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しおりを挟む島津の姉、島津旭さんは、界隈で有名なコスプレイヤーである、《あっちゃん》さんだった。
《あっちゃん》さんのレパートリーは多岐に渡るけれど、中でもシルヴァさま等の王子コスに定評がある、男装の麗人だ。
会社では男装の《だ》の字もなく、ネイルの凄い女子力高めのネイラーズのリーダーなので、全く《こちら側の人間》だとは思っていなかった。
「実はさ、まだ山代にこの趣味のことは話してないのよ。本当は、結婚を機にこの道は捨てようと思ってたの。
でも、今回逆に山代を捨てることに決めて…だから趣味を拾うことにしたのよ。」
メイクやコスを脱皮した旭さんは、あっけらかんと話した。
そして海外に1週間滞在するくらいのサイズのスーツケースに道具やコス達を詰め込むと、
「それじゃ、今日もイベントだから。」
のひと言で、颯爽とこの家を出て行った。
「やっと2人きりだね。」
旭さんが出て行ったドアが閉まった時、ものすごい神々しい笑顔の島津が空を見てそう言った。
空の右手を引いて、島津はリビングのソファに空を座らせると、一旦その場から消える。
戻ってきた島津は、先程の旭さんのコスと対になると言っても過言でない、《騎士団長ダレス》のコスで再登場した。
正直なところ、2人一緒に見たかったという感想が頭をよぎったのは許して欲しい。
現に、
「これなら、スカイは俺のこと好きでいてくれるよね?」
ソファではなく空の足元の床に座ったダレスに上目遣いで言われた空は盛大に萌え、その界隈の神に祈っている間にダレスの膝に座っていた。
欲を言えば、膝に乗せるのは空の推しカプであるシルヴァであって欲しい。
でも、そんなことを考えていられたのは最初の数秒だった。
「ふふっ、耳まで真っ赤だね。それじゃ、了承と受け取るよ。」
「はい! ダレスさまっ。」
「ダ・レ・スぅ~?」
うっかりキャラ名で答えてしまった空は、島津から啄むようなキスを受け…
「ねぇ、俺の名前は?」
「ダレスさ…」
また名前を間違えてしまい、深い大人のキスを体験することになってしまった。
まぁでも、
「あ・か・り、だよ。」
「ぁ…かり……」
「そう。上手に言えたね、ご褒美。」
と、また深く舌を吸われたのだけど…
──神様! ダレスが私に甘々です…
「ん? また名前を間違えられたような気がするなぁ…」
心の中で名前を間違えてしまったことがなぜかバレ、また呼吸さえ難しくなるようなキスを浴びることになってしまったのだけど。
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