【完結】しがない男爵令息だった僕が、ひょんなことから辺境最強の騎士と最強の剣の精霊から求愛されている件について B-side

325号室の住人

文字の大きさ
上 下
4 / 7

  4

しおりを挟む

気付くとフレイオは、不思議な空間に居た。

何故か薄青の水の中に居るが、不思議と呼吸は普通にできる。
上から陽の光がキラキラと揺らめいて、とても綺麗だった。

見上げていると、ふと視線を感じて視線をやれば、そこには水の中だと言うのに銀髪を腰までストンと落とした、ズルズルと引きずるような白っぽい服の華奢な男が佇んでいた。

『フレイオ…フレイオ…』

──誰ですか? 僕を呼ぶのは……

『私だ…私だよ、フレイオ。』

声がしたのは、銀髪の男からだった。
歩いた感じもなく、その男は滑るようにフレイオに近付いてくる。

それからフレイオの頬に手を当てた。

『ずっと待っていたよ。私がこの剣に封印されてから、君は何度か生まれ変わっている。
けれど、私はダンジョンの地下、フレイオは地上の国の姫、出会うことはなかった。』

──僕を知っているの?

『君に記憶はないのか。でも思い出す。その体は憶えているはずだよ。』
──え……

フレイオは銀髪の男にキスをされた。
不思議とイヤではない。

『思い出して、フレイオ。私の名前は………………』



フレイオはそこで目が覚めた。

コンコンコン

ノックの音がしたからだ。
返事をする前に体を起こして、身支度を整えた。

コンコンコン
ノックの音と共に、先程の黒髪の男性が入ってきた。

学園から帰宅したままの制服姿ではなく、上から3つ目までボタンを外したシャツの袖を雑に捲り、下はトラウザーズよりもラフなズボンを穿いており、こちらの裾も少し捲くっている。

「先程は名乗りもせずすまない。俺は、ライド・アルタリス。父は騎士団長だ。」
「なるほど。体が大きくて羨ましい。宜しくお願い致します。」
「君の部屋の準備ができた。案内する。」

フレイオは部屋を出て、ライドについて歩いた。
…が、終点は意外と近かった。

同じ廊下を、反対側の端まで歩いただけだったからだ。

「ここだ。さぁ、入って。」

開いた扉をおさえてくれているライドに礼を言ってからフレイオが入室すると、部屋の中央にソファセットのある部屋だった。

ガチャリ

背後で施錠音がすると、扉を背にライドがこちらを見た。

「申し訳ない。今のところは俺はまだこの家の息子だ。父であれ、当主には逆らえなくて。
少し話したい。掛けてくれるか?」

ライドは言ってソファに掛けると対面のソファをフレイオは掛ける。

魔法のように…いや、魔法だな。座ると同時にミニテーブルに茶菓子とティーセットが現れた。

ライドはティーコゼーを外すとティーカップにお茶を注いでフレイオの方へ置き、

「こっちはお好みでどうぞ。」

シュガーポットとミルクジャーもフレイオの近くにくれた。
同じように自分の前にもティーカップを置く。

「アチッ」

ライドは最初の一口を飲むと、声と共に小さく舌がはみ出した。

それが大きな体躯とミスマッチで、

「フフ…」

フレイオは声に出して少し笑った後、不敬に気付いて両手で口を押さえてライドに頭を下げた。

ライドは真っ赤になって
「構わない。猫舌なんだ。」
と、また小さく舌を出して見せた。

ドクンッ

ライドのその仕草を見ると、フレイオの胸が撥ねた。

目の前のライドが、知っている誰かに重なったような気がした。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

仮面の兵士と出来損ない王子

天使の輪っか
BL
姫として隣国へ嫁ぐことになった出来損ないの王子。 王子には、仮面をつけた兵士が護衛を務めていた。兵士は自ら志願して王子の護衛をしていたが、それにはある理由があった。 王子は姫として男だとばれぬように振舞うことにしようと決心した。 美しい見た目を最大限に使い結婚式に挑むが、相手の姿を見て驚愕する。

完結·助けた犬は騎士団長でした

BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。 ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。 しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。 強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ…… ※完結まで毎日投稿します

当て馬系ヤンデレキャラになったら、思ったよりもツラかった件。

マツヲ。
BL
ふと気がつけば自分が知るBLゲームのなかの、当て馬系ヤンデレキャラになっていた。 いつでもポーカーフェイスのそのキャラクターを俺は嫌っていたはずなのに、その無表情の下にはこんなにも苦しい思いが隠されていたなんて……。 こういうはじまりの、ゲームのその後の世界で、手探り状態のまま徐々に受けとしての才能を開花させていく主人公のお話が読みたいな、という気持ちで書いたものです。 続編、ゆっくりとですが連載開始します。 「当て馬系ヤンデレキャラからの脱却を図ったら、スピンオフに突入していた件。」(https://www.alphapolis.co.jp/novel/239008972/578503599)

恐怖症な王子は異世界から来た時雨に癒やされる

琴葉悠
BL
十六夜時雨は諸事情から橋の上から転落し、川に落ちた。 落ちた川から上がると見知らぬ場所にいて、そこで異世界に来た事を知らされる。 異世界人は良き知らせをもたらす事から王族が庇護する役割を担っており、時雨は庇護されることに。 そこで、検査すると、時雨はDomというダイナミクスの性の一つを持っていて──

《うちの子》推し会!〜いらない子の悪役令息はラスボスになる前に消えます〜お月見編

日色
BL
明日から始まる企画だそうで、ぜひとも参加したい!と思ったものの…。ツイッターをやっておらず参加の仕方がわからないので、とりあえずこちらに。すみませんm(_ _)m

【旧作】美貌の冒険者は、憧れの騎士の側にいたい

市川パナ
BL
優美な憧れの騎士のようになりたい。けれどいつも魔法が暴走してしまう。 魔法を制御する銀のペンダントを着けてもらったけれど、それでもコントロールできない。 そんな日々の中、勇者と名乗る少年が現れて――。 不器用な美貌の冒険者と、麗しい騎士から始まるお話。 旧タイトル「銀色ペンダントを離さない」です。 第3話から急展開していきます。

歳上公爵さまは、子供っぽい僕には興味がないようです

チョロケロ
BL
《公爵×男爵令息》 歳上の公爵様に求婚されたセルビット。最初はおじさんだから嫌だと思っていたのだが、公爵の優しさに段々心を開いてゆく。無事結婚をして、初夜を迎えることになった。だが、そこで公爵は驚くべき行動にでたのだった。   ほのぼのです。よろしくお願いします。 ※ムーンライトノベルズ様でも投稿しています。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。

処理中です...