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離・婚前旅行 5日目の夜はゆったりと
しおりを挟むそれから、ダイニングにてルームサービスの温かい食事を戴きました…
いいえ。食べさせ食べさせられました。場所はバルトル様の膝の上です。私は椅子が良かったのですが、手を引かれたままの流れでストンッと。
その時にあの瞳を向けられ…諦めました。
それから入浴介助を─浴室まで私が入れば欲望が膨らんでしまうのだそうで、脱衣所で待ち構えて髪を拭く程度です─して、夜寝る前には背中に薬を塗って差し上げました。
ガーゼを剥がせば未だジュクジュクと何とも痛々しく、
「んっ!」
軟膏は塗り拡げるのではなく傷に乗せるようにたっぷりと。
「くっ!」
それから新しいガーゼで被い、包帯を巻きました。
「はぁんっ!」
「申し訳ありません、バルトル様。」
時々入る合いの手はバルトル様のもの。
今は、包帯を巻いている最中に私の指が誤ってバルトル様の胸を掠めてしまいました。
後ろから腕を伸ばし、でも背中に触れてしまえば傷の上でなくても傷に響きそうで、目一杯腕を伸ばして…
バルトル様の声に私の頬は熱いですが、見られてしまえば何か始まってしまいそうなので深呼吸をして、顔から熱を逃して誤魔化しました。
やっと巻き終わると、顔の熱は引きましたが体はひと仕事終えて汗をかいてしまいました。
「バルトル様、私汗をかきましたので入浴して参ります。バルトル様は先にお休みなさいませ。」
「また様呼びになってしまった? もう、名前では呼んでくれないのか?」
「あら、バルトル様。よそのご夫婦も、皆様お名前に様を付けて呼ばれる方が多いそうですわ。先月の《王妃様のお茶会》でもキャセリーヌ様が仰ってました。」
「キャセリーヌ様?」
「はい。この伯爵領の領主夫人ですわ。王妃様と同学年で、お子様が…お嬢様が3人いらっしゃいますの。
そういった御婦人は、半年に一度のお茶会取り仕切りの当番が回ってくるのですわ。
それで私のような未熟な者に、様々な御指南をいただくのです。」
──まぁ、お小言とも申しますが。
「領主の顔はまぁまぁ出てくるが、夫人までは記憶していないな。」
「そうなのですか? バルトル様やシュレイザー様と御学友であったお嬢様もいらっしゃると…」
「そうか? シュレイザーはともかく、俺はあまり興味がなかったからな。」
──同い年にあたる2番目のお嬢様は、バルトル様の婚約者候補に上がっていたとのキャセリーヌ様のお話でしたよ?
「そうでしたか。それでは私、湯浴みしてまいりますわ。バルトル様、冷えてまいりましたからお先に布団に入っていてくださいまし。」
1つお辞儀をすると、今回はあまり考え事をしないように上がって、直ぐに夜着を纏ってバルトル様の隣へ横になりました。
バルトル様はベッドサイドの小さな灯りの中ですやすやと寝息を立てられていました。
ランプの灯りのせいか目元が少し赤く見え…
私はバルトル様の目元に軽く口付けると、灯りを消して眠りにつきました。
深夜…髪を引かれるような感覚に目を覚ましました。
窓の外はまだ暗く、室内には枕元のサイドテーブルに消したはずの小さな灯りが1つあるのみ。
そこで私は、バルトル様の御手に髪を梳かれておりました。
「んあっ? バルトル様?」
咄嗟に上げてしまった声に、バルトル様が答えます。
「エリサ。君の髪は美しいのだから、濡れたまま眠ったらいけないよ。」
「…はいぃ。」
「君も、いろいろと疲れているだろう。髪は俺に任せて、君はまだ寝なさい。」
その言葉通り既にうとうとしていた私は、そのまま眠ってしまいました。
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