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婚姻式前日、昼から午後

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「んー…」

いつもと同じ時間に目が覚めたのに、いつもよりお陽様が高い位置にあった。
隣で寝かせてたハズのマークの姿は既にない。
ちょっと寂しかったけど、本来は婚姻するまで年頃の男女が同じ寝台に寝たらダメだもの。きっと先に出たんだわ。仕方ないわよね。

身支度をして部屋を出る。
食事室へ向かうと、兄達がランチの真っ只中だった。

「よぉ、ミーナ! 体調はどうなんだ?」
「おはよう、ミーナ。ミーナが僕だけの妹なのも、今日で最後だなんて、感慨深いよ。」
「おはよう。シー兄さま、リー兄さまも。」

頭脳派のシー兄さまは肉と野菜が山盛り、肉体派のリー兄さまは魚とフルーツが山盛り。
私はいつも見るだけでお腹いっぱいになってしまうので、時間をずらしていたんだけど…そうか、この時間だったのね。とは言えシー兄さまの言った通り、私が2人にとってただの妹で居られるのも今日までだから、2人の食べっぷりを見納めることにした。

「そういえばミーナ。僕は今日、朝の鍛錬の前にミーナの部屋からマークが出てくるところを見たよ。」
「は? ミーナと奴はまだ婚姻前だろうが! 許せねえ!」

リー兄さまは怒った様子で立ち上がり、立て掛けてあった剣を手に取る。

「マークはただ、心配して私についててくれただけよ。」
「だが!」
「リー兄ぃ!」

私は、リー兄さまと相撲でも取るみたいにガッツリと動きを止め…

「ミーナ…」

逆にしっかりと抱き締められてしまった。

「な…ちょっ…リーに…」
「あぁ…ミーナが《リー兄》なんて何年ぶりだろう。」
「んもう! 今日だけだからね!」
「わかったよぉぅ。オレのミーナぁ…」

少し鬱陶しい感じはあったけれど、今日で最後と思えばまぁいいか…と。

「兄さんばかりズルいです。僕も。」
「シー兄…きつい…」
「あぁ…やっぱり恋人なんかより兄妹が正解だった。」
「ん? シー兄さま、何て?」
「あぁ、こちらの話だ。それよりも、ぎゅー!!」
「ずるいぞ! オレもだ!」

そんなこんなで、兄妹水入らずの楽しいランチタイムとなった。






マークが訪ねてきたのは、その後、丁度お茶の時間だった。

婚姻式の会場である神殿へは、新郎新婦どちらも実家から向かうのが《しきたり》である。
だから婚姻式前日の日暮れ以降、マークとは神殿まで会えないため、今が婚姻前に最後に会えるタイミングとなる。

屋敷の中は兄達の目があるので、庭の四阿を選んでお茶にすることにした。

「お待たせ~!」

私の体調を心配しての訪問だと思ったので、できるだけ元気良くマークの前に跳んで出た。
すると、なぜかマークの目の下には濃い隈ができている。

「マーク、どうしたの?それ。」
「ん?」

──どうしよう…アンニュイなマークも色っぽくてステキだわ…

「いいえ!それよりも…」
「ん?」
「マーク!花婿がそんな顔してたら、私たちの不仲を疑われるわ。今からちょっとでも寝て!
ほら、私はもうこれだけピンピンしてる。もう何も心配はないのよ!」

私はマークの前で力こぶを作って見せる。
──あれれ? あんまり太さが変わってないかしら。

「ぷくくくっ…もうダメだ。アッハハハハ…」

マークに大笑いされた。
どうしてかしら。


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