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しおりを挟む最初に行った不動産屋で見た物件は、新しいしオートロック付だが、広めのワンルームだった。
家賃も手頃で、大学院生のイチと専門学校出でヘアサロンの1番下のポジションにいるマリヤでも無理なく支払える金額だ。
でも、遊びに行く度にベッドが視界に入るのは解せない。
だってもろもろ想像しちゃうじゃないか!
だから却下した。
次に見たのは、少し古いけど俺の実家に近い2LDKで、家賃はさっきより若干高い程度だった。
何より、各々個室を持てるのは良いことだ。
俺だって、遊びに行く度にイチの裸やエロい表情を想像しなくて済むのは良いことだった。
そして契約し、2人は引っ越し、俺は毎晩のように社会人1年目の諸々の愚痴を言いに寄った。
マリヤは母ちゃんの店ではない都心のヘアサロン勤務だったので、毎日遅くまで居残りしていて、帰宅は遅い。
イチが駅まで迎えに行くと言うので、そのまま一緒に出て実家に帰宅する俺を送るような形が、最近のルーティンと化している。
だが、引っ越してから1ヶ月目の朝、俺は信じられないものを見た。
何と、妹のマリヤが、実家で朝食を食べていたのだ。
「は? お前っ何で家で飯喰ってんだよ!」
「え? アタシいつもココで食べてるよ?」
「ま! それじゃイチは?」
「あぁ…それで構わないって。」
「同棲してんじゃねぇのかよ!!」
「んー、そうなんだけどねぇ…てへへ。」
だから俺は、金曜の夜からイチんとこ行って、2晩泊まるようになった。
マリヤにも母ちゃんにもイチにもそう言って了承得て…
金曜はできるだけ定時で上がって、イチの家で食事を作って待つのだった。
その日は台風並みの嵐が来るとかで、俺がマリヤの鍵で帰ってきた時も既に横殴りの雨が降っていた。
俺は何も考えずに風呂へと向かい、熱めのシャワーを浴びた。
直で風呂に向かったので着替えを用意してなくて、タオルを腰に巻いて着替えを物色していると、玄関のチャイムが鳴った。
とりあえず置きパンツだけ装着して玄関へ向かうと、ずぶ濡れのイチが三和土に佇んでいて…
濡れた前髪の間から見えたイチの瞳が一瞬光ったように感じると、そのまま抱きつかれたまま、支えきれなくて後ろに倒れ……
ふと気付くとイチから深い深いキスを受けていた。
イチの服はぐっしょり濡れており、余計に重く感じる。
俺はキスで力が抜けてしまいそうになるが、体のあちこちを鼓舞してイチの下から抜け出すと、イチを座らせて濡れた服を脱がせた。
イチは無抵抗で、上半身を脱がせ終わってもボーッとしている。
頬に触れると熱い。熱があるみたいだ。
ただ、この冷えた体を何とかしないといけないから、俺はイチの手を引き、裸に剥いて風呂場へ押し込めようとして……
気付いたら後ろから抱き締められながら、耳元で名前を囁かれながら、首元を甘噛みされながら、鏡の中の俺の満更でもない表情、そして、パンツの上から俺の尻に沿う硬質的な熱いもの………
その時、頭の中に響いたのは、もちろん、『ジ・エーーーーーン…』
結局、マリヤとイチの愛の巣は、俺とイチとの愛の巣となった。
一線越えた時、マリヤと話した。
「俺とイチ、これじゃ親友じゃない。sin(=罪)友だな。妹の恋人を寝取るなんて。」
と言えば、
「何言ってんの! 友達の気持ちを知りながら、自分の気持ちにフタして偽って! そっちの方がよっぽど《罪》よ!!」
と言われた。
何でも、俺のイチへの気持ちも、イチから俺に向けられる気持ちも、母ちゃんとマリヤ的にはバレバレだったそうだ。
──…………恥ずいっ
でもそれでちょっと吹っ切れ、今ではあの愛の巣で、毎朝毎晩、愛を確かめあっている。
おしまい
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