは俺はまだこの家の息子だ。父であれ、当主には逆らえなくて。
少し話したい。掛けてくれるか?」
ライドは言ってソファに掛けると対面のソファをフレイオは掛ける。
魔法のように…いや、魔法だな。座ると同時にミニテーブルに茶菓子とティーセットが現れた。
ライドはティーコゼーを外すとティーカップにお茶を注いでフレイオの方へ置き、
「こっちはお好みでどうぞ。」
シュガーポットとミルクジャーもフレイオの近くにくれた。
同じように自分の前にもティーカップを置く。
「アチッ」
ライドは最初の一口を飲むと、声と共に小さく舌がはみ出した。
それが大きな体躯とミスマッチで、
「フフ…」
フレイオは声に出して少し笑った後、不敬に気付いて両手で口を押さえてライドに頭を下げた。
ライドは真っ赤になって
「構わない。猫舌なんだ。」
と、また小さく舌を出して見せた。
ドクンッ
ライドのその仕草を見ると、フレイオの胸が撥ねた。
目の前のライドが、知っている誰かに重なったような気がした。
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