大晦日の夜に

325号室の住人

文字の大きさ
上 下
5 / 5

  5 (終)

しおりを挟む

イチの家は、この店の向かいのマンションだった。
その5階である最上階。そこは…

「オーナーの家?」
「はい。僕、この家の息子なので。」

そう言って案内されたのは、1つ下のフロアだった。

部屋の灯りをつけないままカーテンを開けると、ゴォォー…という音と共に急行電車の車内灯で一瞬でこの部屋に何があるのか見えてしまうほど明るくなった。

「今日は家族は留守ですし、こんなんだから防音はしっかりしてるんス。いくら啼いても大丈夫ですよ。」

そうして、先程の車内灯で確認できた、1人で使うには大きすぎるベッドへと手を引かれ、そして押し倒され、伸し掛かられた。

「カズさん初めてですもんね。僕、優しくするっス。」

そうして俺は、もろもろ諦めた。






「ハッ…ハッ……ハッ……ハッ……」
「んっ…んぅっ…はぁっはぁ……」

始まってしまえば、イチはあまり喋らないタイプらしく、室内にはイチの荒い呼吸と俺の声が響く。

童貞とは言え、AVは男女のモノを見ていた俺だったが、イチのゴツい指先に、繊細な舌使いに、そしてあの特大のペニスに翻弄されていた。

女をイかせる流れのAVを好んで見ていたというのに、まさか自分が享受される立場になるなんて。
しかも、気持ちいいだなんて。

「カズ…さん、キスしながらイきましょう。」

一言だけ喋った直後、俺達は声の限り吠えながら、同時にイった時…

ゴォォーーーーーーン…

除夜の鐘が遠くに聞こえたような気がした。

「あ…
カズさん、明けましておめでとうございます。今年も、たくさん愛させてくださいね。」
「ん、あぁ。今年も宜しく。」

そうして俺は、正月休みが終わるまでイチに愛されて過ごしたのだった。




      おしまい
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

23時のプール 2

貴船きよの
BL
あらすじ 『23時のプール』の続編。 高級マンションの最上階にあるプールでの、恋人同士になった市守和哉と蓮見涼介の甘い時間。

23時のプール

貴船きよの
BL
輸入家具会社に勤める市守和哉は、叔父が留守にする間、高級マンションの部屋に住む話を持ちかけられていた。 初めは気が進まない和哉だったが、そのマンションにプールがついていることを知り、叔父の話を承諾する。 叔父の部屋に越してからというもの、毎週のようにプールで泳いでいた和哉は、そこで、蓮見涼介という年下の男と出会う。 彼の泳ぎに惹かれた和哉は、彼自身にも関心を抱く。 二人は、プールで毎週会うようになる。

同僚に密室に連れ込まれてイケナイ状況です

暗黒神ゼブラ
BL
今日僕は同僚にごはんに誘われました

生意気な少年は男の遊び道具にされる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

彼女のお見合い相手に口説かれてます

すいかちゃん
BL
カラオケ店でアルバイトしている澤木陸哉は、交際している彼女から見合いをすると告げられる。おまけに、相手の条件によっては別れるとも・・・。見合い相手は、IT関連の社長をしている久住隆一。 だが、なぜか隆一に口説かれる事になる。 第二話「お見合いの条件」 麻里花の見合い相手と遭遇した陸哉。だが、彼には見合いをする気はないらしい。おまけに、麻里花に彼氏がいるのを怒っているようだ。もし、見合いが断られたら・・・。 第三話「交換条件」 隆一と食事をする事になった陸哉。話しているうちに隆一に対して好感を抱く。 見合いを壊すため、隆一が交換条件を提案する。 第四話「本気で、口説かれてる?」 ホテルの部屋で隆一に迫られる陸哉。お見合いを壊すための条件は、身体を触らせる事。 最後まではしないと言われたものの・・・。 第五話「心が選んだのは」 お見合い当日。陸哉は、いてもたってもいられず見合い会場へと向かう。そして、自分の手で見合いを壊す。隆一にも、2度と会わないつもりでいたが・・・。

虎は失神を迎えるまで射精と歩行を行わされる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

メイドは淫らな本性のままにおねだりする

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...