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しおりを挟む「何のことでしょうか、第2王子殿下。」
とりあえず、俺はすっとぼけた。
「君は、マレー子爵子息、ヒューバートだろう? 第1学年の。」
「……はい。」
「実は、君の落とし物を拾ったんだ。正確には、第1学年の女子の落とし物ではあるのだけどね。
落とし主を調べるために中をバラパラと捲って驚いたよ。
君は、私とメントとの仲を正確に知っているね。
ねぇ、いつから知っていたの?」
なんてこったい。
僕の立てた仮説が、目の前の男にとっては事実だったようだ。
「私は汚れている。もう、メントとは何度も関係を持たされ…
でももう嫌なんだ。メントと同じ紫色の髪を見る度に身体が勝手に疼くのも、メントとの関係も終わりにしたい。
だから、君みたいに全てを知っている人間は、排除したいんだよ。わかるよね?」
この王子、横暴じゃないかね?
「君という人物に興味が出た。けれど調べるうちにどうしてもわからなかった。君がいつ・どこで私の秘密を知ったのか。
だから、君の秘密を探ろうと、昨日君を見つけてすぐに後をつけ、ここを知ったと言う訳だ。」
自分からこんなに喋るなんてこいつバカか? それとも僕はもうこの世とオサラバするから、バラしても大丈夫…的な?
「ァあっ…君のその紫色の髪を見ていると、ムラムラしてくる…」
「この髪は茄子紺だ! 紫じゃないし!!」
「紫だろう?」
「紺だ! 青が強いんだ!!」
「紫だって。」
デリーは、身体に距離のあった壁ドンからゼロ距離に密着させてきた。
ほぼ同身長のデリーの股間の膨らみが、僕の股間に押し当てられる。
「ん……く!」
前世と今と合わせても、今のところ用を足す以外に使ったことのないいアレへの刺激で頬が熱いのが小っ恥ずかしく、顔を背ければデリーの唇が首筋を撫でた。
「ちょ!」
デリーの胸を叩く。
身体は離れないけれど、首筋への攻撃は止まった。
正面から睨み付けると、奴はあろうことが顔を近付けてきて…
僕は膝が抜けてしまった。
そのまましゃがみ込んだんだ。
すると、デリーが更に身体を密着させようとしたのが同時だった。
で、僕がデリーの股間に顔を埋める形になってしまった。
「積極的だね。いいよ。」
デリーは股間のボタンを外して、暴れん棒の封印を解く。
「ぅわああぁぁぁァァーーーーー!!!」
僕はデリーの足の間を潜るように逃げ、彼の背後から書棚や床に積まれた本を片っ端から投げて投げて投げまくった。
気付くと奴は本に埋もれて気を失ってる。
まぁ、あんな奴どうでもいい。
僕は作品の最終話を認め、和綴じにして、回覧用の新刊のいつもの隠し場所に置くと下宿へと帰った。
主人公は一番最初に抱かれた男と再びコトに及ぼうとするものの、盛大に拒否られ、突き飛ばされて唾を吐き掛けられ、闇堕ちするという内容にしてやった。
クソ喰らえ!!
翌朝、僕は何食わぬ顔で登校した。
もう、あの第3書庫準備室には行けないし、モブがうっかり主要人物と関わりを持ってしまったのだ。
この先も関わろうとすれば、破滅なくしては語れない状況になること間違いなしだ。
それから、彼らの居る第2学年の校舎が見える窓へ近付くこともやめ、あの噴水とは逆に窓の開いた物置きに1週間は通った。
人気の無さや先生の巡回ルートから外れているかなどを慎重に調査すると、節約のために下宿を引き払って、この第4書庫を根城にすることに決めた。
放課後……
誰にも会わないように外履きと内履きを交換し、更に外履きを鞄へ入れて室内履きに履き替えた僕は、第4書庫へと戻って来た。
予め念入りに練っていた結界を潜ると、扉を閉める瞬間にほんの僅かに頬に風を感じたような気がしたが、まさかここが誰かにバレたなんてことは無いはずだ…と室内へ振り返った時だった。
視界がギラギラしたモノで埋まると同時に身体を拘束され、柔らかいものが僕の唇を塞いだ。
「ん!……んんー、うー……!!」
頭が真っ白になった僕は、両腕をぐるぐると振り回した。
「わっ、痛、やめ…!!」
僕を拘束していたのは人間だったようだ。
僕の拘束を解いて自分の頭を庇う方に腕を使うことにしたらしい。
僕はすぐに背後の扉を目指した。
が、どうしたって辿り着けず、もみ合った挙げ句、後ろから羽交い締めにされてしまった。
「何だ、止めろ! 離せ!!」
僕は叫ぶが、僕の後ろの人物は無言のままズリズリと僕を引き摺って行く。
僕は抵抗しようと宙を藻掻くが、フワフワしたところにぽすんと投げ出され、上から覆い被されてしまった。
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