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離・婚前旅行 7日目の夕刻は自主的にお茶会

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バルトル様は徐ろに足を馬車へと踏み出され、その拍子に足に縋っていた伯爵様の体が、半回転、半回転、そしてまた半回転。

「伯爵、申し訳ないが今日はこのまま帰らせて頂く!」

「えぇー!! バルトル様はワタクシ達とお茶会でしょう? 楽しみにしておりましたのよ?」
「そうよ! どうせ怒らせたのはお父様なのでしょう?」
「バルトル様ぁ、わたくしバルトル様とは学園で同級でしてよ? お久しゅうございますわ。」
「わたし、バルトル様の瞳の色のドレスを選びましたの!」
「バルトル様が殿下やシュレイザー様と一緒にお茶菓子にしていらしたもの、実は我が領地の特産なのです。」
「朝から我が家のシェフと一緒に用意いたしましたのよ! 是非味を見ていただきたいわ。」

すると、今度はバルトル様が無言で回転を始めました。1回転、2回転、3回転…

「「「きゃあぁぁァァーーー!!!」」」

今度は振りほどかれたご令嬢方が、スカートを膨らませながら同様に回転を始め…

「ぶへっ!」
「ふがっ!」
「べふっ!」

丁度お父上の上に順に重なり、静かになられました。

それからバルトル様はリリサに支えてもらっている私のところまでやってくると私に右手を差し出し、

「さぁエリサ。今日この後の予定はキャンセルだ。宿に戻ろう。」

私は、バルトル様の背後の4段重ねのお尻に視線がついつい移ってしまいます。

「邸の方へ、事情説明をした方が宜しいのでは?」
「いや必要ない。」
「ですが…」

私の表情に、バルトル様は1つ溜め息をこぼされました。

「わかった。俺が様子を見てくる。」

仕方なさそうにバルトル様が私から離れた時でした。

「きゃん!」

私は気付いたら地面に手を付いていました。
すると、背後から声がしました。

「あらエリサさん、まだいらしたの? 我が家のかわいいお姫様たちはどこかしら…………あ、あ、あ……」

後半は、バルトル様の睨みに気付いたからです。
キャセリーヌ様はバルトル様とは面識がなかったのでしょうか。
ご紹介した方が宜しいかしら?

バルトル様は4つの重なりから走ってこちらへ戻られると、私を抱き上げられました。 

そしてそのまま侯爵家で手配した馬車へ向かわれると、自分も乗り込み扉は閉められ…

「ひゃっ!」
「お待ち下さい! バルトル様!!」
「ぅあっ!」

伯爵が扉にその肉厚な体躯を挟み込んできたのです。



バルトル様の機嫌は、横から見てわかるほど最悪でした。

「バルトル様、お顔がこわいですわ。」

私がバルトル様の眉間のシワを伸ばそうと触れると、バルトル様は私のその手を取って頬を寄せ、涙をポロリと。
本当に怪我をしてからこちら、とても涙もろくなってしまわれました。

「私に怪我はありませんわ。ご心配なさらないで。」
「エリサ……」
チュッ

バルトル様はそのまま私に啄むように口付け、それが深いものに代わると、

トサッ

伯爵様は馬車の扉に挟まりながら、バルトル様の返事を待っていらしたのでしょう。
そしてそのまま私達のキスを間近で見せ付けられて力が抜けてしまったようで、気付けば馬車のステップの辺りで気を失われていらしたようです。

「キャーーーーーーーーー!!」

その後に響き渡ったのは、キャセリーヌ様の悲鳴です。
どうやら、馬車の扉に挟まった夫が急に倒れたので、馬車の中で私達が何か危害を加えたと思ったようです。

それで急いで馬車へとやって来たのですが、どうやらその時私とバルトル様の濃厚なキスが視界に入ったようですね。

今度は無言で腰を抜かされてそのまま失神。
そこにレレキが徒歩で伯爵邸に戻ってきて、伯爵邸の使用人に前庭の有り様を伝えてくれたようでした。






私とバルトル様、リリサとレレキは、その時に伯爵邸の執事によりこのサロンに案内されました。

当主御一家が皆気を失っていても、バルトル様が上位のお客だということはわかったようで、とりあえず《当主夫妻が目を覚ますまで》サロンでお待ち下さいと。



そんなこんなで、私とバルトル様は伯爵邸の庭を一望できるサロンのソファで寛いでおります。

目の前には伯爵家及び伯爵邸の使用人達の姿は一切なく、扉の前にはレレキが、お茶は何故かリリサが淹れてくれて、私とバルトル様はまったりモードです。

「あらっ! このお菓子美味しいですね。」
「あぁ。これは俺も学園生時代にシュレイザーや殿下とよく食べた。この領地の特産であるナッツをふんだんに使っているのだ。
サルエルへの土産にと購入したものだが、エリサが好みなら工房ごと買い上げようか?」

バルトル様は笑顔です。

先程、馬車に伯爵が乗り上げて来た時には苦虫を噛み潰したようなお顔をされていらっしゃいましたが、それは私の身を案じてくださっていたからのようでした。


ですが、いつ目を覚まされるのでしょうか。
サロンの窓の外は、かなり陽が西へ傾き……

「日が暮れたら、宿へ帰ろう。」
「はい。」

結局、そのまま辺りが暗くなるまで放置され、私達は置き手紙を書いて伯爵邸を出ることにしました。

「「ふぅっ」」

馬車に乗り込むと、バルトル様と同時に溜め息を吐きました。
何だか疲れた1日となりました。


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