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そこへ、建物が揺れたかと思ったら、
「王は助かったぞぉーーー!」
「「「うおぉぉぉーーーー!!」」」

轟きに轟きが呼応して、轟音の波のような、渦のようなものが出来上がる。
それから…

「獣人王バンザイ!!」
「フィスタ様バンザイ!」

他にも、聞き取れないいろいろを叫んでいる。

──そうか。やはり彼らは獣人国の…


ドコドコドコドコ…
揃いの足踏みに、
ブンッブンッブンッブンッ…
前方や空へ向かって突き上げる拳…

そのうち、ただの人間にしか見えなかった者にもピョコピョコと頭の上に獣耳や尾が顔を出す。

「「フィスタ様、バンザイ!」」
「「「バンザイ!」」」
ザッザッザッザッ…
「「獣人王、バンザイ!」」
「「バンザイ!」」
ザッザッザッザッ

今度は両足跳びになりながら、全員で円を描いていく。

僕は、その統率の取れた音や動きに圧倒されながらも、外壁になったつもりで気配を消していたのだが…

不意に僕の隣で扉が開いた時には集中が途切れてついそちらを見てしまって、

ザッ

同じ気配に振り返った彼らにあっという間に取り囲まれてしまったのだった。

「フィスタ様をお守り致します!」
言った誰かの声を合図に、彼らは一斉に僕に向かってくる。

──マズイ!

そう思った時には頭上に現れた空色の転移陣に飲まれていた。






ドゴッ!!!

転移した先で待っていたのは、脳天からのゲンコツだった。
咄嗟のことに頭を庇った腕は間に合わず、横へ跳んでゲンコツは床へ命中する。

その時に確認したのは、ゲンコツが成人男性1人分のゲンコツ型の岩の塊だったということだ。
床へ命中したゲンコツ型は、ちゃんと砕けて飛び散りながら光の粒になって次々消える。

「殺す気か!」
思わず声が出てしまえば、
「グァワッハッハッハッハ…」
野太い笑い声が響く。

「まだ安静にお願いしますよ。」
今度は聞き慣れた声だ。
「すまんすまん。」
野太い声で、術の発動者は答える。
「強制的に眠らせることもできますよ?」
聞き慣れた声は、僕もまぁまぁ知ってる薄い草色の髪の男のもの。
野太いのは、体の大きな虎耳獅子尾の壮年の男だった。
もしかして、さっき浮かびながら運ばれていた人だろうか。
だとしたら、赤い顔も白いイボも引いたようで何よりだ。

虎耳の男は、起き上がらせていた上体を元々あったであろう敷布の上へと戻してから僕の方を見た。

「素晴らしい反応速度だ。どうだ? おぬし、我が隊へ入らぬか?」
「いえいえ。こんな軽いのでは、獣人国では務まりませぬよ。オススメしません。」
「そうか?」
「だいたい、こんな細くて骨っぽくては陛下の枕には使えませぬよ。」
「むむっ。耳付きのカツラをつけてもダメか。仕方がない。諦めるか。」
「そうなさいませ。」

どうやら獣人王であろう壮年の男と一緒に、薄い草色の髪の男はこちらを見ると頷き合っている。

──獣人王の隊…? 枕?

僕には話の内容はよくわからなかった。



その後、獣人王を眠らせるため、僕は再び建物の外へ出ることとなった。
もう、先程のように急に向かって来られることも、大きなゲンコツに襲われることもなかった。


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