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しおりを挟む先程、姉を捕獲した自室までの螺旋階段を上る。
姉が階下でガタガタと荷物の整理をしている。
…って言うか、婚約して山代さんの部屋に転がり込んだ時点で、姉の荷物はほぼなかったはずだ。
自室のドアを開こうとして…開かずに慌てる。
カギはないし、ただ寝に帰るだけの生活だ。ベッドしかないから、開かなくなるということがなかったからだ。
スカイに何かあったのかと、俺はドアを叩いて呼びかけた。
「スカイ! ここを開けてくれ!!」
呼び掛けながらドアを押す。
重いけれど、数ミリの隙間ができた。
「スカイ? 何かあった?」
「ひっく…うぅーっ……」
「スカイ? 泣いているのか?」
「…ふっ……違うもん…」
「違わないだろう? スカイ、この扉の裏に居るね? 抱き締めて慰めたいんだけど。」
「来ないで。島津くんはあの人のところへ行ったら良いわ。」
「あの人?」
「元カノさん。昨日別れたんでしょ?」
「元カノ? 誰だそれ…あ! 違う。あれば姉だよ、姉。」
「でも、そんなの言い訳で」
これ以上、俺のスカイへの愛を疑われるのは我慢ならない。
バンッ
俺は自室に突入し、スカイを抱き締め…
背中がフワッと軽くなり、直後に強く抱き締められたことに驚いて、
「きゃーーーーー!!!」
叫べば、
「何してんの! あかり!!!」
視界から島津が強制退場して、
「もう大丈夫よ、スカちゃん、安心して!!」
なぜか推しの王子が私の前に跪き、右手を差し伸べていた。
「え? シルヴァさま?」
「もうアカリは居ないから、安心してね。」
「はい!」
私は、シルヴァさまの右手に右手を重ねた。
「あれ? このネイル…」
先日まで就業後に私を横文字職業の人に次々会わせ、昨日の婚活パーティーへの参加を命令した上司のものと同じだった。
「『どうして?』って顔してるわね。ふふっアタシはね、このアカリの姉の、島津旭よ。仕事で使ってる朝日は…コスネームみたいなものね。改めてよろしく、スカちゃん。」
「…ん? アサヒ、さん? 島津って…でもシルヴァさまで…」
頭がぐるぐるした私は、そのまま気を失い…
「待って、スカイ! 俺は? 俺を捨てるの?」
そうになりながら、島津に肩を掴まれ揺さぶられる。
「え? 島津?」
「ほら! もう《あかり》って呼んでくれないじゃないか。」
島津は私を抱き締め、
「お願いだ、スカイ! 俺を捨てないで…」
「スカちゃんは、私とイイコトしよう?」
「スカイは俺のだぞ、姉貴! イイコトするのは俺とだ!」
「こんな乱暴者じゃなく、私とだよね、スカちゃん。」
右手に弱気な表情で懇願する島津、左手に超絶な色気が薫るシルヴァさま…
──神様! ここは天国ですか…?
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