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しおりを挟む「許さない……絶対に許さないわ。」
小出さんは私に聞こえるギリギリの声で言うと、踵を返して総務部のドアに消えた。
私は小出さんの消えたドアを暫く見ていたのだけど、エスコートしても進まない私に気付いた島津に抱き上げられてしまった。
「ねぇ、スカイは俺を試してるんだよな? 安心してくれ。もうギンギンだ。」
島津の視線がフレアスカートの裾に注がれているのに気付き、抱き上げられて上がってしまった分を両手で引っ張って整えてみた。
やっぱり、スカイはあんな女を気にしている。
俺の眼中には全くない女だが、これまではスカイとは同僚にあたるから普通に接してきてやっただけだったが…
あの女、どれだけ自意識過剰なんだ。
俺が、最愛のスカイを傷付けられても大丈夫な奴だなんて思ってんのか?
ありえないだろ!
俺は、スカイの気をこちらに向けたくて戯けた口調で話し掛ける。
恥ずかしかったのか耳まで赤くなって、かわいい。
耳にキスしたい気持ちを抑え、でもキスはしたくて…
チュッ
気づいたら、つむじにキスをしていた。
「もう! ここは会社なのに!!」
プリプリしているスカイもかわいい。
このまま持って帰りたい…が、まずはスカイを着替えさせないと風邪をひいてしまうだろう。
俺は、部長室を目指した。
「よっス、叔父さん!」
島津の簡単な挨拶とノックもせずに入れば、そこには叔父の他に山代さんが居た。
「灯…」
「本当はノックをした方が良いだろうとは思うけど、今は仕方ない。スカイを運んで来てくれたんだね。こちらへ。
山代くん、ありがとう。くれぐれも、旭くんにお礼を伝えてくれ。」
「はい。」
私は着替えを持たされて、続き部屋になっている仮眠室へ送られた。
スカイが部長によって仮眠室へ送られれば、その間に山代さんが俺のためのコーヒーを淹れてくれ、俺と叔父と山代さんとでローテーブルを囲うような配置でソファについた。
「それで…?」
「はい。殆どの総務部の女性社員が関わっていました。
スカイさんに水を掛け、髪を引っ張られ…旭が居ないとすぐこれだ。」
「でも、姉ちゃんが《スカちゃん》って呼んだのを、《ハズレ》のスカだと思っていたと。まぁ、言い訳でしょうが。」
「《スカイ》の《スカ》がそんな風に思われていたなんて。」
最愛を傷付けられた男だけの作戦会議は、まだ始まっだばかりだ。
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