【完結】奥手の王様とスパルタ王妃様の人生やり直し

奥手の王太子とスパルタ姫様の初夜準備

「もう！」
「ぐぇ！」

奥手の王太子殿下─シュタ─は、スパルタ王太子妃殿下─ジュジュ─の鉄拳制裁を受けていた。

「また！　またわたくしを抱き上げて！！
披露宴会場に一瞬たりとも足を降ろさない新婦なんて、聞いたことありませんわ！！」

「で…でも……」

奥手の王太子殿下は、然りげ無く自分の股間に手を持って行った。

べシャリ…

スパルタ王太子妃殿下の控え室へ送り届けたらすぐにトイレに駆け込みたかった奥手の王太子殿下は、今の一撃が作用したのか、下から吐き出してしまった。

「とにかく、ジュジュ。１回落ち着こう。ゆっくりお風呂に浸かって、ゆったりのんびりと、エステにマッサージにフルコース、しっかり受けてくれ。
それじゃ君たち、頼むよ。」

奥手の王太子殿下は、スパルタヒステリーな王太子妃殿下を何とかなだめながら扉へ向かう。
侍女で構成されたエステティシャンチームに引き渡すと、静かに扉を閉めて自分も自室へ急いだ。

自室と言うのは、《王太子の部屋》をさす。

その隣には内扉で繋がった《愛の巣》こと王太子夫妻の寝室がある。
先程、ジュジュことスパルタ王太子妃殿下と別れたのは、その《愛の巣》と内扉で繋がる、《王太子妃の部屋》で、《のちの女帝の部屋》とも呼ばれているのだが、そこから衣装部屋を挟んだ場所で、王太子妃専用の浴室や休憩室、エステ室などがある。

奥手の王太子殿下は特に供人もつけずに、股間の不快さに若干ガニ股になりながら、何本目かの柱を通り過ぎた時だった。

奥手の王太子殿下は、柱の影へ腕を引かれ…そして柱の裏へ鼻柱を打ち付けた。

「きゃん！」

──何だよ、大の男がびっくりした悲鳴に《きゃん！》って、恥ずかしい…

そう思っていると、直後にグイッと左を向かされ、濃厚なキスをされてしまった。

しかも、顎の角度や奥手な王太子様が逃げないように羽交い締める体の硬さから、相手は男だとわかった。

突然のＢＬ展開に焦る奥手の王太子殿下は、相手の舌に翻弄され、柱を両手で抱えながらも徐々に力が抜けて行ってしまう。

けれど、

「うわっ！　僕の女神ともうそんな関係だったなんて！！！」

そんな言葉と共に背中からの圧迫が消え、謎の男は立ち去ってしまったようだ。

奥手の王太子殿下は、その場にペタリと座ってしまった。

──あの声は確か…隣国の王太子であるジュジュの兄上？
どうしよう…ジュジュに伝えた方が良いのかな？

……が、そこで…自分がスパルタ王太子妃殿下との大事な初夜の直前だと言うことに気付いた奥手の王太子様。

「それどころじゃなかったぁ～！！」

大慌てで入浴してあちこち綺麗にすると、濡れた髪にホカホカの体のままバスローブを羽織り、内扉で繋がる《愛の巣》こと《王太子夫妻の寝室》へ向かった。






《作者より》

以下、この話の終わりまでスパルタ王太子妃殿下の兄がＢＬ内容な話をしました。

彼は、妹と夫が既にコトに及んでいると勘違いして、

「少しでも私の女神が不幸になったという話が聞こえてきたら、絶対にこの国を潰してやるからな！！」

と、国に帰りましたとさ。