なぜか、同期のモテ男に好かれてしまったのですが…

325号室の住人

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「ねぇ…本当に行かなくちゃダメ?」
「んー…ダ、メ、だね。」
「とりあえず、一周まわったら帰っても大丈夫だから、頑張りなさい…」
「うー…」

──私は今、超の何個もつく高級パーティに潜入するべく…

「いや、ただ招待されて参加するだけだぞ?」
「だって! ミッションだとでも思わないと、正気を保っていられませんよ!!」
「スカちゃんはかわいいから、安心して腹をくくんなさい!」
「んうぅ……」

私はやっと腹をくく…いや、やっぱり難しくて、気合いで乗り切ることにした。

「姫…御手を。」
「ハァ…はい。」
「顔が強張ってるよ?」

チュッ
「んぎ」
チュウゥゥッ

エスコート役の島津のキスを、唯一メイクも整髪料もない素肌のままの首筋に受けて、奇声を発しそうなところを口を塞ぐために唇にもキスを受け、周囲からの視線にいたたまれなくなってギブアップの意味も込めて島津の胸を叩いた。

パーティ会場へ入ってから気合を入れるのに約30分。やっと出発となり、とりあえず時計回りに動くことになった。

エスコートする島津が外見に見合った好感度MAXの挨拶をする横で自然に見える笑顔を作
「ひゃん!」 
れていない時には腰を撫でられ奇声を発しながら、顔と名前と肩書きを頭の中のメモにインプットしていく。






時計の針でいう7の位置まで来た時だった。
ふと、葉巻が薫ったような気がしてそちらを見ると、

「名前だけはかわいいボクの友人、そちらがお前の最愛のスカイさんか?」

見た目ハイスペックイケメンな男性と目が合うと、ツカツカとこちらへやって来るなり私に言った。

島津は私を守るように背中に庇う。
背が高い島津の後ろなんて、正直何も見えない。

「こんなところに居るってことは…」
「あぁ。一通り調教も済んだ…」

良く聞こえない不穏な会話が続いていると、ひときわ葉巻が濃く薫った。

「早速、明日どうだ?」
「生憎だが明日はスカイを愛でる日だ。」
「そうか、残念だ。」

葉巻の香りが会場の匂いと交ざる。
どうやら先程の彼が離れたようだ。

──あぁ…見たかった! ハイスペックイケメン達の戯れ…

たぶん気が急いていたのだろう。少しだけ島津の背後から顔を覗かせることができ…

「ぁあああーー! お前はスカ! 憎き…島津スカ……」

葉巻の彼の横から、香水臭い人影が私に向かって来…

「きゃ…」
「うおぉぉぉぉーーー!!!!」

「ステイ…」
ドサッ

恐怖に顔を庇っていたら、もろもろ終わっていたみたい。
再び顔を上げてみれば、靴の先に手を伸ばした着飾った女性が床に這いつくばっていた。

「?」
「あぁ、もう安心して良い。」

葉巻の男性が手首をクイッと引くと、まるで見えない首輪でもあるように、逆回転するみたいに女性が立ち上がった。

それから、海外の古い映画みたいに華麗にカーテシーを決める。
私の耳元に島津が囁く。

「アイツ、魔法使いなんだよ。」

夫に言い寄るハイスペックイケメンが魔法使い…
リアルBLに心躍ってしまったのは、仕方ないことだと思う。


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