なぜか、同期のモテ男に好かれてしまったのですが…

325号室の住人

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先程、姉を捕獲した自室までの螺旋階段を上る。
姉が階下したでガタガタと荷物の整理をしている。

…って言うか、婚約して山代さんの部屋に転がり込んだ時点で、姉の荷物はほぼなかったはずだ。

自室のドアを開こうとして…開かずに慌てる。
カギはないし、ただ寝に帰るだけの生活だ。ベッドしかないから、開かなくなるということがなかったからだ。

スカイに何かあったのかと、俺はドアを叩いて呼びかけた。



「スカイ! ここを開けてくれ!!」

呼び掛けながらドアを押す。
重いけれど、数ミリの隙間ができた。

「スカイ? 何かあった?」
「ひっく…うぅーっ……」
「スカイ? 泣いているのか?」
「…ふっ……ひがうもん…」
「違わないだろう? スカイ、この扉の裏に居るね? 抱き締めて慰めたいんだけど。」
「来ないで。島津くんはあの人のところへ行ったら良いわ。」
「あの人?」
「元カノさん。昨日別れたんでしょ?」
「元カノ? 誰だそれ…あ! 違う。あれば姉だよ、姉。」
「でも、そんなの言い訳で」

これ以上、俺のスカイへの愛を疑われるのは我慢ならない。

バンッ

俺は自室に突入し、スカイを抱き締め…






背中がフワッと軽くなり、直後に強く抱き締められたことに驚いて、
「きゃーーーーー!!!」
叫べば、

「何してんの! かり!!!」
視界から島津が強制退場して、

「もう大丈夫よ、スカちゃん、安心して!!」
なぜか推しの王子が私の前に跪き、右手を差し伸べていた。

「え? シルヴァさま?」
「もうアカリは居ないから、安心してね。」
「はい!」

私は、シルヴァさまの右手に右手を重ねた。

「あれ? このネイル…」

先日まで就業後に私を横文字職業の人に次々会わせ、昨日の婚活パーティーへの参加を命令した上司のものと同じだった。

「『どうして?』って顔してるわね。ふふっアタシはね、このアカリの姉の、島津アサヒよ。仕事で使ってる朝日アサヒは…コスネームみたいなものね。改めてよろしく、スカちゃん。」

「…ん? アサヒ、さん? 島津って…でもシルヴァさまで…」

頭がぐるぐるした私は、そのまま気を失い…

「待って、スカイ! 俺は? 俺を捨てるの?」

そうになりながら、島津に肩を掴まれ揺さぶられる。

「え? 島津?」
「ほら! もう《あかり》って呼んでくれないじゃないか。」

島津は私を抱き締め、

「お願いだ、スカイ! 俺を捨てないで…」
「スカちゃんは、私とイイコトしよう?」
「スカイは俺のだぞ、姉貴! イイコトするのは俺とだ!」
「こんな乱暴者じゃなく、私とだよね、スカちゃん。」

右手に弱気な表情で懇願する島津、左手に超絶な色気が薫るシルヴァさま…

──神様! ここは天国ですか…?


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