国外追放になった僕が、隣国で幸せになる話(仮タイトル)

325号室の住人

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アレンと僕は、いつもの体勢─床にぺたりと座ったアレンに横抱きの僕─になる。

「アレン、帰ってきたの?」
「いや、まだ修行中。疲れちゃってさ、癒されに来た。」

僕はアレンの方を向くと両肩に手を乗せ、少し尻を浮かせて、

ぷにっ…ちゅ

アレンの唇に自分の唇を押し付けた。

「はぁ…かわいい。」

アレンはお返しみたいに僕をぎゅうぎゅう抱き締める。

僕はと言えば、唇の厚みや抱かれ心地があまりに以前と同じなので、驚いて顔を上げた。

「アレン?」
「うん。だからさ、まだこの体はアイツに借りたヤツ。」
「え………そう。」

僕は言葉に詰まる。
だってもう、本物の《アレン様》にお会いしてしまってる。
次にまた《アレン様》に会っちゃったら…僕、どんな顔して会えば良いんだ? 小っ恥ずかしい…

「えと…修行は、どんな?」
「あぁ…神修行っつーの? 大樹の神オヤジの方は実体化まであと一歩まで進んだんだけど、月の女神オフクロの方は、何か、女体に憑かないとダメとか男に抱かれないとダメとかで、女体には実体化できないんだってさ。
何かもう、俺こんな見た目だしさ、オフクロの方は良いかなって。
身近な女体…シェミリエやマリーの体に憑くのも何か違うし、ましてや男と、なんてさ。」
「あの、僕がアレンを抱いてあげようか?」

瞬間、アレンが真面目な顔で僕を見る。
少しだけど、緊張した時間となる。

すると…

「ごめんヴァル。俺さ、考えたんだけど…」

僕は無言で頷いた。

「俺、ヴァルのことは…」

──先を聞くのが怖い……!!!

すると、アレンが顔の横で指をクルッと回した。

背中が憶えのある布の上に着地すると、急に口を塞がれる。アレンの唇で。

ちゅっ…チュチュちゆうううっ…!

唇を離したアレンは、息も上がって興奮した笑みをこぼし、

「俺、ヴァルのことは、抱かれるより抱きたいから! だから女体にはならなくていい!!」

それで始まる一通りの流れと、叫んで終わるのと叫べば終わるのに終わらせてくれないのを、朝まで数回繰り返し…

明け方になると、
「それじゃ俺、あと数日しっかり修行やって来るな!」

軽く手を振ると、疲労困憊のアレン様の体と僕を置いて、転移陣を使って行ってしまった。

僕とアレン様は知らなかった。
あちらのアレンが去ってから数日、裸のまま動けなくなるということを。
アレンが帰って来るまで、そのまま眠り続けるという魔法が掛けられていたことを………




そして、体感的に翌朝…

「ただいま~!!」

若葉の冠に若葉の腰蓑をつけたアレンが帰って来たところで、僕とアレン様はパッチリと目を覚ました。

「「へ?」」

起き上がった時、2人とも全裸で慌てたけど、アレンの指クルンで一瞬で診察着を着せてもらえた。

「でさぁ…」
「「へ?」」
「とりあえず、アレンって俺のオヤジの甥っ子らしくてさ、連れて来いってコトになった。」

まだ状況が掴めずに目を白黒させているアレン様を連れて転移陣で消え、

それから再び戻って来ると、

「オヤジが俺の嫁を連れて来いってうるせーんだよ!」
言いながら僕の手を引いて転移陣に乗った。



で、結果的に…

アレン様は森の民─エルフさん─の国に永住することになり、僕とアレンは普段は診療所に住んで、森の民の国のイベント事みたいに用事がある時だけアレンが里帰りするっていう生活を送ることになった。

半分だけでも森の民の血を引いているアレン様と比べ、僕は完全に人間な上、僕みたいな容姿は森の民に好まれるらしく、性奴隷のようになってしまう可能性があるから…らしい。現にアレンのお父さん王様もヤバかった。まぁ、顔だけに留めてくれたけど。

アレンもその話を聞いて、
「あー、そんなエンドもあったなー。」
なんて。
もしかして、エンドって他にも存在するんだろうか。怖っ…

そんな訳で、自国から国外追放された僕は、次代の《大樹の神》に愛され、とっても幸せに暮らしましたとさ。




      おしまい
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